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獣の剣

1965年、俳優座、柴英三郎脚本、五社英雄脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

安政4年、草むらで息を潜める浪人もの一人。

そこへ見知らぬ女が近づいて来て、身構えた浪人に対し、先ほどあんたに襲いかかった追っ手は、すでに宿場町の方へ行ったから安心おしと抱きついてくる。

馬を連れた数名の農民風の男たちが近づいてくるので、又、緊張する浪人を、女は「馬に水を飲ませて来ただけだ」と笑うが、その農民姿の男たちは、浪人の近くまで来ると、いきなり全員頬被りを取り、彼に斬り掛かってきた。

さらに、今まで抱きついていた女も、浪人の刀を奪って逃げ出そうとする。

浪人は女を追い刀を奪い返すと、斬り掛かって来た男たちの剣をかわしながら、彼らが放っておいた馬の一頭に跨がると、「俺は維持も捨てた。名も捨てた。どこまでも逃げ抜いてみせる」と言い残して、その場を立ち去るのだった。

浪人ものの名は、遠州掛川藩、結城弦之助(平幹二朗)、
彼は、自分達提出の改革案を一向に取り上げようとしない城代家老山岡監物(松本克平)を斬って藩を逃げた男であった。

そのため、監物の娘美沙(木村俊恵)と、その許嫁であり、弦之助の友人でもあった鳥尾大三郎(管貫太郎)、さらに、彼らに助成する師範、香取軍太夫(加藤武)らから、仇討ちの相手として追われる身になっていた。

先ほど馬で逃げられた軍太夫らは、その弦之助が乗って逃げたと思しき馬を世話している馬子(田中連衛)を発見、まだ遠くへは逃げていまいと、その馬に乗って来た男を探してくれたら10両出すと、馬方の馬子寅(永田靖)に申し出る。

しかし、当の弦之助は、その馬子が怪し気な3人男たちと内緒博打をしている場所に隠れていた。

自分の刀を投げ出し、それをかたに馬子に博打をさせる弦之助。

馬子が勝負に勝ったため、相手方はいきり立つが、立ち上がって来た弦之助の迫力に負け、山へ登っていく。
彼ら三人は山師だという。

その後、弦之助は、酒屋の奥の間を借りて、そこで酒と食事を所望するが、酒屋の主人は早速その事を馬子寅に密告、軍太夫たちは、袋小路にあるその部屋を絶好の襲撃場所として駆け参ずるが、それを先に見越していた弦之助は計画万端応戦して逃げ出し、斬り掛かってくる大三郎に対し、「これは屠殺だ、虐殺だ!」とわめきながら、逃げおおせてしまう。

それを助けたのは、先ほどの馬子だった。

馬子は、以前、甲州白根山の麓で馬を洗っていた時、川上からばっさり片口を斬られた死体が流れて来て、その懐に砂金の入った袋が入っていた話を弦之助に聞かせ、これから一生逃げ続けるのなら、その資金作りのために、自分と一緒に山に登らないかと申し出る。
弦之助は、よほどの腕利きが山の上にいる事に興味を抱く。

白根山は天領であり、甲州金番の支配下にあった。

しかし、そうした事を承知しながら、先に潜入していた山師三人組は、見回りに来た役人たちが、筏小屋で砂金取りをしていた夫婦者の姿を発見しながら、全員、その夫の侍に斬り殺されてしまう現場を目撃してしまう。

夫婦者は、とある藩の財政を助けるため、秘かに盗金を命ぜられ派遣されていた山根十郎太(加藤剛)と、いその妻のたか(岩下志麻)であった。

十郎太は、貧しい境遇から這い出るため、この仕事に没頭しており、近づく者は全員斬り殺していた。

その後、川に落ちて下の宿に助け上げられた役人を介抱するという殊勝な女お仙(三原葉子)が現れるが、彼女は、人がいなくなったと見るや、手ぬぐいで役人の口をふさぎ殺してしまう。

