TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

秦・始皇帝

1962年、大映東京、八尋位不二脚本、田中重雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

紀元前230年、中国は群雄割拠の時代で戦乱に明け暮れる毎日。

そんな中、西方の国、秦では、政(勝新太郎)が救民救国のため決起した。

その政を大将と慕って戦っていた通称「親父」こと李唐(東野英治郎)は、戦いの最中、左腕を切断されてしまう。

しかし、高熱にうなされてもなおかつ、大将を助けようとする親父のうわ言を聞き、政は共に戦う仲間たちとの絆を確認しあうのだった。

そんな政の元に、武虎将軍(菅井一郎)が戦果を上げて帰ってくる。

しかし、政は、彼の手柄を誉めず、抵抗しない農民の家を焼き討ちし、女性も襲った罪を責め、「俺は、自分の手でも、腐れば切断する」と言い放ち、その場で武虎将軍を処刑するよう命ずるのであった。

翌、紀元前231年、政によって全国統一は達成され、ここに歴史上始めての巨大帝国が誕生する。

国の宰相である丞相、呂不韋(河津清三郎)は、これまで通り、諸国の王制の継続を進言するが、今や秦の始皇帝となった政は、李斯(春本富士夫)の封建性を撤廃し、中央集権性にするべしという意見の方を採用する。

諸国の元王たちに謁見した始皇帝は、幼い頃、同じ人質の身として暮したことがある燕の国の丹(宇津井健)とも再会するが、その丹にさえ隷属を命ずる始皇帝の態度には、すでに昔の幼馴染みの面影はなかった。

新しい都咸陽には阿呆宮という、全国から集められた3000人の美女たちが住む豪華な宮殿が建てられ、その入居者を選定する試験が始まるが、そこで、歌や踊りではなく、馬上からの弓をいささか嗜むという風変わりな美女が登場する。

彼女は、始皇帝自ら貸し与えた馬に跨がると、あろうことか、始皇帝を狙って弓を射る。
彼女は、始皇帝に滅ぼされたしこうの娘しきと名乗り、始皇帝への復讐を口にするが、その気性と美貌を気に入った始皇帝は、彼女に貴姫(山本富士子)という名前を与えると、阿房宮最初の住人に選ぶのだった。

しかし、欲しいものは何でも手中にする始皇帝でも、貴姫の心だけは自由にならず、その心の変わる時期を待つことになる。

始皇帝の母太后(山田五十鈴)は、宦官との浮気を楽しむふしだらな毎日を送っていたが、その現場に乗り込んで来た始皇帝に、呼ばれて参上した呂不韋は意外な打ち明け話をする。

実は、始皇帝の本当の父親は、先王ではなく、昔商人だった自分なのだというのだった。

だが、その話を聞かされた始皇帝は、実の父である呂不韋を北の国屬へ左遷することにする。

その頃、燕の国では、自分の額に括り着けた桃に少しでも傷をつけることが出来たら、金を出すと称する大道芸人(高松英郎)がいた。

腕に覚えのある男(伊達三郎)が、試しに彼に斬り掛かってみるが、刀はその桃にはかすりもせず、その大道芸人が不思議な術を使うことが分かるが、その大道芸人の桃をあっさり斬った男が出現する。

その男こそ、町で評判の剣の達人荊軻(市川雷蔵)だったが、彼の腕を買う人間はその町におらず、妻(中村玉緒)と貧困生活に明け暮れていた。

そんな荊軻の元へ、丹からの使いという田光(佐々木孝丸)がやって来て、老いた自分に代わり、始皇帝の暗殺をしてもらいたいと依頼する。

承知した荊軻は、始皇帝の政策に疑問を持ち、丹の元へ逃げ込んで来た老将軍の首と、相手が欲しがっていた地図を携えて始皇帝に近づき、彼の首に、隠し持っていた剣を突き立てる寸前までたどり着くが、脇に控えていた貴姫の一言によって隙を作ってしまい、暗殺は失敗に期す。

この事件によって、貴姫と始皇帝の気持ちは強く結びつくのだった。

始皇帝暗殺失敗を知った丹は、張良(根上淳)の軍と合流し、一気に始皇帝の軍と戦う決戦に討って出るが、結局敗退してしまう。

その戦の最中、無防備状態になった咸陽の町と阿呆宮は、北から侵入して来た蛮族の手によって襲撃され、防戦空しく、貴姫も戦死してしまう。

これを知って、嘆き哀しんだ始皇帝は、北の蛮族の侵入を防ぐために、万里の長城建設を家臣たちに命ずる。

さらに、巡行道路建設や運河建設など、始皇帝の夢はとどまることを知らず、その無謀な建設に駆り立てられた人民の不満は絶好調に達しようとしていた。

しかし、もはや、他人の意見など聞く耳持たない状態になった始皇帝は、彼に公然と反対する儒学者たち(長谷川一夫、宮口精二)を穴埋めを極刑にしてしまっただけではなく、書物一切を焚書にしてしまうのだった。

