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ジャズ娘誕生

1957年、日活、辻真先+松村基夫脚本、春原政久監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大島の椿油売り、河井みどり(江利チエミ)は、仲間の売り子(丹下キヨ子)たちと一緒に伊豆へやって来ていたが、そんなみどりに親し気に声をかけて来たのは、仲間たちと一緒に旅の途中らしい学生、加藤義彦(青山恭二)で、彼女の写真と撮らせてくれという。

しかし、漁村では椿油は一本も売れず、がっかりした彼女たちが、浜で休んで歌を唄っているいる所へ、荷台に「劇壇ユニバーサル」という一団を乗せたトラックが通りかかり、危うく、みどりが実の兄弟のように面倒を見ているいる小学生のヒデ子(刈屋ヒデ子)とチビ(亀谷雅啓)を轢きかける。

そのメンバーたちから、歌をからかわれたみどりは、むきになって、自慢の声を披露するが、その声に強く興味を引かれていたメンバーがいた。谷東峰(小杉勇)というピエロを演じる老人だった。

さらに、メンバーの一人で、ギターを抱えていた慎太郎刈りの青年春夫(石原裕次郎)に声をかけられたみどりは、嬉しそうに立ち去るトラックを見送るのだった。

後にその村のメンバーたちが出演している演芸場に遊びにいったみどりたちは、客席が騒いでいるのに気づき楽屋を覗き込むと、浪花節の一行が来るはずが、間違ってジャズの楽団が来てしまったので、これでは客が承知しないと、小屋主からマネージャーの花村千吉(殿山泰司)がどやしつけられている所だった。

舞台上では、オーケストラのメンバーたちが罵声を浴びせられているのを見るに見かねたみどりは、舞台に飛び出して、「浪花節を聞かせれば良いんでしょう?」というや否や、楽屋で急いで衣装を着替えると、にわか浪花節を披露し、ヤンヤの喝采を浴びる事になる。

行き掛り上、「この劇団の新顔」と客に名乗ってしまったのをきっかけにして、みどりはそのまま、ヒデ子とチビを伴い、劇団ユニバーサルの一員に参加し、東京で自分を幼い時に捨てた父親を探しに行くことを決心する。

その頃、東京の丸の内劇場支配人加藤(二本柳寛)は、息子の義彦から一枚の写真を見せられ、そこに写っている女性が、行方知れずの姉にそっくりだった事を報告する。

彼女の事が気になった加藤は、地方巡業中の劇団ユニバーサルの舞台を見に行くが、初舞台に立ったみどりは、いきなり、コメディエンヌ振りを発揮、大いに受けていた。

しかし、舞台裏では真面目な芝居をしていた春夫が、しろうとの癖に主役のように出しゃばりたがるみどりをあからさまに非難しはじめる。

そんな春夫の事が好きなみどりは、ショックを受けるのだが、その頃、その支配人室では、加藤が、花村に対して、みどりは才能があるし、自分の娘にも似ているようなので、引取って養成所に入れ、勉強させたいと申し出ていた。

一旦は承知した花村だったが、その小屋の支配人から、みどりがいなくなるとお前たちの劇団は人気がなくなるぞと忠告され、そのまま、みどりには黙って旅を続ける事になる。

そんな中、みどりは春夫と相変わらず巧く行かない。

そんな二人をからかうように、劇団員の一人が、春夫の名を騙った偽のラブレターを書いてみどりに渡し、彼女は港で長時間待つ事になるが、そのいたずらに怒ったのは、何故か、谷と春夫だった。

春夫は、待ちくたびれていたみどりに会いに出かけると、二人で夢を語り合うのだった。

そんな中、劇団ユニバーサルを訪ねて、再び、加藤が巡業中の中央劇場へやってくるのに気づいた花村は、こっそり、寝込んでいる劇団員の部屋を通って逃げ出そうとするが、目覚めた劇団員によって泥棒と間違えられ袋叩きにあう。

その事がきっかけとなり、ムシャクシャした花村は、かねてよりムダ飯食いの邪魔者と感じていたヒデ子とチビを劇団から追い出してしまう。

デートを終え、遅れて部屋に戻って来たみどりは、その話を知ると、劇団を辞めて、二人を追う事になる。

その頃、加藤は谷と話をつけ、劇壇全員を丸の内劇場に出してやる話が纏まっていたのだが、肝心のみどりがいなくなった事を知らされると、話はご破算になってしまうと、劇団員は総出で、みどりたちの後を追うが、みどりたちはすでに、船に乗って出発した後だった。

かくして、東京に着いたみどりはウエイトレスのアルバイトをはじめるのだが、失敗の連続で、数日後に首を言い渡されてしまうのだった。

そんな中、靴磨きをしていたヒデ子とチビを偶然見かけた義彦は、みどりの住まいを聞くと、その後もみどりの消息を探し求めていた劇団員や加藤に連絡を取り、彼女の住むあばら家で再会の運びと相成る。

こうして、「河井みどり主演 ジャズ娘誕生」と名付けられたレビューが、大々的に丸の内劇場で開催される事になるが、その開幕直前、花村は、ピエロの扮装をしている谷の持っていた写真から、彼こそが、本当のみどりの父親だった事を知り、その事をみどりに告げるのだが、その事実に衝撃を受けたみどりは、開幕と同時に劇場から姿を消してしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミと石原裕次郎がコンビを組んだ音楽映画。

タイトルにコニカラーと出てくる所から、カラー作品だと思われるのだが、何故か、今回、白黒作品になっていた。

ストーリーの展開自体は、昔流行った「お涙頂戴の少女マンガパターン」そのもので、さすがにちょっと古めかしいのだが、チエミ得意の明るい歌とコメディエンヌ振りで、若干もたつき気味の話を最後までひっぱってみせる。

裕次郎も何曲か唄ってみせるが、あくまでもチエミのアシストといった感じで、どちらかといえば、踊り風
のポーズ演技が中心となっている。

チエミの妹分とでもいうような、ヒデ子役を演じている刈屋ヒデ子という少女は、あまり馴染みがないが、途中、松島トモ子のように、かわいらしい歌声とタップを披露するシーンがある所を見ると、当時、それなりに知られた天才少女歌手だったのかも知れない。

劇壇の一人として出ている東郷たまみというのは、画家東郷青児の娘さんで、後に画家になった方。

同じく、劇団員の一人として登場する西田佐智子(タイトルでは新人と書かれている)というのは、どうも、「アカシアの雨がやむとき」というヒット曲で一躍有名になり、その後、関口宏さんの奥様になられた西田左知子さんと同一人物ではないかと思われるのだが、さすがに画面上で見分けがつかなかった。

劇壇のマネージャー役、殿山泰司は、この頃から全くイメージが変わってないのにも驚かされる。

最初こそ、伊豆を舞台にしたロケが中心なので、のびのびとしたスケール感と明るさがあるのだが、途中からセット芝居が増え、何となく雰囲気も沈みがちの展開になっていくし、クライマックスでの主人公の心理の葛藤描写がもたつくのも気になるが、 「ジャンバラヤ」「カモナ マイハウス」など、聞き覚えのあるチエミのヒット曲が登場するシーンは、それなりに大掛かりのセットで見せ場を作っている。

東宝ミュージカル映画などにくらべると、かなり泥臭い印象があるが、踊る裕次郎が観られるだけでも貴重な作品である。