その様子をたまたま外からうかがっていたのが、馬子と共この宿に寄宿していた弦之助だった。

翌日、山を登った弦之助と馬子は、筏小屋に住む十郎太夫婦を発見するが、剣を交えて互いに力量を確認した上で一旦はその場から離れる。

その夜、十郎太が小屋を離れている隙に、たかが山師三人組の人質になってしまう。

しかし、今まで集めた砂金を寄越せと要求する三人組に、きっぱり十郎太は拒絶するのだった。

その言葉に驚愕するたかだったが、その場に駆けつけた弦之助によって、彼女は助けられる。

その後、たかは、秘かに小屋を抜け出すと、弦之助に抱きついてくるのだった。

十郎太の事情を知った弦之助は、自分の家老殺害も又、次席家老(天知茂)から巧くそそのかされて、操られていただけだった事に気づくのだった。

その頃、噂を聞き付け、軍太夫らが山を登りはじめていた。

馬子と共に、川で砂金取りをはじめたばかりの弦之助を、軍太夫は見つけ斬り掛かってくる。

弦之助は、自らの刀を木に突き刺してしまい、絶体絶命の窮地に陥るが、軍太夫は、後ろから十郎太の投げた剣により倒される。

その十郎太から、すでに自分達を倒す六部たちが山を登って来たらしいのでこの場を立ち去れと忠告された弦之助は、山をおりる途中で、大三郎に出会ってしまう。

二人は川の中で斬りあう事になるが、そこへ流れて来たのが、途中、足を痛めたため置いて来た美沙の帯だった。

二人が駆け付けると、美沙は、以前逃げていた山師の生き残り二人に陵辱されていたのだが、それでもなお、美沙は、仇討ちの本懐を遂げようとする。

弦之助は、馬子に二人の世話を頼むと、先に山を降りはじめるが、そこで待っていたお仙から、山に登ってくる六部たちは、十郎太を口封じのため斬りに来た藩の人間だと打ち明けるのだった。

それを聞いた弦之助は、十郎太夫婦を助けるため、再び山を登りはじめる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気テレビドラマの映画化「三匹の侍」(1964)に次ぎ、五社英雄監督が撮り上げたアクション時代劇。

主役を演ずる平幹二朗は、テレビ「三匹の侍」のオリジナルメンバーで、本作でも、その桔梗鋭之介のイメージにそっくりなニヒルなキャラクターとして登場している。

一方、その主人公と同じような境遇の下級武士を演じる加藤剛は、丹波哲郎の後を次いで「三匹の侍」のレギュラーの一人、橘一之進になった人。

この作品での加藤の役も、この橘を連想させる真面目一筋の侍イメージそのもの。

つまり、この作品、明らかに「三匹の侍」の延長線上にある作品と言える。

公開当時は、この二人のレギュラー同士の対決構図というのも、観客の好奇心をくすぐったのではないか。

下級武士の悲哀を込めたテーマ性を生かしつつも、設定自体はシンプルで、冒頭からラストまで、チャンバラシーンが次々と用意されており、いかにも、テレビで鍛えた五社監督らしい、テンポとサービス精神に溢れた娯楽映画になっている。

夫の目標に付いていこうと努力しながらも、いつしか、その気持ちに取り残されてしまい懊悩する妻や、仇討ちという名目に人生そのものを狂わせられてしまった家老の娘など、武家社会の犠牲になる女性の立場もきっちり描いてある。

妻を演じる岩下志麻は、夫役の加藤剛とは前年の「五辧の椿」以来の共演で、共に初々しい。

そんな中、飄々と生きる馬子役の田中連衛のキャラクターや、ややぽっちゃりしてしまった三原葉子が平に絡む、眠狂四郎などを連想させるお色気描写などが、場の雰囲気を和ませてくれる。

予算をかけた大作風ではないが、全編、かっちりした構成の巧さもあり、途中だれる事もなく、最後までその緊迫感に揺るぎはない。

近年、とんと観る事がなくなった「引き締まった痛快時代劇」の一本である。