1994年、アメリカ、ルドルフ・グレイ原作、スコット・アレクサンダー+ラリー・カラツェウスキー脚本、ティム・バートン監督作品。
▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼
エド・ウッド(ジョニー・デップ)が恋人のドロレス(サラ・ジェシカ・パーカー)らとはじめた舞台演劇「分遣中隊」は客もさっぱり入らないし、翌日出た劇評も辛辣なものだった。
しかし、現在30才のエドは、わずか26才で「市民ケーン」を撮ったオーソン・ウェルズを目標に、いつかは自分も映画を作る事を夢見ながら、映画会社で観葉植物のメンテナンスの仕事をする毎日だった。
そんなエドは、ある日、新聞で噂の性転換した男を映画化すると言う噂をスタジオ内で聞き込む。
さっそく、エドはその映画製作会社スクリーン・クラシックを訪れ、社長のジョージ・ワイス(マイク・スター)に自分は女装趣味者なので、この映画を撮る素質があると売り込む。
しかし、社長が欲しいのは、監督自身の告白ではなく、金になる映画を4日で撮ることのできる監督だと断わられてしまう。
そんな中、エドは、街の棺桶屋で棺桶のサイズに注文を付けている往年のドラキュラ役者ベラ・ルゴシ(マーチン・ランドー)と出会う。
ベラは、すでに映画の仕事から見放されており、妻にも去られ、薬物中毒に溺れる孤独な生活を独り送っていた。
それでも、ベラの映画をこよなく愛していたエドは、彼とその後も親しく付き合うようになり、彼を使った映画をジョージの所に売り込みに行き、脚本もこなすと言う条件付きで何とか契約を取り交わすことに成功する。
かくして、エドは脚本執筆に没頭し、同棲相手のドロレスに完成した原稿を読ませるのだが、ドロレスは、自分達の生活をモデルにした「グレンとグレンダ」というその内容を読んで、はじめてエドが女装趣味だった事実を知る。
かくして「グレンとグレンダ」の撮影が始まり、何とか完成させるが、ジョージはその出来のひどさに激怒、エドが自信を持って売り込みに言ったメジャー会社からも最低の映画と拒絶されてしまう。
しかし、それにめげないエドは、たまたまドロレス、おかまの友人、バンニイ(ビル・マーレイ)と一緒に見に行ったプロレスの興行で、巨漢プロレスラートー(ジョージ「ジ・アニマル」スティール)を発見、自分の次回作「原子の花嫁」に出てくれと依頼するのだった。
一方、たまたま、ベラの名前で受けたテレビの生放送で知り合った怪し気な占師クリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)から、マスコミで売り込むにははったりが必要だとアドバイスを受けたエドは、着飾ってパーティを開催するが、そこで、テレビの人気者女優バンパイラ(リサ・マリー)と出会うことになる。
さらに、映画への投資に興味があるという女性ロレッタ・キング(ジュリエット・ランドー)に出会ったことから、彼女を主人公とする条件の元、撮影は開始されるが、彼女の持ち資金はまずかだったことが分かり、今度は肉屋をスポンサーにして何とか続行しようとするが、もともと主演予定だったドロレスは脇役にまわされ激怒、映画完成と共に、エドの元を去ることになる。
「原子の怪物」はいつの間にか「怪物の花嫁」と名前を変え、プレミア試写会が行われるが、評価はさんざん。
そうした中、失業保険が切れたベラはもはや貯えもなく、エドを呼出して、その目の前で自殺しようとするが、それを止めたエドは、ベラを薬物中毒を直す病院へ送り届ける。
そこで、キャッシー(パトリシア・アークェット)と出会ったエドだったが、ベラはその後、治療費が払えないことを理由に病院から追い出され、その後独り寂しく息を引取ることになる。
一方、家賃さえ払えなくなっていたエドは、大家が映画への投資に興味を持っていると知るや、ベラの死の直前、彼を写しておいた最期の短いフィルムを元に新しい映画を作ることを思い付く。
後に「プラン9 フロム・アウタースペース」と名付けられる事になるその作品では、ベラ・ルゴシのそっくりさんに全て代役を勤めさせると言う奇策に出るのだが、又しても、しろうとのスポンサーたちの横やりで、作品の内容はどんどんエドの思惑とは違う方向へねじ曲げられそうになる。
ヤケになって酒場に飲みに出かけたエドは、そこで、憧れのオーソン・ウェルズ(ヴィンセント・ドノフリオ)に出会うのだった…。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
いわゆる「映画界の内幕もの」の流れにある作品だと思うが、作家自身の奇妙な性癖と、彼が知り合った俳優が怪奇映画と言う特殊なジャンルの人気者だったこと、さらに、こうした二人が出会った時代が「巨大モンスターやSF」など、ゲテモノB級映画全盛の時期だったという背景が混じりあい、骨格は一人の若者の夢への野望と挫折の物語でありながら、同時に非常にB級テイスト溢れるマニア好みの世界になっている。
登場する俳優陣もマニアックで、ベラ・ルゴシに扮するのは、テレビ映画「スパイ大作戦」(1966〜1973)や「スペース1999」(1975〜1977)でお馴染みだったマーティン・ランドー、さらにその娘のジュリエット・ランドーも登場。
それに加え「ゴースト・バスターズ」(1984)や「3人のゴースト」(1988)でお馴染みのビル・マーレイ、もちろん、ティム・バートンの元恋人リサ・マリーもしっかり出演している。
これらマーティン・ランドーやリサ・マリーをはじめ、 実在した人物に扮した役者たちのそっくりさんぶりにはびっくり。
エドのフィルムのチープなテイストを巧く再現しながらも、さらにファンタジックなミニチュア世界から物語世界へ誘導するタイトル部分も見事。
エドの映画ほどではないにせよ、本作もさほど予算をかけた映画には見えないが、登場人物たち各々のキャラクターの面白さ、B級映画界の裏側のうさん臭さ、エドの真摯さなどに焦点が当てられているので、映画好きなら誰でも楽しめ、かつ共感できる内容になっていると思う。
「映画はビジネスだ!金になる映画を4日で撮れる男が欲しいんだ」と劇中で豪語するB級映画会社の社長の言葉にも、「周囲からの干渉に妥協せず、自分の夢を追い続けるんだ」と励ますオーソン・ウェルズの言葉にも各々、映画の真実が含まれているのだろう。
年を取って仕事がなくなった晩年の俳優やスタッフたちのみじめさ、悲哀も押し付けがましくなくさらりと描かれており、楽しいだけではない夢産業の闇の部分も垣間見ることができる。
面白うて、やがて哀しき映画かな…。
