1962年、東映東京、藤原審爾原作、佐治乾脚本、石井輝男脚本+監督作品。
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外国人相手に都内で行われていた秘密カジノで突然銃声が響く。
タキシード姿にワルサーを構えた粋なお兄さんが、若い日本人女性を独り取れて、そこから逃げ出す。
男の名は、3年間網走暮しを終えて出所して来たばかりのチンピラ石浜伸夫(高倉健)、そして、女性の方は、その恋女房の典子(小宮光江)だった。
追っ手から逃げおうせ、ようやく、久々の夫婦再会の喜びに浸っていた二人の前に、見知らぬ男が近づいてきて、いきなり、一緒に仕事をやらないかと持ちかけてくる。
その男の名は常田(丹波哲郎)、やはり網走帰りの先輩に当ると言う。
しかし、典子の母親は、かつて満州で興安嶺(おうあんれい)のお真佐との異名を取った大姉御(清川虹子)、貫禄では負けてはいない。
いくら何でもそんな怪し気な話に夫婦が乗るはずもなく、それを知った常田は、話に乗る気になったら、超高級クラスのパレスホテルで待っていると言い残し去って行く。
引っ越したと言う典子の家に出向いた石浜は、ひどく安アパートで義母の真佐と再会する事になる。
そんな真佐に連れられて出かけたパレスホテルのロビーで、石浜は偶然にも先日の常田と出会う。
どうやら、真佐と常田の狙いは一緒らしい。
このホテルに泊まっているロバートと言う外国人は、実は、マカオのシンジケートのボスで、近々、日本で国際賭博マーケットを作るために、キャバレーリロで大きな博打をすると言うのだ。
その時、8000万程度の金が動きそうなのだと言う。
それを狙っていた常田は、真佐に一緒に組まないかと相談を持ちかけ、資金は自分が出すから、実行はそちらで、分け前は五分五分と言う条件で話が纏まる。
さっそく、常田は愛人で、リロでダンサーをやっているルミ(三原葉子)に資金調達を願い出る。
何度も、そうやって常田に金を搾り取られて来たルミだったが、今回は、この計画の一端を担う事になる弟で、リロでトイレ専用のボーイをやっている光男(山 下敬二郎)と相談して、金を自分達で奪い取ろうと考えていたので、中国人のパトロン黄(三島雅夫)にねだって、資金を調達する。
ところが、その黄も、ルミの要求を黙って承諾した訳ではなく、自分達でルミが企んでいる計画を探り、その金を奪い取ろうと独自に企みはじめる。
一方、石浜の方は、仕事の相棒として、かつての仲間で、今はしがない修理工場を経営している衆木(江原真二郎)、ダフ屋をやっていた川岸(曽根晴美)、電気屋の亀さん(由利徹)に声をかける。
しかし、衆木は衆木で、独自に金の一人占めを企んでおり、かつて館山航空隊の同期生で、今はヘリのパイロットをやっている堅気の山内(千葉真一)に、こっそり協力を依頼するのだった。
かくして、計画は実行に移される。
あらかじめトイレに潜んでいた石浜、衆木、川岸の三人は、金庫室に侵入、用心棒たちを拳銃で脅しながら、金をバッグに積めさせ、彼らを金庫室に閉じ込めると同時に、偽のバッグを窓から外に投下、それを車で近づいたルミが拾って囮として逃げる。
一方、亀さんが停電を起こした隙に、三人は現金の入ったバッグを光男に預け、自分達は手ぶらのまま堂々とカジノ室を通って、玄関からビルを抜け出していた。
ところが、ルミは、あらかじめ打合せ通りに、弟の光男から現金の入った袋をバッグに詰め替え、自分一人で持ち出そうとしていた。
しかし、そのルミに近づいて来たのは、真佐から謝礼金だけを受取って別れるはずだった衆木だった。
ルミは、近づいて来た警官を利用して、何とか衆木をかわし、一人タクシーを拾って逃走を始める。
同じくタクシーでその後を追おうとした衆木に同席して来たのは川岸、彼も又、独自に金の独占を狙って、衆木の行動を尾行していたのだった。
かくして、ルミと衆木、川岸の追跡劇が始まるのだが、その後を追っていたスポーツカーが一台。
用心のため、あらかじめ張っていた常田と、それに拾われた石浜の乗る車だった。
その頃、カジノの金を奪われた事に気づいたロバート一味は、光男を捕らえると共に、金を奪い返そうと追跡を始める。
ルミのタクシーは、すぐに衆木たちに追い付かれ乗り込まれてしまうが、そのタクシーに追突して来た車があった。ロバートが派遣したギャングたちだった。
さらに、その様子を近くから見学していた黄の一味たちもいた。
かくして、三つ巴、四つ巴の銃撃戦が開始され、川岸はそこで射殺されてしまう。
常田、石浜の乗った車に拾われたルミと衆木は、衆木があらかじめ待たせていた山内のヘリの所へ到着し、そのまま山内の住まいがある島にたどり着くが、そこには、山内の妹で、目が不自由な留美子(本間千代子)が一人待っていた。
そんな島に、金を狙ったギャング団が翌朝やってくる…。
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冒頭の、タキシード姿でワルサーを構え、カジノにいる健さんという絵柄がまず新鮮。
お世辞にも似合っているとは言い難いが、その姿はどう観てもジェームズ・ボンドかルパン三世である。
続くストーリー展開も、カジノの売り上げ金強奪計画に関わった複数の人間たちが、互いに抜け駆けしようと騙しあうと言ったルパン三世そこのけの内容。
おまけに、計画に参加する三原葉子扮するルミという踊子のキャラクターが、いかにも人を喰ったもので、完全に峰不二子そのもの。
この作品で、一番生き生きとしているのは彼女かも知れない。
そのルミの弟役を演じているのは、柳家金語楼の子息でロカビリー3人衆の一人山下敬二郎。
三島雅夫や清川虹子ら個性派も揃っているが、何と言っても貫禄なのは丹波哲郎の存在。
健さんや江原真二郎といった若手中心で軽くなりがちの展開を引き締める役割を担っている。
この丹波と三原、新東宝出身俳優の二人が加わった事で、この作品にはぐっと奥行が出たように思える。
劇中でも健さんが「兄貴、兄貴」と、丹波を先輩として立てているようにも見える。
目が不自由な千葉真一の妹役を演じているのは、東映に入ったばかりの頃の本間千代子。
当時17歳だったらしいが、もっと幼く見える。
千葉真一のかわいらしさにも注目したい。