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福の神・サザエさん一家

1961年、宝塚映画、長谷川町子原作、笠原良三+蓮池義雄脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

磯野家の敷地内に別棟で建てられたフグ田家の中、化粧鏡の前で一人、何やら独り言を言っているサザエさん(江利チエミ)。

その姿を不思議そうに覗いているフネ(清川虹子)に気づいたサザエさんは、花村専務(高田稔)の奥様(藤間紫)に招待されているので、そろそろ課長になりそうなマスオの昇進を助けるためにも、上流階級向けの話し言葉の練習をしているのだと説明する。

そんな磯野家に、お馴染みの山中さん(柳家金語楼)が、孫のみゆき(横山道代)を連れてやってくる。

すでに630組もの仲人を勤めた山中さんだが、このところスランプ気味で、なかなか良縁に恵まれない。

ついては、今、大学の英文科卒のくじらシオ子という娘さんの相手を探しているのだが、誰か良い相手はいないかと言うのである。

サザエさんは、京都からやってきて、こちらで貸本屋をはじめたエプロンおばさん(三益愛子)の息子一郎(太刀川寛)はどうかと言い出し、しばらく、その見合い写真を預かる事になる。

花村専務の家にやって来たサザエさんは、婦人は美容師が来ているのでちょっと待って欲しいとお手伝いさんにいわれ、応接室で待っていると、息子らしき坊やが、サザエさんの土産をメチャクチャにしてしまう。
しかも、水鉄砲で水をかけられるにおよび、ついに堪忍袋の緒が切れたサザエさんは、坊やと追いかけっこを始めるが、そこにちょうど現れた花村婦人と正面衝突してしまう。

花村婦人が、サザエさんを呼んだ理由は「トーフ会」に入らないかと言うもの。
サザエさんは「豆腐会?」と聞き間違えるが、実は「東京婦人会」の略で、女性の地位向上運動や色々社会事業に熱心なグループなのだと言う。

今後、男に封建的な男尊女卑的な態度や、女性を「おいこら」などと呼ばせてはいけない。
又、児童福祉の拡充のために、自分の子供と同じように一般の子供達にも尽くさなければならない事等を教えられ、素直にその実戦に励もうとするサザエさんだった。

その後、山中さんから預かった見合い写真を持って、エプロンおばさんの貸本屋に出かけたサザエさんは、一郎とその写真の女性との結婚話を持ちかけてみるが、おばさんは息子はまだ結婚する時期ではないが、鵜の目さん(高島忠夫)が東京本社に転勤してきたので、彼に良いのではないか、その写真をしばらく預からせてくれと言う。

ついでに、亭主(森川信)と、本の仕入に出かけるので、ちょっと留守番をしてくれないかと頼まれたサザエさんは、子供達が立ち読みをしているのを見て、児童福祉の精神を思い出し、みんなにイスに座って、心行くまで読みなさい。友達もつれて来なさいと言ったので、エプロンおばさんらが帰宅して来た時には、貸本屋は子供図書館状態。

それでも、子供のためと言うサザエさんの話に同調したおばさんは、呆れる夫を尻目に、それは良い事を思い付いてくれたとほめるのだった。

すっかり自信を持ったサザエさんは、帰る途中で出会った紙芝居屋(沢村いき雄)の売り菓子のチェックをしたり、赤信号で渡っている婦人に対して「おいこら!注意せんか!」と叱る警官の口調を注意したりするが、その婦人は、警官の奥さんとの事。

さらに、家に帰り着くと、すでに帰宅していた波平がフネの事を「おいこら」呼ばわりするので、サザエさん共々無視することに。

様子がおかしい二人に訳を聞いた波平は、ちゃんと名前を呼んでくれとフネから言われるが、驚いた事に、その妻の名前をすっかり忘れている事が判明してしまう。

ある日、花村婦人から電話があり、今度、うちで養護施設の子供達を呼んで一日遊ばせたいので、その接待係として来てくれないかと言われたサザエさん、張り切って出かけるが、当日、なかなか、子供達は、知らないおばさんたちに馴染もうとしない。

困惑する花村婦人をよそに、サザエさんは持ち前の隠し芸などでたちまち子供達の心を掴んでしまう。

調子に乗ったサザエさんは、子供達にせがまれるまま「眠れる森のサザエ姫」という即興のお伽話を始めるが、その空想に浸っているうちに、つい手に持っていたゴルフクラブで、近くで聞いていた花村専務の頭を叩いてしまうのだった。

一方、会社でのマスオさん。
同僚の雲丹(八波むと志)から、いらなくなった新品のモーニングを買わないか、君は近々課長になるともっぱらの噂だから絶対に必要になるはずなどと無理に薦められ、結局3000円で買ってしまう。

