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泥だらけの純情

1963年、日活、藤原審爾原作、馬場当脚色、中平康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

新宿の路地裏で、制服姿の二人の女子高生が、若者二人にカツアゲされていた。

そこに通りかかったチンピラの次郎(浜田光夫)、つかつかと歩み寄ると、女子高生たちに「声も出さないから舐められるんだ」と叱りつけて、その場を逃してやる。

すると、車の中から降りて来たもう一人の若者が、次郎に近づき、ナイフで腹を突いて来たので、もみ合いになる内に、ナイフは斬り掛かって来た男の腹に刺さってしまう。

次郎は、倒れた男のために医者を呼ぶよう、他の二人に言い聞かせ、自分はタクシーを止めて、森原組の事務所へ急がせる。

実はその時の次郎、兄貴分の花井(小池朝雄)からのたっての依頼で、麻薬を運ぶ途中だったのだ。

チンピラに任せて不安がる親分の塚田と、約束の時間に遅れているとやきもきする相手方の森原組の連中をよそに、腹から出血したままの次郎が、森原組に到着するなり倒れてしまう。

無事役目も終え、腹の傷も癒えた次郎だったが、相手の男がその後死んだと知り、花井から自首するように薦められる。

男と揉み合った現場に、麻薬の粉が落ちているのを警察に見つかってしまったので、麻薬の線から警察に動かれると、うちの組と森原組に手が及んでしまうというのだった。

承知した次郎は自首するが、現場に残っていた例の二人の青年の嘘の証言で、完全に殺人の罪を着せられ、窮地に追い込まれてしまう。

しかし、すっかり次郎を犯人と思い込んでいた警察に、樺島大使の知り合いなる人物から連絡が入り、かねてより探し求めていた女子高生の身元が判明する。

新宿でカツアゲにあっていたのは、樺島大使の娘真美(吉永小百合)とその友人であったのだ。

彼女たちの証言によって、証言者たちの嘘がばれてしまい、晴れて次郎は美談の主人公として釈放されることに。

一躍有名になり、すっかり調子に乗った次郎は、子分格の信次(高島稔)を伴って馴染みの女お三津(国真澄)のいるバーへ出かけるが、大人のお三津に皮肉をいわれる始末。

そんな次郎、花井に呼ばれ、親分の塚田を横浜から訪ねて来た清水組の親分(滝沢修)を紹介される。

何でも、樺島大使からの依頼で、娘を助けてもらった謝礼を届けに来たという。

しかし、それが次郎には面白くない。

本人が礼に来ないで、金を出すとはバカにしていると突っ張るが、結局、無理矢理渡された金を使い切るため、塚田の娘で、かねてより次郎に気のある和枝(和泉雅子)の心配をよそに、遊び回って憂さを晴らすことにする。

その頃、横浜の樺島邸では、真美が母親から、アルジェリアに赴任している大使の夫から、家族全員でこちらに来て欲しいとの手紙が来たが、自分は幼い弟をこちらの中学校に入れなければならないから行けそうにない。あなた一人で行ってくれないかと話を持ちかけられていた。

その後も、憂さが晴れない次郎の渋谷のアパートに、ある日、意外な来客がある。

真美であった。

すっかり喜んだ次郎は、真美をボクシング見物に誘い、真美は生まれて始めて母親に嘘をついて門限を遅らせると、彼に同行し、互いに全く自分の知らない世界を紹介しあった後、別れるのだった。

その日から、二人の生活は一変する。

真美は、弟からボクシング雑誌を貸してもらい、ボクシングの真似をしたり、飲めない酒の味を確かめたりしだす、一方、次郎の方も、真美から聞いた真面目なテレビ番組「動物の生態」を観たり、寝る前に聖書を読んだりしてみる。

その後、土曜日ごとに東京にフランス語を習いに来る真美と次郎の逢瀬は続くが、次郎は、そのデート費用を捻出するために、次々と恐喝行為やポン引きまでやるようになり、とうとう警察に捕まってしまう。

そんな次郎を更生させようと、彼のアパートで何日も、彼の帰りを待っていた真美は次郎を自宅に招き、母親に次郎を紹介すると共に、かねてより頼んでいた働き口のことを聞いてみるが、そんな約束ははなから相手にしていなかった母親は驚愕して、あんな人とは付き合うのではないと叱るのだった。

その言葉を聞いた次郎は、恥をかかされたことを悟り、逃げ去るように帰ると、その後、謝罪にやって来た真美に、わざと悪ぶった所を見せて、彼女を追い返すようになる。

そんな次郎に、花井は、和枝もお前と結婚したいと言い出し、親分が困りきっているので、しばらく麻薬捜査をかく乱するためにも自首して、2、3年ムショへ行ってくれないかと誘いを受けるのだった。

一方、真美の方も、単身でアルジェリアに行くことを決意し、そのことを伝えに次郎のアパートへ行くが、迎えた次郎の方は、ちょうど、自首する支度を済ませ、付き添いの花井の到着を待っている所だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

公開直後、韓国映画「裸足の青春」(1964)という無断リメイク作品を生み、それが現在に続く韓流ドラマブームの原点になったのではないかとまでいわれる純愛ドラマの秀作。

日本でも、山口百恵主演でリメイク版がある。

「タイタニック」も似ているような気がするが、基本的な設定は世界中に古くからあるものだろう。

冷静に観ていると、どう考えてもありそうにない展開のように思えるのだが、それを不自然に感じさせない所がすごい。

途中からは、完全に物語の中に引き込まれてしまい、つい涙腺が弛んでしまうから不思議だ。

何不自由ない裕福な家柄に育った少女が、実は、周囲に悩みを相談できる人物が一人もいない孤独な立場にいることに気づく。

彼女は、世間知らずであったがゆえに、何の抵抗もなく、以前、ちょっと見かけただけの同世代の人物に近づいていく。

彼女と再会でき、有頂天になる相手も又、真の友達がいない孤独な立場だった。

二人は心の底から話し合える相手を見つけ、しばしの幸せな時間を過ごすが、いつしか、自分達が決して結ばれるはずもない立場であることに気づいていく。

しかし、彼らには相談する人も助けを求める人もおらず、窮地に追い込まれていく…。

青春期の悩みというのは、本来こういうものなのだろう。

気楽に、親や教師や友人に相談できるのだったら、苦労はしない。
例えアドバイスをもらえたにしても、最後の決断をするのは自分自身であり、その決断は辛く難しい。

そういう青春期特有の悩みは、観る者全てが一度ならず経験しているからこそ、この話も身につまされるのではないか。

花井役の小池朝雄が、なかなか味のある役所を見せてくれる。

この作品での和泉雅子は、ちょっとふっくらし幼い印象だが、テレビヒーローもの「少年ジェット」に出ていたのが1960年頃だから、この作品では中学生か高校生に成り立てくらいだったのではないだろうか。

吉永小百合も、又、いかにも高校生らしく見え、初々しい。

純愛ブームの今だからこそ、改めて観て欲しい日本映画の一本。


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