1966年、東京映画、長瀬喜伴脚本、佐伯幸三監督作品。
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箱根高原鉄道で、箱根にやって来た坂井次郎(フランキー堺)は、客待ちしていた一心亭の従業員コンビ(立原博、松山英太郎)に宿へ案内されそうになり、一心亭の番頭の試験を受けに来たと断わる。
一心亭主人森田徳之助(森繁久彌)、女房圭子(淡島千景)、支配人伴野孫作(伴淳三郎)の前で面接を受けた次郎は、アメリカの大学で経営心理学を学んで来たという経歴を話し、その異色さと熱心さと誠実さで合格になる。
後日、一心亭に住み込みで働きはじめた次郎は、徳之助、圭子、孫作各々個別に呼出され、自分の味方になってくれと頼まれる。
どうやら、一心亭では、ボンボン育ちで人の良い徳之助、嫉妬深い圭子、学がないことにコンプレックスを持っている孫作と、要となるべき三人が各々、旅館の主導権をめぐって牽制しあっているらしい。
徳之助はさっそく次郎を連れて、お気に入りの芸者染子(池内淳子)のいる店へ遊びに行く。
翌日、その会合の様子や主席者の名前を、次郎から詳細に聞き出そうとする圭子。
実は、圭子は、亭主と染子が良い仲であることに薄々気づいているらしく、 次郎に口を割らせるために、何やら色仕掛けで迫って来たりする
ところが、徳之助に気を使った次郎は、不本意ながら嘘を付かざるを得ない。
そんな次郎のうぶな態度に仲居の雪(北あけみ)も惚れたと見え、何かと世話を焼きたがるようになる。
次郎はある日、孫作の家に招かれた時に出会った、孫作の一人娘、由美(大空真弓)に一目惚れしてしまう。
孫作は妻に先立たれ、彼女と二人暮ししているのだった。
そんな一心亭にハワイアンダンサーの一行が到着する。
踊り子らのマネージャーは、一の瀬(三木のり平)という怪し気な日本人。
踊子メアリー(水上竜子)は、旅館内のバーで徳之助にベタベタされ、露骨にへき易するも、一の瀬から、旅館代が安くなるに違いないから我慢しろと英語でハッパをかけられ、仕方なく踊りに付き合うことになるが、圭子から、徳之助の監視役を仰せつかってその場にいた次郎が、その会話を理解できることが分かり、一の瀬はしどろもどろに…。嫉妬に狂った圭子も踊りに乱入し、徳之助もしどろもどろ…。
その後、今度は東京出張という名目で、先日のハワイアンダンサーが営業をしている佐島マリーナという所へ遊びに出かけた徳之助とお供を仰せつかった次郎は、偶然、その地に住む、元一心亭の仲居だった藤子(中村メイコ)と孫作が仲良く連れ立っている姿を目撃する。
実は、二人はすでに正夫という子供まで作っていたのだった。
思わぬ所を目撃され、辞表を書いた孫作だったが、温厚な徳之助と次郎の計らいで、仕事を継続できるようになる。
一方、その話を秘かに聞き知った由美は、佐島の藤子の元へ一人出かけ、弟の正夫共々、自分の家に来て一緒に暮して欲しいと切り出すのだった。
ある日の朝、体調が悪く起きられなくなった次郎を、看病する由美と雪、そのかいがいしい姿を盗み見た徳之助は、一心亭内で、近隣の旅館の従業員を集めて、従業員たちにサービスや心構えを教える講習会を開こうと思い付き、講師として、次郎や孫作に加え、池端淳子という女性も勝手に決めてしまう。
その池端淳子なる女性は、実は芸者の染子のことで、そのことを雪から知らせれた圭子は大激怒。
一人、孫作の家を訪れ、実家に帰ることを相談に行った圭子だったが、そこで藤子と正夫が暮している姿を始めて見て、それが徳之助らの尽力によることを聞かされるや、自分の浅はかさを悟り、反省すると共に改心するのだった…。
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シリーズ16作目。
互いに牽制しあう三人が仕切る旅館に就職してしまったため、その各人に振り回されて心理的に追い込まれていく真面目人間の姿を描いた内容だが、登場人物たちが全員、比較的普通のキャラに作られているため、喜劇味は薄く、全体的にテンションの低い大人しい作品となっている。
森繁は、いかにも世間知らずのボンボンで遊んでばかりいる主人役、伴淳が、無学ながらも真面目一筋という堅いイメージの番頭役。
異常なまでに嫉妬深い女房役を演じる淡島千景と、フランキーに一方的に惚れ、積極的に迫る北あけみが、ちょっと目立つくらいか。
三木のり平が途中、賑やかしとして登場するが、二世役という役柄は前例がある上に、特に目新しい笑いを提供している訳でもない。
いつもは存在感を見せる山茶花究も、本作では印象が薄い。
後半は、かなり普通の人情話みたいにおさまっていき、特に盛り上がるような見せ場が用意されている訳でもない。
喫茶店の女主人役で宮地晴子、漫才のリーガル天才・秀才など、珍しい顔がゲスト出演している。
