TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

伝七捕物帖 美女蝙蝠

1957年、松竹京都、野村胡堂+城昌幸+谷屋充+陣田達朗+土師精二原作、永江勇脚本、福田晴一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天保8年6月、奥州秋田の本間治左衛門は、幕府に献上する金塊を竜神丸と言う船で運んでいたが、途中、嵐に遭遇、竜神丸は金塊諸共海の藻くずになったと言われていた…。

その年の暮、江戸の町に一人の老いた巡礼(寺島貢)がやって来るが、その前に、無気味な蝙蝠と巫女姿の白髪の老婆が出現して、お前が探している娘の在り処を教えてやると意外なことを言い出す。

その言葉に釣られて、とある紺屋の中に招き入れられた巡礼だったが、無気味な影に追い詰められると、どうした訳か、何者かに撃たれたように仰け反ると、そのまま紺の染め壺の中に落ちてしまう。

ちょうど、正月用の鏡もち作りをしていた黒門町の伝七(高田浩吉)と女房のお俊(草笛光子)の所に、子分の竹(伴淳三郎)がやって来て、紺屋で変死体が見つかったと報告する。

先に現場あらためしていた早縄の五兵衛(山路義人)と子分の三太(中田耕二)金助(宮嶋安岐男)は、染め壺の中から引き出した死体にこれといった傷がない所から事故死と断定していたが、遅れて死体をあらためた伝七は、死体に首に小さな穴が空いているのを発見し、これは他殺だと判断する。

その後、部屋の中にいた蝙蝠に襲われた竹が、遺体の男に見覚えがあると言い出す。

何でも、愚連隊のお駒(嵯峨美智子)に「お咲」と呼び掛け、「半年間、江戸から所払いになっていたお前の父親を見忘れたのか」と、不思議なことをいいながら付きまとっていた所を以前見かけたというのだ。

その様子を外でうかがっていた野次馬の中の股旅姿の男が、足元から小さな鉛玉を拾ってその場を去っていった。

後刻、伝七はお駒を呼び出し事情を聞くが、あんな男に見覚えはないし、自分には親兄弟もいない捨て子だと取りつく島もない。

そんな伝七の所に、義父の池之端に住む萬五郎が殺害されたとの知らせが届く。

その手には、森田屋市兵衛の娘お咲と書かれた書状とギヤマンが入ったお守り袋を握りしめられていた。

父親を失い、嘆き哀しむ女房お俊に、伝七は事件解決を約束するのだった。

その後、あの巡礼の死体を埋めた無縁仏の墓を詣っている股旅姿の男を発見した伝七と竹は、その後をつけるが、その男の前に出現した無気味な巫女姿の老婆は、男を寺の中に誘い入ると、不思議な呪文を唱えはじめ、狐憑き状態になると「竜神丸のことはもう諦めろ」と告げるのだった。

その言葉を外から聞いていた伝七と竹だったが、後ろから深編笠の浪人に矢を放たれ、その一瞬の隙をつかれて、老婆と股旅男の姿も消えてしまう。

その後、鉄五郎というヤクザものの家に親方に会わせろと股旅男が現れ、笠を取って顔を見せると、驚く鉄五郎に対し、死んだはずの政吉(大谷友右衛門)が帰って来た告げる。

その頃、お船奉行の久世但馬(北龍二)の屋敷に、情婦で、丹前風呂「柳」の女将おせん(水戸光子)が最近かまってくれないと甘えに来ていたが、何やら、但馬の仲間たちが結集して来て、彼女を追い返してしまう。

大晦日の夜、伝七の家に奥州坂田家の番頭忠助(サトウ・サブロー)なる男が訪ねて来て、沈没した竜神丸には不審な点があるといいかけた所、何者かに鉛玉を投げられ、玄関先で息絶えてしまう。

急いで表に不審者を探しに出た伝七は、酒屋に入るあの股旅姿の男を発見、ちょうどその店には、お駒も一緒に居合わせたが、伝七の姿を見て、他の愚連隊仲間たちと逃げ出してしまう。

巡礼殺害の紺屋で拾ったという鉛玉を弄んでいた政吉だったが、伝七の質問にはまともに答えようとしなかった。

翌朝、元旦早々、品川の港に様子を見に行った伝七と竹は、沖に停泊中の琉球船と、船あらために来ていた久世但馬を発見する。

丹前風呂の柳屋でヤクザものたちに因縁を付けられていたお駒を助けてくれたのは、店を訪れていた政吉。
女小間物屋に化けてその後をつけていた竹は、あっさり、政吉から正体を見破られてしまう。

