TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

私をスキーに連れてって

1987年、フジテレビ+小学館、一色伸幸脚本、馬場康夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

商社勤務の矢野(三上博史)は、本来、軽金属部所属にもかかわらず、趣味も兼ねて、スポーツ部のスキー用品開発の手伝いに夢中という変わり種。

そんな矢野、クリスマスの日に、スポーツ部が開発した「SALLOT(サロット)」というスキー用品一式の試験も兼ねて、本来の仕事もそこそこに雪山へ出かけ、外科医の泉(布施博)やバイクショップ勤務の小杉(沖田博之)、それに真理子(原田貴和子)、ヒロコ(高橋ひとみ)ら友人たちと合流して、スキーを楽しもうとしていた。

日頃は引っ込み思案で目立たないタイプの矢野であったが、スキーの腕だけは確かだった。

そのスキー場で、矢野はかわいらしい優(原田知世)という女の子に出会い、一目惚れする。

別れる際、思いきって彼女に電話番号を聞くが、彼女は警戒して嘘を教えてしまう。

東京に戻って来たある日、雪山に出かける時、やっつけで済ませておいた仕事のミスが見つかり、部長(小堺一也)と共に、重役に謝りにいった部屋で、矢野はお茶を持って来た優とばったり再会してしまう。
彼女は偶然にも、同じ会社の秘書課に勤めていたのだった。

その話を聞いたヒロコは、保険の外交員に化けて矢野の会社に侵入、矢野を優のいる秘書課に連れていき、大晦日の日、一緒に万座へスキーに行かないかと誘うが、優は友人の恭代(鳥越マリ)と共に、志賀高原のスキー場に遊びに行く予定があったため断わるのだった。

万座に着いた矢野は、優に会いたい気持ちがつのり、万座と志賀は直線距離で2時間くらいで着ける距離だと気づくが、冬は危険で通れないと分かり、車では遠回りになり5時間かかるという道のりを思いきって出かけることにする。

一方、志賀にいた優の方も、何となく気分が落ち着かず、やっぱり、恭代の車を借りて出かけることにする。

二人は途中の路で出会い、そこで新年を迎えると同時に、互いの思いを確認しあうのだった。

こうして、晴れて付き合うようになった二人だったが、「SALLOT」開発の手伝いをする矢野は多忙な時間が重なり、なかなか優と会えなくなってしまう。

しばらくは仕事のためと我慢していた優だったが、ある日思いきって、次のバレンタインデーの日に、志賀高原へ出かけないかと矢野を誘う。

実は矢野は、そのバレンタインデーに行われる「SALLOT」の発表会に自分もぜひ出席したく、以前からスポーツ部の田山(田中邦衛)に頼んでおり、ようやく、その願いがかなった所だったのだが、せっかくの優の気持ちを立てて、その申し出を受けることにする。

田山からの好意で、「SALLOT」一式を全員が借り受けることが出来た矢野たちは、志賀高原で羽を伸ばしていたが、その頃、万座の発表会では、発送の手違いから、「SALLOT」の商品が現場に届いていないことが判明、真っ青になったスポーツ部員たちは、志賀にいる優に電話して来て、至急、君らが来ている服を、朝7時までにこちらに持って来て欲しいという。

その時間まで後2時間くらいしかなく、慌てた優は、矢野たちに連絡しようとするが姿が見えない。

真理子とヒロコは、無理は承知で、車で走り出す。

そんな騒ぎは知らず、一人ロッカールームに戻って来た矢野は、優の置き手紙を発見する。

自分一人で、志賀、万座の直線コースを出かけるというのだった。

冬は滑走禁止のコースであるばかりでなく、優のスキーの腕前では到底無理だと焦った矢野は、彼女を追い掛け途中で合流するが、二人は途中で道に迷ってしまい、ビバークを決意せざるを得なくなる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

松任谷由美のメロディーと楽し気なスキーの光景を織りまぜて描く、お遊び感覚満載の「Boy meets Girl」テーマのティーン映画。

内容はどう観てもたあいないティーン映画なのだが、そこに登場している人物たちは、バブル期真っ盛りの頃の20代半ばくらいの富裕な社会人たちというのが本作の特長。

仕事よりも、遊ぶことに金と知恵を注ぎ込んでいるような若い社会人像が時代を象徴している。

おそらく当時、この映画を実際に観ていた観客層は、もう少し下の世代の子供達が多かったのではないか。

ストーリー性やキャラクターで見せるというよりも、フィーリング重視といった感じで、ミュージッククリップを映画用に膨らませたような感じになっている。

もう一つの特長は、この作品が、往年の「若大将シリーズ」を意識して作られていること。

馬場監督は、このシリーズの大ファンだったらしく、主人公矢野が尊敬する先輩役として、青大将こと田中邦衛が登場する他、若大将の妹役でお馴染みだった中真千子も、目立たないシーンでしっかり顔を出している。

その田中邦衛の役名「田山」というのは、「田沼雄一(若大将の劇中名)」と「加山雄三(若大将を演じた俳優)」の名字をもじった名前だと思われる。

ただし、仕事もスポーツも両立させるヒーロー像としての若大将とは違い、本作の主人公矢野は、普段はシャイで意外と存在感が薄いし、一応、スキーは巧いという設定だがスキー場で目立っている風でもなく、比較的等身大のキャラクターとして描かれている。

それは、この作品の本当の主人公は原田知世の方で、彼女のアイドル映画として作られているからなのだろうが、その原田知世も、ゲレンデ以外の場では、驚くほど印象が薄くなっている。

主役たるべきこの二人の印象が弱いので、作品自体のイメージも、観終わった後、記憶に残りにくい。

観ている間は、音楽のノリなどで何となく観てしまうのだが、後に何も印象に残らない…、それは作品としての弱点というよりも、むしろ、この時代を表現する一つの答えだったのかも知れない。