TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

高校生無頼控

1972年、国際放映、小池一雄+芳谷圭司原作、佐々木守+足立正生脚本、江崎実生監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

鹿児島、櫻島、三人の修学旅行生が奇妙な立て看板を見つける。

「薩摩出刃、切腹にお薦め」

その看板の前には、一人の高校生村木正人、通称ムラマサ(沖雅也)が正座している。

好奇心といたずら心から、そのムラマサに一人1万円づつ渡して切腹してみろとけしかける高校生三人。

その目の前で、あっさりシャツの上から出刃を腹に突き刺し出血したムラマサに、怯えた高校生たちは逃げ出すのだった。

その場に現れた示現流陽心館総帥早瀬一剣(宍戸錠)の娘、早瀬卓子(夏純子)は、氷枕に豚の血を入れ、腹に巻いていたムラマサのいたずらを見破るが、そんなにしてまで、ムラマサが金を欲しがる理由が分からなかった。

その後、ムラマサは、林の中で縊死している母親の姿を発見、その遺体に、彼女をこんな目にあわせ、東京で逮捕された兄を保釈して、叩き斬ると誓うのだった。

さらに、道場に出向き、いつものように卓子を抱いたムラマサは、学校に退学、剣道部には退部届けを出して来たことを告白する。

自分と別れるつもりであることを知った卓子は、帰りかけるムラマサを前に大声を上げ、その声を聞いて現れた一剣とムラマサは、真剣勝負をすることになる。

結局、相打ちとなり、ムラマサの実力と、娘が彼を本気で惚れていることを知った一剣は、卓子をムラマサに託すつもりになるが、ムラマサの方は迷惑顔、そのまま一人で東京へ向けて出発するのだった。

金を節約するために、電車の中では、隣で寝ていた中年男と自分の腕に、おもちゃの手錠をかけ、車掌の検札を免れるムラマサ。

宮崎に到着したムラマサは、質屋の娘倉谷高子(集三枝子)から中古のカメラを一台借り受け、それを持って、平和台公園でいちゃついているアベックたちを写す真似事を始める。

浮気現場を撮られたと錯覚した教師らしき男(南利明)や、近づいて来た警官、さらには、ムラマサの後を付けて来た高子などが集結し、ムラマサの怪しい行動を詮索しはじめるが、結局、彼の言葉にごまかされるままに、教師らしき男は金を渡すことになる。

その後は、因縁を付けた高子の部屋に上がり込み、彼女と良いことをするムラマサだった。

それからしばらく、平和台公園内で「シャッター押します」と書いた看板をかかげて待っていたムラマサに、声をかけて来たのは、邪馬台国の女王、卑弥呼に扮し、プロのカメラマンに写されていたモデル未来(沢知美)、ひょんなことから、その彼女に気に入られ、やがては、カメラマン一行の用心棒として付き合うことになる。

もちろん未来とも、海の中で抱擁しあうムラマサだった。

団体客に紛れ込みサンフラワー号にただで乗り込んだムラマサは、親から反対された結婚をしている男女を発見、これまた、言葉巧みに近づき、二人の披露宴のごちそうをちゃっかり頂くのだった。

姫路城で寝転んでいたムラマサは、「黙示録」という奇妙なフォークグループにコンサートの邪魔だと声をかけられる。

そのグループのマリア(中川加奈)から、懐に入れていた持金40万をすられたことに気づいたムラマサは、彼女を追い掛け、彼女を取り押さえようとしていた婦人警官と遭遇。

結局、貧乏ミュージシャンたちが、彼女がすった金を分配して生活をしていたことを突き止め、全員から金を取り戻した後、成りゆき上、婦人警官とも、公園のブランコで大人の遊びをするムラマサだった。

京都に着いたムラマサは、部員たちが余りに弱いために、静御前と称される生徒会長から剣道部を潰されそうだと心配しながら、対戦校へ試合に向う高校生三人組と遭遇、彼らに勝負を挑み、あっさり勝手、彼らの防具一式を頂戴し立ち去ろうとするが、そこに現れたのが、当の静御前、もし、今から行われる相手校との試合に一条校の新入部員として参加して、負けたら防具を返す、もし勝ったら、自分の唇をあげるといわれる。

結果は、あっさり優勝。
ムラマサは、覚悟を決めて目をつぶり、唇を差し出す静御前の前に剣道部費の値上げを約束する書面を突き付けて、彼女の唇の痕を印鑑代わりに付け、影ながら様子を見守っていた部員たちに渡すのだった。

その後、関ヶ原の辺りから、荷台に乗せてもらった長距離トラックの女性運転手と宜しくやったり、米軍基地内で、バイクに乗り、鞭を操って、日本人男性を弄んでいたアメリカ人女性グループをやっつけたりしながら東京に到着したムラマサは、兄を保釈しようと向った地裁で、すでにその兄は何者かによって連れ出されていたことを知るのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

週刊漫画アクション掲載の小池一雄原作、芳谷圭司画による原作を映画化したもので、3本作られたシリーズの一作目。二本目からは、大門正明が主演を演じている。

過激派運動にのめり込み警察に逮捕された兄に絶望し、自殺した母親の無念を晴らすために、その実の兄を斬るために上京する、鹿児島の高校生で示現流の使い手、村木正人通称ムラマサが、旅をする途中で遭遇する様々な女性とあっさり関係していくという…硬派なんだか、軟派なんだか良く分からない脳天気ストーリー。

ニヒルに見えて、女にもてまくる剣の達人などを主人公にした、通俗時代小説を現代に置き換えた発想なのかも知れない。

ただの高校生が真剣を持って旅行していて、逮捕されないのか?…などと、野暮な突っ込みはしないこと。

あくまでも、70年代の青年向け妄想劇画の世界である。

冒頭からきてれつというか、バカバカしいシーンの連続だが、京王プラザホテルの一室で、過激派女子学生と「野球拳」に興じる沖雅也の姿は強烈。

示現流総帥役を演じるのは口ひげ姿の宍戸錠。その娘で、ムラマサを一途に慕うのが夏純子。

テレビ「必殺からくり人」で沖雅也と共演していた江戸屋小猫や、キレンジャーことが畑山麦、神父の格好をした海野かつおが、奇妙なフォークグループの一員として登場していたり、意外な顔ぶれが登場する所にも注目したい。

岸田森演ずるムラマサの兄は、一人シリアスに演じているが、その仲間だという過激派の学生たちが、単なる「幼稚な坊や、嬢やたち」にしか見えないのが何ともアンバランスで滑稽。