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喜劇 駅前火山

1968年、東京映画、池田一朗脚本、山田達雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

西鹿児島駅の前で、ムショ帰りの詐話師二人組、松木三平(三木のり平)と藤山(藤村有弘)が、地震に襲われ慌てるが、それは地元ではお馴染みの桜島の噴火だった。

桜島に迷い込んだ二人は、近くにいた小舟に助けを求めるが、それに乗っていたのは、地元の漁師、伴野孫作(伴淳三郎)、金にならないと分かると、二人を残して遠ざかっていく。

がっかりする二人組の前の海面から、突然、一人の男が浮上してくる。
堺屋の息子で、西郷隆盛の曾孫に当ると言う堺次郎(フランキー堺)だった。
彼は、地熱利用発電の可能性を研究中で、海底の蒸気噴出口を探している所だったのだ。

その頃、地元の呉服店「鹿児島屋」の社長、森田徳之助(森繁久彌)は、妻で副社長の桂子(淡島千景)、妹でセスナのパイロットをしている純子(池内淳子)を伴い、ホテルで客を接待していたが、馴染みの芸者〆香(嘉手納清美)に偶然出会い、互いに合図をしあっているのを、桂子らに見つかり腕をつねられることになる。

桂子は、亭主の浮気癖にも悩まされていたが、同時に義理の妹純子がいつまでも独身でいるのも気にしており、同じ気持ちの徳之助は、純子の結婚相手に考えていた次郎の家を訪れてみると、来客の様子。

実は次郎、桜島で出会った例の詐話師二人組を知らずに連れて帰り、地熱発電の話を披露している所であった。次郎の話にはあまり興味がない素人の二人組は、地熱の話を油田の話と混同していた。

客が帰った後、徳之助は純子との結婚話を切り出そうとするが、質実剛健、女性には近づかないという考えを持つ次郎は、玉城健児の会に出かけ、剣の練習に励むのだった。それに付き合った徳之助もかつては健児の会の一員だったが、今ではすっかり怠け癖がついてしまい、剣の練習にも身が入らないので師匠(山茶花究)も苦り顔。

攻め方を変えねばと考えた徳之助、次郎の姉で、元山形のデパートの売り子という経歴を経て、今や、女手一つで元文館通りにある郷土料理店「はんや」を経営するようになった女将さくら(新珠三千代)を訪ね、純子と次郎を秘かに出会わせる作戦を相談しあう。

その後、純子を伴い、霧島神宮に向った徳之助は、同じく、次郎を伴ったさくらと、打合せ通り偶然を装って若い二人を近づかせ、自分達は霧島観光ホテルへと向うが、そこで、偶然にも芸者〆香と出会ってしまった徳之助は、お目当てのさくらと離れることに。

さらに、純子からは怒りの電話があり、次郎なんかとは結婚しないと伝えられる。

計画が全て水泡に帰して、がっかりした徳之助だったが、又しても偶然に、先日、次郎の家で見かけた二人組の男を発見、二人が油田発掘の話を秘かにしているのを聞いてしまい、それに加わってしまう。

至誠健児の会の同窓会を開いた徳之助は、そこで、三平らも招いて油田開発事業を立ち上げる計画をぶちあげる。
その会には、同じ同窓生の孫作もやって来るが、かねてより、漁業権の侵害などと、次郎の地熱開発に反対していた彼を騙すため、徳之助は、会社の秘書(ジュディ・オング)を使って、言葉巧みに孫作の方から積極的に資金を出させるようしむけるのだった。

その油田発掘事業の会長には、世間の目をごまかすため、次郎を座らせようと提案した徳之助だったが、真面目一方の次郎はそういううさん臭い話には乗らないと固辞するので、困った徳之助は、三平ら二人組に彼を説得するよう依頼する。

やむなく、心にもなく、心身鍛練のため、弟子入りしたいと次郎に申し出た二人組は、翌日から厳しい訓練の毎日を過ごすはめになってしまうが、最後に得体の知れない「闇鍋」を食べたことによって、ようやく、次郎を仲間に入れることに成功する。

一方、すっかり、計画にのめり込んでしまい、家に寄り付かなくなった亭主たちの行動を怪んだ女房たちは、桂子の元へ談判に出かけるが、事情を知らなず困惑した桂子は、年輩者である次郎の母親(沢村貞子)に相談しに出かけ、女たちだけの無礼講「瓶底作戦」を決行することになる。

その結果、その無礼講に紛れ込んでいた三平の口から計画の事を知った女房たちは、「はんや」東京店に行っているさくらに依頼して、油田の専門家に来てもらい、話に信憑性があるかどうか確認させるようとする。

そのことを知り、東京に飛んだ徳之助が、さくらと共に連れて来たのは、モデルまがいに長身の女性(前田美波里)だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

シリーズ23作目。

浜口庫之助による何とも軽快なオリジナルソングがタイトルで流れるのがまず新鮮。

地元のホテルなどとタイアップしたと思しき、大掛かりな鹿児島周辺ロケが全編に登場し、観光映画の雰囲気が漂う内容になっているだけでなく、監督が新しいということもあって、全体的に、あれこれ新しい要素が取り入れられている。

まずキャスティング面からいうと、次郎の姉として新珠三千代が初参加していたり、前田美波里やジュディ・オングといったフレッシュな若手女優たち、藤村有弘の出演、「ザ・ダーツ」などというマイナーなGS(「ケメコの歌」を唄ったグループ・サウンズ)も登場している。

レギュラー陣でいえば、いつもは芸者など、保守的なイメージの役柄が多かった池内淳子が、セスナのパイロットなどという極めて現代風な設定に変えられていたり、 三木のり平に思わぬラブロマンスが待ち受けているというのも珍しい。

ストーリー的には、女性だけの無礼講「瓶底」とか、「おっとり嫁女」などという地元に伝わる奇習が積極的に取り入れられている。

余談だが、最後のおはら祭りのシーン、レギュラー陣が全員参加しているという画面設定なのだが、どういう訳か、淡島千景の登場シーンだけが曇り空。

彼女が他の出演者と一緒に写っているカットもないことから、撮影当日、彼女だけ参加できず、別撮りだったものと推測される。

何となく「駅前らしさ」は希薄になったとも思えるが、独立した娯楽作品としては、それなりにバランス良く纏まっている作品ではないだろうか。

池内淳子が乗るセスナの機体に「EXPO'70」のロゴが貼ってあるのが時代を感じさせる。