1974年、勝プロダクション、小池一雄+小島剛夕原作、中村努脚本、黒田義之監督作品。
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将軍に呼出された裏柳生の総帥、柳生烈堂(大木実)は、何度も、拝一刀(若山富三郎)暗殺に失敗した事を厳しくとがめられていた。
このままでは、一刀を極悪人として公にし、表責めという形にするしかないが、そうなると、公儀刺客人としての裏柳生の面目は丸つぶれになる。
烈堂は、まだ、末娘の香織(瞳順子)がいるという。
その香織は、2本の小刀を操る「お手玉の剣」を会得していたが、より技を完成させるために、3人の門弟たちが自ら進んでその実験台として相手になり、ことごとく破れ去って死んでいく。
烈堂は、技が完成した香織に、黒鍬組の石根小角(睦五郎)を付けようとするが、彼女はきっぱりその申し出を断わる。
その頃、山陽道を京に向っていた一刀親子は、妻のぞみの墓参りをしていたが、その寺の塀に潜んでいた黒鍬組の一団に気づいた一刀は、乳母車に仕込んだ連発銃でことごとく撃ち殺してしまう。
その後、村の子供達と遊んでいた大五郎に声をかける女がいた。
彼ら親子の後を追跡して来た柳生香織であった。
佳織は、先に討たれた3人の兄の仇を討たんと、一刀に挑むが、一刀は、鏡を額につけた大五郎を肩車した姿で香織と対峙する。
香織は、「お手玉の剣」を使えば、空に投げ上げた剣が、大五郎の頭を直撃することを悟り、一瞬怯んだ隙に、一刀に斬られてしまう。
自分の命を守るために我が子を使うのは卑怯と、虫の息で抗議する香織に対し、一刀は、我ら親子二人とも冥府魔道を行く身なのだと答えるのだった。
たった独り残された末娘まで倒されたことを知った烈堂は、小角らを伴い木曽御岳の奥深くに入り込むと、謎の紋様が刻まれた石版の前にたどり着くと、珠兵衛(木村功)を呼出し、一刀を倒してくれと頼む。
珠兵衛とは、烈堂の嫡子であったが、妾腹であったことから、5才の時、この地に捨てられて、一人で成人した哀れな身の上の青年だった。
珠兵衛は、今頃のこのこ現れて虫の良い申し出をする烈堂の言葉を嘲り断わると、自ら、この地に住む土蜘蛛の一党と組んで、独自に一刀を倒す決心をする。
珠兵衛は、42日間、土中に埋められて、生者でも死者でもない、いわば魔人と化した三人の土蜘蛛、無常(草野大悟)、無我(宮口二郎)、無門(石橋蓮司)を蘇らせると、一刀暗殺に差し向けるのだった。
その後、大五郎に親切にした旅の女にどこからともなくミサイルが命中、爆死したり、一刀らに近づいた飴売りが惨殺され、その死体が川から流れて来たり、一夜の宿を頼んだ家人たちがあっという間に皆殺しされたりし始め、夜の闇の中から無気味な声が、「お前たちに関わった人間は皆殺しにする」と告げる。
土の中を自由に移動できる土蜘蛛三人衆の仕業であった。
かくして、人の世話になる事が出来なくなった一刀は、金を置いて、秘かに民家の軒先きから干し大根をもらったりして、大五郎の空腹を満たしてやる事になる。
そんな一刀の元へ、頭巾姿の是々藩大番頭剣持忠太夫なる侍が現れ、かねて依頼した刺客の仕事を取り消してもらいたいといってくる。
しかし、その正体を怪んだ一刀にいきなり斬り掛かられたその侍は、土蜘蛛兵衛を名乗る。
かくして、潜んでいた土蜘蛛一党と刃を交える事になった一刀だが、土中の三人衆に足を引かれ、底なし沼に没しようとする。
その前に出現した珠兵衛に対し、一刀は、武士らしく決闘せよといい、その言葉に従った珠兵衛は、一刀の前に破れ去るのだった。
瀕死の珠兵衛は、土蜘蛛衆に運ばれ、唯一の妹、梓()の元へやって来ると、浴室で裸の梓を抱き、自らの子供を作り、自分の復讐をさせようとするが、その場に現れた烈堂によって、二人とも串刺しにされてしまう。
主人を失った三人衆は、烈堂に付く事を嫌い、主人の意思を受け継ぎ、雪山に潜んでいた一刀親子を襲撃しようとする。
しかし、厚く積もった雪は、土中を進む彼らの能力を著しく阻み、その気配を察した一刀の乳母車の仕掛けによって、三人とも返り討ちにされてしまう。
その翌日、雪山に、スキーやそりを用いた烈堂と数十人の黒鍬組一党が出現し、一刀親子に襲いかかるのだった…。
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小池一雄、小島剛夕原作の劇画を映画化したシリーズ6作目にして最終作。
奇想天外なアクションが売り物のこのシリーズだが、今回は、大きく分けて3つの見せ場が用意されており、烈堂の末娘で、裏柳生最後の刺客、香織との戦い、そして、烈堂妾腹の嫡子、珠兵衛と土蜘蛛衆たちとのオカルティックな戦い、そして、雪山での壮絶なスキーアクションと、徐々に趣向が変化すると共に、スケールも大仕掛けになっていく展開で、最終作として見ごたえのある一編になっている。
不遇な境遇に育ち、屈折した心を持つ美青年を演ずる木村功扮する珠兵衛が特に印象的。
ヒーローものに出てくる怪人のような、超現実的で無気味なキャラクターに扮する草野大悟や石橋蓮司も強烈。
クライマックスの雪山での戦いは、若山自身のアイデアらしいが、そのネタ元は1969年に公開された「女王陛下の007」ではないだろうか。
しかし、その迫力は本家に一歩もひけを取らない出色の出来となっている。
時代劇で雪山や、スキーをはいた侍が登場するというと「快傑黒頭巾 爆発篇」(1959)などもあるが、アクション映画としては本作が最高!
もはや、時代劇の枠を超え、そのスピード感と痛快さは筆舌に尽くし難い。
劇画特有のハチャメチャな内容といってしまえばそれまでだが、これだけ面白いと文句の付けようがない。
前半のやや緩やかな展開も、後半へのステップと考えれば良くできている。
お色気要素あり、怪奇要素あり、奇想天外アクション要素ありとサービス満点。
「キル・ビル」などにも影響を与えた、スプラッター表現も健在。
もちろん、全編緊張感が続く中、大五郎の愛らしさがいつもながらほっとさせてくれる。
シリーズの中でも、良くできた作品だと思う。