そんな中から、大切な書物を持ち出した万喜良(川口浩)と芦生(川崎敬三)ら一部の若者がいた。

独り逃げ延びた喜良は、とある屋敷で見かけた孟姜児(若尾文子)と、ひょんなことから結婚させられることになるが、彼の所在を聞き付けた役人たちから結婚式の場から引き立てられ、万里の長城建設現場の人夫として送られてしまう。

さらに、度重なる地震によって工事が停滞していた事態を打開するため、人柱にされてしまう。

そのことを、第六感で察した孟姜児は、独り、夫の元へ旅立つが、途中、山賊に襲われかけたところを、李唐の息子李黒(本郷功次郎)に助けられる。

万里の長城に到着し、そこで出会った徐福という法師(中村雁治郎)から、夫の遺骸が埋まる六角堂を教えられた孟姜児は、亡き夫に合わせてくれと神に泣き頼むが、その声が天に届いたのか、一天にわかにかき曇ると、雷光と共に大地震が発生し、たちまちの内に、長城は崩れ去るのだった。

その罪で捕らえられた孟姜児は、始皇帝の前で火あぶりの刑に処せられることになるが、止めに入った李黒の言葉によって、始皇帝は彼女の罪を許すが、縄を解かれた孟姜児は、夫の元へ行くといって自害するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

中華民国の協力を得て大映が作った超大作。

歴史上最初の帝国を作ったとされる秦の始皇帝の、若い頃から晩年までを描いた内容になっている。

幼い時は、政略上の人質として他国に囚われ辛酸を舐めた経験から、戦乱に苦しむ人民を助けようと立ち上がりながら、全国を平定して皇帝の位に到達して以降は、自らの権力の証を歴史に残すため、人民を苦しめ抜く、自己中心的な人間に変化していく様が描かれていく。

皇帝自らは、その考え方を私利私欲のためではなく、何千年も後の民衆の幸せのためだと信じきっていたが、その犠牲にされた当時の民衆には理解されなかった。

若尾文子演ずる孟姜児は、皇帝にこう叫ぶ。「何千年も後の人の幸せなんかどうでもいい。今の自分達の小さな幸せが欲しいのだ」と。

この手の大作にありがちな傾向だが、あれこれ要素を盛り込み過ぎており、何百人ものエキストラが登場する合戦のシーンなど、確かにそれなりの迫力はあるが、取り立てて印象に残るようなアクション演出があるでもなし、山本富士子演ずる貴姫と始皇帝との心の変化なども、もうちょっと掘り下げていれば、後半の始皇帝の態度の変化がより鮮明になったのではないかと感じられ、アクションものとしても、ラブロマンスとしても、英雄譚としても全体的に中途半端で、何となく大味な印象しか残ない弱さがある。

登場人物もやたらに多いが、全体的に若手中心に組み立てられているようで、山田五十鈴や長谷川一夫などベテラン陣は、特別ゲスト扱いなのだろうが、あまり良い役所を与えられているとも感じられない。

そんな中、主役勝新のライバル的存在だった市川雷蔵の登場シーンは、やはりひと味、力の入れ方が違っているようで、極めて魅力的なキャラクターとして描かれている。

雷蔵が歌を唄いながら(歌声は明らかに吹き替えだが)舞うシーンなど、かなり意外さがある。

大映スター総出演なのは当然として、「月光仮面」こと大瀬康一がちらりと登場しているのも貴重。

余談だが、若尾文子が泣きながら神に祈りを捧げると、一天にわかに書き曇り、超常現象が起こる下りは、音楽が両作品とも伊福部昭ということもあるが、どう観ても、後の「大魔神」(1966)に繋がるイメージだと思う。

絵合成なども多用されており、地味ながらも特撮技術はかなりのハイレベルだと感じた。


★【送料無料】 DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-201

★【送料無料】 DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-201
価格:4,860円(税込、送料込)

★【送料無料】 DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-201

★【送料無料】 DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-201
価格:4,116円(税込、送料込)

★【送料無料】DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-90942

★【送料無料】DVD/邦画/秦・始皇帝/DABA-90942
価格:3,024円(税込、送料込)

勝新太郎/秦・始皇帝

勝新太郎/秦・始皇帝
価格:3,024円(税込、送料別)