しかし、その後も、政吉を泳がせつけていた伝七と竹は、とうとう、顔に醜い火傷の痕のある山伏が政吉を襲う現場に遭遇、自分達も謎の覆面軍団に襲われ、政吉と山伏は橋の上でもつれあったまま川に落ちてしまう。

飴屋に化けて、その橋でその後も、政吉の行方を探っていた竹だったが、実は、政吉は、愚連隊の少女たちが住んでいた川舟の中に匿われていたのだった。

久世但馬の屋敷内に、森田屋の娘お咲が腰元として囲われている秘密を盗み聞いたおせんは、嫉妬心から、お駒、政吉に彼女を誘拐するよう依頼する。

一方、お俊は、そのお咲奪還のため、自ら、但馬の屋敷に潜入させてくれと伝七に願い出る、腰元に化けて、地下牢に幽閉されていたお咲を救い出すが、伝七、竹が駆けつけ、屋敷内で大立ち回りが始まると、お俊は、但馬たちの手に捕らえられ、竹が外に連れ出したお咲も、お駒と政吉によって連れ去られてしまう。

柳屋のおせんの元に、政吉に連れて来られたお咲だったが、そこへ現れたのが山伏姿の大男。

山伏はお咲を殺害せんと斬り付けるが、改心したお駒からこの場所を聞き付けた伝七が駆けつけ、かろうじて虫の息だったお咲を助け出すことができる。

お咲とお駒は、双子の姉妹だった事が判明。

その死の床で、お咲は、父親によって背中に彫られた蝙蝠の刺青を伝七に見せるのだった。

殺された義父、萬五郎が持っていたぎやまんと謎の文字が書かれた書状と、その刺青をヒントに、伝七は、竜神丸に積まれ、海に沈んだといわれていた金塊が、とある島に隠されていると知り、竹と共に向う。

山深い島の中の蝙蝠谷の洞窟へ行き着いた伝七、竹コンビは、血を思わせる真っ赤な地下水の池がある洞窟内で、例の白髪の老婆と山伏、実は竜神丸の生き残りの一人横地矢源太(石黒達也)、さらには、見上げるほどの大男(羅生門)などに遭遇する事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

捕物作家クラブの面々が共同執筆した原作を元に作られたシリーズ7作目で、初のカラー作品。

この時期、大映、長谷川一夫主演の銭形平次や、新東宝、若山富三郎主演の人形佐七など、捕物映画は人気ジャンルだったようで各社でシリーズが作られている。

そんな中、本作は公開こそ1月後半だったようだが、内容は完全な正月映画といって良く、豪華な作りの娯楽映画になっている。

見所は、伴淳扮する伝七の子分、竹が、劇中色々な変装をして登場する所。

丹前風呂(湯女風呂)に潜入する際、女小間物屋に扮装するのだが、商売荒らしと因縁をつけて来た同業者に対し、「あたしゃ、数寄屋橋の真知子っていうんだ」と啖呵をきる所がおかしい。

もちろんこれは、松竹のヒット作「君の名は」(1953〜1954)をもじったセリフ。

他にも、女愚連隊や「後で、アルサロに案内する」などコント風のセリフ等や、怪奇、探検アドベンチャーなど、盛り沢山な要素が詰め込まれているので、最後まで退屈させない。

洞窟内の情景等は、後の松竹大作「八つ墓村」を連想させる凝ったセットが作られている。

伝七が歌いながら謎ときをするシーン等は、バカバカしくも、いかにも唄うスター高田浩吉のキャラクターを生かした演出。

この高田浩吉と女房役の草笛光子、子分役の伴淳以外は、今ではあまり見覚えのない人たちばかりなのだが、股旅姿の怪し気な男に扮しているのは、この当時、各社の映画に出ていた歌舞伎俳優、七代目大谷友右衛門(現:中村雀右衛門)、洞窟内の大男として登場するのは、「用心棒」などでもお馴染みの巨漢俳優羅生門綱五郎である。

全体的にあれこれサービス満点だが、ストーリー的には冗漫気味で、今観て、ものすごく面白いというほどではないが、当時の松竹時代劇の底力を知る事ができる、肩の凝らない作品になっている。