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独眼竜政宗

1959年、東映京都、高岩肇脚本、河野寿一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

永録の頃から続いていた戦乱は、豊臣秀吉の出現によって統一の兆しが見られはじめる。
しかし、奥州ではまだ戦乱とどまる所を知らず、中でも陸奥の麒麟児と称されていた伊達政宗(中村錦乃助)の働きは凄まじものがあった。

その頃、聚楽第にあった秀吉(佐々木孝丸)は、石田三成(徳大寺伸)に対し、徳川家康でさえ、駿府城築城の後にはここへ挨拶に来るというのに、いまだに自分になびこうとしない伊達家の周囲を囲む豊臣陣営の藩の一つ、大庭兵部の国替えを提案していた。

その頃、当の伊達藩では正宗の父、輝宗(月形龍之介)が、豊臣方に付くべきか否かを伊達成実(宇佐美淳也)と共に検討していたが、そんな所に三条家とつながりがある田村家から急使が届く。

その頃、山道で白馬を走らせていた政宗は、道ばたに積み重ねられていた薪の山を崩してしまい、その薪の持主の老人(大河内伝次郎)から元に戻すよう呼び止められていた。

素直に老人の言葉に従い馬を降りた政宗は、老人が向うと言う白蛇の湯という場所まで、馬で薪を運んでやることにする。

目的を達した政宗に、老人は自分の持っていた水筒の水と粟飯の弁当を振舞うのだった。

政宗の正体を知らず、なかなか見所がある青年と見込んだ老人は、御主はその内藩主にでもなる人物かも知れぬと褒めそやすが、藩主になったとしたら領地を増やすつもりだと答えた政宗に対し、そんなことでは戦が絶えず、結果的に領民たち小者たちが苦しむだけだ、戦をなくす戦をするよう心がけよと叱責する。

城に帰った政宗を待っていたのは、田村家の娘、愛(めご)姫(大川恵子)との政略結婚の話だった。

政宗は、美しい愛姫と対面した後も、乳母(浪花千栄子)に対し、波瀾が予想される自分が妻を娶るつもりはないときっぱりと断わる。

その後、大庭藩の後を継いだのは、石田三成の縁続きに当る和田斉之となり、その和田藩は、一方的に伊達の領地内に藩境の柵を作りはじめる。

これを、秀吉が仕掛けたこちらへの挑発と見た政宗は、腹心の山上(片岡栄二郎)に命じ、藩境近辺の住民たちに対し、4月6日までに伊達藩に移り住めば、一反の田んぼを与えると共に、1年間冥加金を免除してやると告げて歩かせる。

この事がきっかけとなり、大量の領民が伊達藩に逃げてくるのだが、これに抗議に来た和田藩の使い舟崎(中村時之助)に対し、この領民たちの行為を「逃散」と解すれば、そちらの和田藩にもお咎めが及ぶと政宗は反論し、相手を退かせることに成功する。

しかもその後、自分に対して鶴捕り鷹を進呈し、決して敵意がないことを示した政宗に、秀吉は半ば感心するのだった。

しかし、そんな正宗の油断なさを恐れた秀吉は、忍びを送って雨中、一人で遠出していた正宗暗殺を企てるのだが、その際、敵の放った矢が右目に当り、政宗は片目を失ってしまう。

もはや元の状態に戻らぬことを悟って絶望した政宗は、独り、白蛇の湯に住む老人のところへ出かけるが、そこで、両親を失い実を寄せていた老人の孫娘、千代(佐久間良子)と出会うことになる。

若い二人はすぐに打ち解けあうが、そんな中、伊達藩には秀吉の小田原攻めの報が入り、自分達の今後の動きに付いて協議が始まったと知らされ、城に戻った政宗は、今の所、動く必要は成しと進言するが、その直後、畠山義継(山形勲)が領内に攻め込んで来たとの知らせが入る。

戦いには勝利し、和議に応じようとする父輝宗に対し、政宗は断固、相手を殺さなければ、又戦が繰り返されると説くが聞き入れられず、城を開けている隙に行われた和議の席で、変心した畠山義継によって、輝宗はその場から拉致されてしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

青年期、奥州で頭角を現し、秀吉からも一目を置かれるようになる伊達政宗を描いた青春時代劇。

素直だが、領民たちの暮らし振り、苦しみをまだ知らなかった青年政宗が、領主として成長するきっかけになる言葉を送るのが、大河内伝次郎扮する無名の老人と言うのが面白い。

映画そのものは、そんな政宗が、刺客の放った矢によって片目を失い、大いに苦悩する姿を中核に据えており、この時も、同じ老人とその孫娘らとの触れあいによって立ち直る展開になっている。

余談だが、この矢が目に刺さるシーンはどうやっているのか分からないほど巧く撮れている。

雨が降りしきっている中でのシーンなので逆回転ではなく、又、凝った合成等も使用しているとは思えず、いまだに技法の見当が付かないほど。

東映時代劇全盛期の作品とあって、冒頭に登場する聚楽第のセット等、実物大で再現されており、その迫力には度胆を抜かれる。

また、小田原攻めの秀吉軍の行列も、信じられないほど画面の奥から手前まで延々と続いており、一体、何千人のエキストラが参加しているのかと思うほど。

とはいえ、ストーリー的にはいくつかのエピソードを羅列した感じが強く、特に強烈なサスペンスや見せ場が用意されているとは言えず、全体としてはやや単調な作品と言わざるを得ない。

特に、愛姫役の大川恵子と千代役の佐久間良子は、その美しさを愛でる以外には、大してドラマに絡んでも来ず、やや添え物的扱いでちょっと残念。

岡田英二の髷姿と言うのも珍しいが、彼も又、あまり見せ場は用意されていない。

政宗の父親を演ずる月形龍之介の貫禄はさすが。

ちなみに物語の最初の方で、その月形演ずる伊達藩主に急使が来たと知らせに来る若侍は、今、ちゃんばらトリオのリーダー南方英二の若き日の姿である。