TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

喜劇 駅前学園

1967年、東京映画、矢住利雄原作+構成、新井一脚本、井上和男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

駅前商店街を、時ならぬ女子大生のデモが練り歩く。

酒、食料品を扱っている三沢屋の夫婦、伴野孫作(伴淳三郎)と正子(京塚昌子)は、娘の菊子(松尾嘉代)がその一群に参加しているのを発見、大慌て。
何せ、孫作は、娘が通っている鴎女学園のPTA会長だったからだ。

学園内部では、学園長の景子(淡島千景)がこの騒ぎに苦りきっていた。

事務長の山本久造(山茶花究)は、この騒ぎのきっかけとなった老教師、春元(左卜全)を即刻解雇すべきではないかと進言していた。

元を正せば、体育担当の春元が、体操着からはみだしている女子大生たちのカラーパンティやブラのパットを、けしからぬと押収しようとした行為に女子大生たちが反発したのから始まり、やがては、学園の授業料値上げの噂も油に火を注ぐ結果となっていた。

実は、学園経営は行き詰まっており、授業料値上げをする以外、景子に亡父から譲り受けた学園を守り抜くことは難しい状態になっていたのだった。

もともと、女子大だったこの学園の数少ない男子学生である山田伸吉(山田呉一)も、女子学生の先頭に立って、アジりだす。

そんなデモの中に飛び込んだ見知らぬ男、そんな動きでは効果がないと煽って、学生たちを運動場中走り回させ、全員グロッキー状態にしてしまう。

実はその見知らぬ男、新任の体育教師として赴任して来た坂井次郎(フランキー堺)だった。

彼の歓迎会は、鴎学園に通うたよ(愛京子)の姉、染子(池内淳子)が経営するお好み焼き屋「みつば」で行われることになったが、出席した孫作も久造も、座敷に顔を見せた染子に夢中だし、PTA代表として参加した床屋小原金助(小沢昭一)の妻、駒江(乙羽信子)は、若い英語教師の松川(北浦昭義)に夢中とあって、誰も主役たる坂井に気を使うものはいない。

そんな「みつば」に、孫作の小学生以来の幼馴染みで、妻を亡くして以来、鴎学園に通う一人娘の道子(野川由美子)と二人暮しをしている美術鑑定人、森田徳之助(森繁久彌)が道子同伴で夕食を取りに来る。

徳之助はPTA会長などになっている孫作に批判的だし、孫作の方は、鴎学園の先代学園長に世話になりながら、娘の景子の力になってやろうともしない徳之助の冷たさを指摘する。

娘の道子も又、自分に気兼ねして、いつまでも独身を守り通している父親を心配していたのだった。

坂井はその後、三沢屋の二階に下宿することになり、さっそくサービスとして、肥満した正子に痩せるための体操を指導しはじめる。

学園では、山本事務長が駅向こうにある5万坪の土地を無料提供するから、この学園を坪5万で譲らないかという簡野コンツェルンの簡野(須賀不二男)なる人物を連れて来て景子に紹介するが、父から受け継いだこの土地を手放すことに景子は抵抗を覚え、話を保留していた。

景子は昔から良く知る徳之助を自宅に呼び、家にある美術品一切を売りたいので、鑑定書を書いてくれないかと頼むが、徳之助はそれは止めた方が良いといって帰ってしまう。

一方、新任体育教師坂井の授業はスパルタ式で、女子学生の間にけが人続出という事態になる。

これに対し、授業は「愛」が肝心と反発する春元の態度を知った山本事務長は、二人を別々に焚き付けて、生徒たちの前で雌雄を決するべく、試合をするように仕向ける。

かくして、春元の柔道と坂井のなぎなたという異種格闘技戦が、体育館で幕を切って落とされることになる。

そんな騒ぎの後、トイレで学園乗っ取りの話をしていた山本と簡野の話を、事務員の村里由美(大空真弓)が、偶然立ち聞きしてしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

シリーズ19作目。

この回から、井上和男監督にバトンタッチされている。

学園が舞台で、フランキーが体育教師 として登場するという設定は「駅前大学」と同じ。

そのフランキーと左卜全扮する老教師が、全校生徒が見守る中、体育館で勝負をするシーンは、かなりドタバタ調で楽しく作られているのだが、「駅前」というよりは「若大将シリーズ」のような雰囲気。

骨董の鑑定人として登場する森繁と淡島千景が絡む設定は「珍品堂主人」(1960)を連想させるが、両者とも元気がないように描かれているので、観ていて、ちょっと物足りなくもある。

森繁が、野川由美子演ずる娘の服を脱がしてやるシーンなど、観客から観ると色っぽいシーンなのだが、もはや森繁に、かつての「女好きキャラ」のイメージのかけらすらなく、ひたすら真面目なキャラクターになっているため、ハラハラした雰囲気にも笑いにも繋がらず、ひたすら、しみじみ感傷的になるだけ。

このシリーズ、森繁の印象が薄い回は、作品自体のテンションも低く感じがち。

やはり、シリーズでは新人監督だけに、大御所の役者たちに遠慮があったのかも知れない。

レギュラー的存在の一人、三木のり平に代わり、小沢昭一が同じようなポジションを担当しており、彼とフランキーの元気良さが、全体を引っ張っているような展開になっている。

野川由美子、松尾嘉代ら、女子大生たちの登場シーンが多い事もあって、従来の「駅前」とは、かなり雰囲気も違っているが、これはこれで楽しい一編になっている。

山田吾一が男子学生として登場したり、女子大生の一人として、ボンド・ガール松岡きっこが出演しているのが珍しい。