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スローなブギにしてくれ

1981年、角川春樹事務所+東映、片岡義男原作、内田栄一脚本、藤田敏八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夏。

街で子猫を拾った少女が、中年男に拾われて車に乗っていた。

互いに名前を尋ねあい、少女は小林さち乃と答え、男は乗っている車と同じムスタングと答える。

いきなり車を止めたその男、さち乃が抱いていた子猫を窓の外に放り投げると、いきなり、少女も車から放り投げて去ってしまったので、後ろから付いて来ていたバイクの青年ゴロー(古尾谷雅人)が路上に倒れたさち乃と、電線に引っ掛かっていた子猫を助け、取りあえず喫茶店まで連れていくが、その時、さち乃は自分の財布と手帳をムスタングに置き忘れて来た事に気づく。

福生にある自宅に帰り付いた中年男は、同じ家に同居している輝男(原田芳雄)に、同居している敬子(浅野裕子)の子供の養育費を約束通り払えと催促する。

どうやら、二人共通の愛人らしき敬子が生んだ赤ん坊がどちらの子供かはっきりしないので、二人の間に養育費を月毎に交替で支払うと言う取り決めがなされているらしい。

輝男は素直に謝罪し、毎晩の日課であるジョギングに出かけるのだが、その途中で心臓発作を起こし急死してしまう。

その遺体を家に持ち帰って来てふさぎ込んでいた男は、ムスタングの中でさち乃の財布を発見し、手帳に書かれていた住所を頼りに横浜のさち乃の実家まで訪ねてみるが、そこには、片腕を怪我した母親(春川ますみ)が、夫が残した借金に苦しんでいる様子だったので、自分の電話番号だけを残して帰る事にする。

亡くなった輝男の遺骸を前に、その両親に同居していた自分達三人の関係を説明していた男の元に、さち乃から電話がかかり、二人は福生の駅前で再会する。

さち乃の家の側までムスタングで送っていった男は、さち乃の唇を奪う。

秋。

馴染みのスナック、「クイーン・エリザベス」へ同棲をはじめたさち乃を連れて出かけたゴローは、元GSメンバーだったと言うマスター(室田日出男)の依頼で、さち乃をそこで働かせる事になる。

さらに、ゴロー自身はバイト先の牛丼屋を首になっていた事もあり、路上で知り合ったハーレーの女(宮井えりな)を抱いたりして、気持ちを荒ませていく。

アパートへ帰らなくなったゴローとの生活に倦み疲れたさち乃は、再びムスタングの男に連絡を取り出会うのだが、高原のホテルへ連れていかれて抱き合った夜、男は、離婚した妻と幼い娘の事をベッドで思い出し悪酔いするのだった。

ホテルから帰ったさち乃は、久々に戻って来たゴローと再会する事になるのだが、ある夜、スナックからの帰り道、さち乃は二人の男から襲われ陵辱を受ける。

その事を聞かされたゴローは復讐を決意し、後に、スナックに知らずに現れた二人をボコボコにするのだった。

しかし、さち乃の心は癒されず、ムスタングの男の家に、裕子とその妹、由紀江(竹田かほり)、赤ん坊のマーテルと一緒に同居する事にするのだが、こうした不自然な生活も長続きするはずもなく、やがて、さち乃が家を出、裕子姉妹も赤ん坊共々故郷に帰る事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

不幸な家から逃れるように独り生きている猫好きの高校生の少女と、バイクが趣味の青年、それに怪し気な男女の共同生活を送っている有閑中年男が織り成す不思議な時間の経過を綴った大人のドラマ。

当時、盛んにテレビスポットで流され、ヒットした南佳孝の小粋なメロディーも懐かしい。

淡々とした内容で、退屈と言えば退屈なのだが、じっくり作品世界に入り込めば、 何を考えて生きているのか分からないような不可思議な登場人物たちのキャラクターが各々面白く、徐々に物語世界に惹き付けられていくような魅力がある。

特に、名もない中年を演ずる山崎努と、女子高校生役の浅野温子の存在感は圧巻。

登場場面は少ないながら、冒頭に登場する原田芳雄や、スナックのマスターを演じている室田日出男の物静かな演技も印象的。

そのマスターが元GSの一員で、レコードも出したことがあると言う設定だからなのか、この店には、元タイガースの岸部一徳や元モップスの鈴木ヒロミツなども客として訪れている。

さらに、レイプ犯を演じているのが作家の高橋三千綱だったり、山崎努演ずる男の離婚を担当したおかしなキャラクターの弁護士を伊丹十三が演じているのも意外性がある。

この後、「お葬式」(1984)以降の伊丹作品に山崎努が良く出演していたのを知っているだけに、この二人の共演シーンは興味深かった。

毎回、自分のプロデュース作品にはどこかしらに必ず登場していた角川春樹氏だが、今回もちゃんと登場している。