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喜劇 駅前弁天

1966年、東京映画、長瀬喜伴脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

全国の蕎麦屋から選抜された選手たちが東京に集まり競い合う「全国出前持ちコンクール」で優勝した信州代表の坂井次郎(フランキー坂井)は、地元からは、同じ青年婦人部に所属している由美(大空真弓)しか応援に来ていないことを知り、いつも遊び呆けている店の主人たちのことを思い返していた。

その頃、次郎が勤めている蕎麦屋「森田屋」の主人森田徳之助(森繁久彌)、パーマ屋の主人三井三平(三木のり平)、小春亭の主人伴野孫作(伴淳三郎)の三人は、ワカサギ釣りに勤しんでいた。

徳之助の妻は圭子(淡島千景)、孫作の妻は京子(乙羽信子)、三平の妻は藤子(淡路恵子)であったが、彼女らが皆しっかりしているので、商売はすっかり女房任せなのであった。

そんな三人と妻たちは、全員、28年前の戦時中、同じ信州の山奥で兵隊と娘挺身隊として国を守っていた戦友仲間であった。

孫作は、ワカサギなんかに興味を持たない女房を後にして、それを置屋「染の屋」の女将さん(沢村貞子)の所へ持っていくが、お目当ては若い芸者の染子(池内淳子)だった。
しかし、ゴルフにしか興味のない染子は、デートに誘う孫作に、ゴルフの相手だったら良いというだけ。
さらに同じ芸者仲間の福丸(松尾和子)から、近々開かれるミス弁天コンテストに、芸者が出られないのはどういう訳だと詰問される始末。

孫作は、商店街の実力者ではあったが、ミス弁天のことに関しては、担当の次郎に頼めと切り返すのだった。

徳之助は、捕れたワカサギ持参で東京支店の様子を見に行くと称して一人上京し、東京のバー勤めをしている若い恋人の菊子(野川由美子)を、天婦羅を作ってやると秘密のアパートへ呼び寄せるが、彼の下心を見抜いている菊子は、店のホステスたち全員を連れて来てしまう。

その次郎、由美のことを好きなのだが、まだプロポーズする勇気がない。

その後、孫作は、染子とゴルフの練習に出かけるが、興味も道具もないので巧くいくはずもない。
見かねた染子は、東京で道具をそろえようと切り出し、下心のある孫作もその話に喜んで乗ってしまう。

一方、青年婦人会の社会勉強の企画として訪れた地元の「山協精機」の工場で、婦人会の相手をしてくれた社員の高田(津川雅彦)が、あまりに美青年だったものだから、女性たちは全員夢中になるが、とりわけ、孫作の女房の京子は、すっかり彼に入れ込んでしまい、お土産として全員がもらったオルゴールを聞きながら、その夜一人でうっとりするのだった。

前回の失敗にもめげず、又しても、一人上京しようと、店を出かかった徳之助の前に現れたのは、かつて、同じ軍隊に衛生兵として参加していた山本(山茶花究)だった。

今は南米で成功しており、今回は嫁捜しで久々に日本に帰って来たという。

気もそぞろな徳之助は、そんなことより菊子のことしか頭になく、彼を適当にやり過ごして、そのまま上京してしまう。

少し遅れて東京に出発した孫作と染子は、東京でゴルフ用具一式を購入した後、立ち寄った喫茶店で、ばったり菊子とデート中の徳之助と出くわしてしまう。

成りゆき上、4人で行動を共にすることになった彼らは、用意したホテルにしけ込むが、女性陣たちは一室に籠ってしまい、結局、徳之助と孫作は同じベッドで寝ることになってしまう。

その頃、青年婦人部の企画でハイキングに出かけて、またまた、高田といちゃついていた京子は、圭子と藤子から、あんたの亭主は浮気をしているとほのめかされ、怒って帰宅した所、主人宛に届いた包みが届いており、それを開けてみてビックリ。
そこには、染子が自分用に買ったゴルフウエアが間違って入っていたからだ。

東京から帰っていた孫作は、徳之助に呼び出しを受け、何ごとかと出かけると、次郎や三平、京子らが揃っているではないか。

何と、自分の浮気の真偽を裁判するという。

裁判長を勤める徳之助は、自らの悪行をごまかすため、孫作一人を生け贄にすることにしたのだった。

しかし、その後、森田屋の方にもおかしな客が現れる。

最初は単なる無銭飲食かと思われたが、男女二人連れのその客は、菊子と、その夫を名乗るヤクザ風の男で、ここの主人にたぶらかされそうになった女房に慰謝料を払えと圭子に迫る。

店に戻って来た徳之助は、菊子の顔を見て真っ青になるが、折よく一緒に帰って来た次郎が、ヤクザ風の男を、かつて同じ大学の演劇部の後輩だった南郷力丸(藤田まこと)だと見抜いてしまう。

正体がばれてしまいヤケになった南郷は、次郎に誘われるままやはり大学で仲間同士だった音楽研究会を思い出し歌って踊り出すが、浮気をごまかすため、徳之助もその踊りに加わり、最後は、全員が「シェーッ!」のポーズを決めるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

シリーズ14作目。

信濃の地方色を生かした一編。

地元企業のハンサムな社員として、津川雅彦が登場。

コケティッシュなキュートさで、おじさんを翻弄するホステス役が野川由美子、前半はひたすら年上に甘える少女風に、後半は、藤田まことと組んで、がらの悪さを見せる。

地方の青年部に所属するフランキーと女性が恋をするという設定は、「駅前怪談」(1964)の焼き直しだが、信州の美しい風景がふんだんに登場し、すがすがしい雰囲気に浸れる。

池内淳子扮するゴルフに熱中している芸者という設定や、人妻ながら若い美男子にのぼせてしまう乙羽信子の役などが、ちょっと新鮮。

回想シーンで、セーラー服とモンペ姿の娘挺身隊に扮している淡島千景、乙羽信子、淡路恵子の姿は貴重だろう。

浮気を嗅ぎ付けられそうになった妻をごまかすために、伴淳と森繁が、座敷きで踊っている藤田まこととフランキーの中に無理矢理混じり、最後、一斉に「シェーッ!」のポーズを取る所は強烈。