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白い肌と黄色い隊長

1960年、松竹大船、菊池政男原作、猪俣勝人脚本、堀内真直監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和20年秋、オランダ領だったインドネシアのマカッサルでは、連合国側による戦犯裁判が連日のように行われ、元日本兵のほとんどが絞首刑に処せられていた。

1800名ものオランダ人婦女子を収容していた、南太平洋セレベス島のカンピリ抑留地所長だった山地正(大木実)もその戦犯として裁かれている一人だった。

彼は、傍聴席にいたカンピリ抑留者ドールン夫人(エリース・リクター)の反対の声にも関わらず、「婦女子虐待」の罪名で死刑を言い渡される。

山地に面会した弁護士(信欣三)は自分の非力さを詫びるが、山地は敗戦国側の人間として刑はともかく、「婦女子虐待」という汚名だけは晴らしたいと願っていた。

そんな彼の元に、次々と元カンピリにいた夫人たちから励ましの手紙やプレゼントが届くようになる。

弁護士は、上告の手続きを取ると山地に伝えるのだった。

画面は、独身の海軍上等兵曹山地がカンピリ抑留地の所長に命ぜられ、大勢の婦女子の前で着任の挨拶をするシーンに転換する。

彼は、あまりの所内の環境の悪さに愕然とし、部下たちには、所内の飲酒厳禁、婦女子へ手を出す事の禁止などを命ずると共に、上官である相原中佐(杉浦直樹)に待遇改善を願い出に出かける。

かくして、抑留地にはベッドが到着、所内には井戸も掘り、さらには、食料が口にあわない彼女たちのために近所から豚まで調達して来た山地の熱意もあって、抑留夫人たちは少しづつ彼に心を開くようになって行く。

さらに山地は、所内の秩序は彼女たちの自治に任せる事にし、さらに自活したいという夫人たちからの願いも聞き入れ、ミシンを運びいれ、洋裁の仕事を依頼して、その報酬を軍からもらえるように計らう。

そんな中、山地に好意を寄せていた少女のマリエッタが野犬にかみ殺されると言う事故が発生、山地たちは野犬狩りを徹底するのだった。

ところが、ある蒸し暑い夜、一人シャワーを浴びに外に出たラッセル夫人を、外から酔って帰って来た萩原古参兵(南郷佑児)がいたずら半分で覗き、大問題になると言う騒ぎが発生する。

この騒ぎをおさめようと、山地は13名の部下たちを現隊に復帰させる事にするが、これが後の裁判で、犯人をわざと逃したと責められる一因となる。

やがて、戦況は悪化、これまで、山路に好意的だった相原中佐はブーゲンビル戦線に出撃、帰らぬ人となる。

女性ばかりの婦人が集まっている抑留地では、性的な欲求も問題で、ある夜、山路のちょっとした仕種を、個人的な求愛行動と錯覚した婦人が、独り、山路のベッドに忍び込んで来ると言う騒ぎが起こる。

立場上、彼女に言い聞かせて帰らせた山路だったが、自分の欲求を発散させるためにマカストル慰安所へ出かけるが、そこで酔った兵隊(内田良平)からからかわれ、喧嘩を起こしてしまう。
敗戦濃厚になった現地の兵隊たち全員の心が荒んでいた証拠であった。

昭和19年、マカッサルは最前線基地となり、慰安所の人員も不足がちになった事を知った松下少佐(山茶花究)は、抑留地にいるオランダ人女性を高官用慰安婦として廻せと山地に命じて来るが、山地は戦時国際法違反と日本海軍の名誉を盾に、必死に抵抗しようとして、松下の部下から顔を斬られるという事件も起こる。

この事態は、運良く柴田中将(笠智衆)の耳に入り、何とか回避する事が出来たのだが、抑留地は翌昭和20年春、連合国側の爆撃にあい、山地は部下の岡島(梶川)を失う。

やがて敗戦を迎え、所内で抑留者たち全員を前に別れの挨拶をした山路だったが、夫人たちは彼に対し、しばらく秩序維持のため、所長としての続投を願い出るのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼


第二次大戦中、当時オランダ領であったセレベス島を占拠した日本海軍は、オランダ人男女の捕虜を別々の場所に抑留しており、その婦女子抑留地の所長を勤めた山路上等兵曹という実在した方の逸話に基づいた作品であるらしいのだが、個人的には全く知らなかったエピソードであり、そういう意味では大変勉強になった。

捕虜に対する日本軍の非道な行為をイギリス側の視点から描いた「戦場にかける橋」(1957)を意識したのか、日本軍の中にも、捕虜に対して人間的な接し方をした人もいたのだという事を描いているのだが、こうした事が美談としてあえて取り上げられるという事自体、逆にそうした事例は稀だったと言っている事と同じであり、最後の方で、結局戦争が悪いかのように夫人たちに言わせているが、そうした事も含め、どこか日本人の「言い訳めいた作品」に見えなくもない所がつらい。

映画としては、何となく時系列的にエピソードを羅列しただけ…という感じで、ドラマとしての緊迫感や盛り上がりはあまり感じられず、全体的に凡庸な印象は拭えないが、実話がベースなのであれば仕方ない所かも知れない。

今観ると、人間的な主人公の事よりも、フィクションであって欲しいと思いたくなるような海軍上部のエピソードの方がショッキングで、観ていて哀しくなる。

出来うれば、柴田中将(笠智衆)のエピソードこそ、事実であって欲しいのだが…。

ただ、膨大な数の外国人エキストラが実際に登場しており、一見、外国映画のようにも感じられる事。
しかも、その主要メンバーたちは皆、拙いながらも日本語でしゃべっている所等に素朴な驚きを覚えた。

人集めだけでも、今では、実行不可能なのではないか。

連合国側による抑留地空爆のシーンも迫力があり、かなり予算を投じているのが分かる。

人情家の上官を演じる杉浦直樹と、いかにも嫌な上官を演じる山茶花究の対比、荒んだ心の兵隊を演ずる内田良平などは印象に残る。