サザエさんは、駅で偶然であった帰宅途中の一郎と出会い、サザエさんのせいで、貸本屋は只読みの子供以外は誰もこなくなったので、お菓子屋に転業したと教えられる。

責任を感じたサザエさんは、開店したばかりのお菓子屋の宣伝をしようと、近くで開催されていた「素人物まねコンクール」で浪曲をうなった後、ちゃっかり、菓子屋の宣伝をしたり、自らちんどん屋の真似をして客寄せに励むが、ちょうどそこに車で通りかかった花村婦人に見つかってしまい、それでは児童福祉と言ってもやり過ぎだと飽きれられる始末。

そんな敷金菓子店にやって来たのが、山中さん。
見合い写真の件はその後どうなっているかエプロンおばさんに尋ねに来たのだが、二人とも仲人のベテランと言う話を聞いているうちに、サザエさんも仲人をやってみたくなる。

その頃、磯野家では、庭にカツオが落とし穴を作っており、帰って来たサザエさんを落とそうとするが、なかなか巧くいかない。

サザエさんが仲人をしたがっている話を聞いたカツオは、それなら横向きさん(塩沢とき)の家でお婿さんを探していると教え、早速言ってみると、それは犬の話だと分かり、怒って帰って来たサザエさんは、まんまと落とし穴に落ちてしまうのだった。

さらに、タイ子の友達の和子さんはどうかと訪ねて行くと、ちょうど、夫の辰野と、その和子さんの結婚式に出かける所だと言う。

来たついでに、カツオと共に留守番を頼まれたサザエさんは、タイ子たちの赤ん坊をあやしてやろうと、カツオにおんぶの手伝いをさせるが、カツオが背負わせたのは座ぶとん。

そんな事とは知らずに、公園に出かけたサザエさんは、たまたま出会ったみゆきにその事を指摘されるのだった。

そのみゆきと一郎を見合いさせようと目論んだサザエさん、さっそく二人を磯野家で見合いさせてみるが、これが大成功。若い二人はたちまち意気投合する。

その後、マスオさんの会社では辞令が発表されるが、マスオさんの昇進は叶わなかった。

その事を知らされ、あれほど内助の功で努力したのにと、花村夫婦を恨むサザエさんだったが、マスオさんに説得され、気持ちを切り替えるのだった。

久々に、夫婦で温泉へでも行こうと計画していた時、一郎とみゆきが訪れ、今度婚約する事にしたので、ついては、両家への挨拶をして欲しいと頼まれたサザエさんは、その申し出を断わってしまう。

もう、仲人をするのは面倒になったのだ。

その頃、エプロンおばさんの所では、見合い写真の件がちっとも進捗しないので、山中さんが写真を返して欲しい、否、返さないで、互いのプライドを賭けもめていたのだが、そこへやって来たのが、若い女性連れの鵜の目(高島忠夫)、聞けば、妻の京子(浜美枝)だと言うではないか。

そこへやって来たサザエさん、エプロンおばさんと山中さんに、互いの息子と孫が結ばれた事を知らせると、二人はたちまち仲直りをするのだった。

かくして、結局、仲人を勤める事になったサザエさんだったが、結婚式当日、肝心のマスオさんが来ない。

全員、ハラハラしていると、遅刻して来たマスオさんがいうには、今度、営業部長として、傍系会社への栄転を命じられたと言うではないか。

すっかり喜んだサザエさんは、式の挨拶で、みんなから薦められるままに、得意の歌を披露するのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演のシリーズ第10作で最終作。
一応、映画10本記念作品と銘打たれている。

正直、これまでの作品に比べると、ちょっと素直に楽しめないのは、サザエさんが、夫マスオさんの出世のために、上司の妻に取り入ろうとする話が「俗っぽく」見えるからだと思う。

それは、サラリーマンの妻になれば自然な展開なのかも知れないが、やはり、それまでの自然体が魅力だったサザエさんには似つかわしくない姿のように感じてしまうのだ。

もちろん、話自体も、そういう世間体を繕おうとするサザエさんが、結局巧くいかない…という風にまとめてあるのだが、どこかにせちがらいものが残る。

ここで、シリーズを終えたのも、ある意味、仕方なかったのかも知れない。

もう、娘時代のように、万人が共感できる生活振りではなくなっているからだ。
カツオなども、もう、両親より背が高くなっており、さすがに半ズボンははけないのでジーンズ姿。
ワカメも中学生くらいの雰囲気になっている。

毎回お馴染みの、サザエさんの夢想シーン。

今回は、「眠りの森のサザエ姫」と題した架空のお伽話の世界を夢見るのだが、そこで、高田稔が魔女に扮して登場するのが、ちょっと珍しい。

その後の現実とのつながりがあるからなのだが、ベテラン俳優のコスプレ姿には少し感心させられた。

劇中の「素人物まねコンクール」で、江利チエミのそっくりさんが登場している所や、高島忠夫の新妻役として、浜美枝が登場している所にも注目したい。