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陽のあたる坂道('67)

1967年、日活、石坂洋次郎原作、池田一朗+倉本聰脚本、西河克己監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

坂道の上に建っている日本美術出版の社長田代玉吉(宇野重吉)の家で、愛犬バロンの犬小屋のペンキ売りをしていた次男信次(渡哲也)は、バロンが吼えている声を聞き、玄関へ向うと、そこに一人の女性が立っていた。

子供の頃の怪我が元で、片足を悪くした妹、くみ子(車とも子)の家庭教師を勤める事になった、城南大学の倉本たか子であった。

信次はいたずら心を出して、彼女の服に黄色いペンキをわざと付けてしまう。

住まいである「あやめ荘」に戻ったたか子は、同じアパートで、息子の民夫(山本圭)と二人暮しをしている高木とみ(桜むつ子)に、田代家での家庭教師が決まった事を話すが、その時、元芸者だったというとみが、田代を知っているような言葉をつい洩らしてしまうのを聞き逃さなかった。

その夜、母親(三益愛子)が外出中、帰宅して来た田代の部屋を訪れた信次は、自分が、母親の実子ではない事は知っているから、本当の母親の事を教えて欲しいと懇願する。
田代は、無理矢理聞きたがる信次に対し、渋々、お前は柳橋の染六という芸者に生ませた子供だと言う事を認めるのだった。

田代家に通うようになったたか子は、何となく、長男で、有名校のインターンをしている雄吉(早川保)と親しくデートを重ねるようになる。

一方、くみ子とも遊びに出かけるようになり、彼女に誘われて入った音楽喫茶で、ジミー小池と名乗って、ステージで唄っている民夫を見つけてしまう。

くみ子はジミーの大ファンだったし、民夫の方もくみ子に好意を持っているような様子が、その後、三人一緒に出かけたレストランで、たか子には察せられた。

やがて、家族全員がめいめい好き勝手な行動を取る事になる田代家の正月、信次は一人であやめ荘に向う。

実は、以前、たか子の口から、自分の住むアパートに、信次の母親らしき女性がいると言う話を聞いていたからである。

しかし、あいにく、とみは不在で、民夫が一人で留守番しているだけ。
その民夫に会った信次は、自分は君の兄で、同時にくみ子の兄でもあると告げて立ち去る。

突然の訪問者の衝撃的な告白に狼狽した民夫は、こっそり、近くのパチンコ屋で時間潰しをし始めた信次の後を付け、こっそりその様子を探りはじめるのだった。

その夜、再び、あやめ荘に戻って来た信次は、馴染みの客たちとどんちゃん騒ぎをしていたとみの部屋に上がり込む。

民夫の友達と勝手に思い込んだとみは、興に乗って、彼と野球拳までするサービス振り。

帰宅した信次は、母親から呼ばれ、二人きりでゆっくり話す時間が訪れる。
信次の方は、実の母親に今日会って来た事を告白し、母親の方は、小さな頃、妹くみ子の足を怪我させた張本人は、実は兄の雄吉の方だと言う事を自分は昔から知っていた、だから、それを自分一人がやったかのように責任を背負い込んで、同時に、その秘密を知らないと思い込み、自分や他の家族の事を、心のどこかでバカにするような態度は止めるべきだと釘を刺されるのだった。

その頃、たか子の郷里である弘前にスキーにやって来て、足をねん挫してしまった雄吉は、田代家では、将来を嘱望されている自分の立場の辛さを告白し、たか子に結婚してくれないかと申込んでいた。

一方、民夫からのアドバイスで、自分達が実は兄弟なのだと言う事実を教えるべきだと言われたたか子は、その事実をくみ子に伝えるが、その夜、一家全員が久々に全員揃った田代家では、父親自らの口から、信次の出生の秘密が打ち明けられる事になる。

その後、気持ちの整理がついたくみ子は、あらためて、民夫と交際しはじめる事になる。

そんな中、信次は、雄吉が、見知らぬ女と会っている所を突き止め、訳を聞くと、何度か妊娠させてしまったので、その慰謝料として100万円要求されているのだと聞かされる。

子供時代と同じく、又しても雄吉の頼みに応じ、二人の立場を入れ換え、母親に申告した信次だったが、母親の眼はごまかせなかった。

その後、河原で絵を描いている信次の元へ、たか子とくみ子が民夫を連れてやってくる。

実は、すでに、とみに再び会いに出かけた信次は、自分が息子だと言う事を打ち明け、とみの方も涙ながらに再会を喜んだのに、民夫だけが、その事実を受け入れようとしなかったので、二人を仲直りさせるために、たか子たちが勝手に仕組んだ事だった。

計られたと知った民夫はその場を去ろうとするが、信次の方は、二人だけの勝負を挑み、殴り合う事で、二人の間のわだかまりはほぐれて行くのだった。

やがて、4人で踊りに出かけた店で、信次はたか子にキスをする。

信次の真剣な気持ちを知ったたか子は、母親に会いに行き、これまでの経過を全て話すのだが、その時既に、母親は、たか子が兄弟のどちらを選ぶか見抜いていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

陽のあたる坂道の上に建っている、誰が見ても、裕福で幸せそうな家族の中に潜む、知られざる各人の心の屈折を描いた文芸作品。

石原裕次郎主演版(1958)に次ぎ、同じ日活でリメイクした作品。

今観ると、「パパ、ママ」などと、甘えた坊ちゃん言葉を話す渡哲也に若干戸惑いを覚える他は、無難に纏まった作品だと思える。

アルバイトで歌を唄っている山本圭というのも、甘えん坊風のキャラで、ちょっと新鮮。

全般的に、真面目な文芸ものと言った感じで、これといった映画的見せ場にも乏しく、やや退屈な印象。

渡の妹役を演じる車とも子という少女が、あまり見かけない顔なのだが、なかなかかわいらしく、心に残った。