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忠臣蔵 花の巻 雪の巻

1962年、東宝、八住利雄脚本、稲垣浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

花の巻

元禄14年3月、東海道興津の本陣、水上屋の主人半兵衛(森繁久彌)と女房のお時(淡路恵子)は、清閑寺中納言(上原謙)一行を見送っていた。

その折、外見とは裏腹に、金に困っている様子の中納言に小遣いを渡した礼として、半兵衛は、「孝忠」と記された下手な書状を貰い受ける。

お犬様が罷り通る江戸の町、柳沢出羽守(山茶花究)の屋敷を訪れていた吉良上野介(市川中車)は、勅使饗応役を仰せつかった浅野家からの進物が、添え役である伊達家の進物に比較してあまりにも粗末すぎると愚痴をこぼしていた。

以前、吉良家より浅野家に対し、礼を尽くして塩田の秘法を尋ねた折、頑として断わられた無礼さに対する遺恨も残っている様子。

賄好きな出羽守は、同じ性癖を持つ吉良に対し、少し、浅野を懲らしめてやるようにそそのかすのだった。

かくして、山鹿素行の教えを守り、賄嫌いで我を通して来た浅野内匠頭(加山雄三)は、作法の教育係である吉良から徹底的に嫌がらせを受けることになる。

持病の腹痛を堪えて、吉良の下見に付き添った浅野に対し、吉良は、明日までに畳を全て新品にしろと無理難題を押し付ける。

家臣片岡源五右衛門(市川段四郎)が先頭に立ち、竹林唯七(藤木悠)や大高源呉(小泉博)らが 江戸中の畳屋を掻き集めて終夜に作業にかからせたが、間に合いそうにない。

最後の頼みと、堀部安兵衛(三橋達也)が蔵前に住む飲んべえの音吉(柳家金語楼)なる職人を探しに行くと、ちょうど、俵星玄蕃(三船敏郎)なる浪人者と酒飲み競争をしようとしている最中。

自らも酒豪の安兵衛は、玄蕃に事情を話して、酒飲み競争の相手を買って出、音吉は畳作りに駆けつけて、翌朝無事、畳替えは完了する。

しかし、その後も、吉良の浅野に対する嫌がらせは続き、堪忍袋の緒を斬った浅野は、殿中、松の廊下で吉良を斬り付けるのであった。

かくして、浅野は切腹を申し受け、その知らせを赤穂藩に告げんと早駕篭に乗っていた萱野三平(中村萬之助=現:中村吉衛門)は、途中、巡礼の列に加わっていた老婆を撥ね、死なせてしまう。

家臣たちの間で討ち死に論がまとまろうとする中、城代家老大石内蔵助(松本幸四郎)は、かねてより浅野内匠頭に対し、何かと親身に接していた脇坂淡路守(小林桂樹)に対し、何の言い訳もせず城明け渡しをする。

その後、内蔵助は、妻りく(原節子)、長男主税(市川団子)他、幼い子供達を伴い、山科に引きこるのだが、浅野内匠頭の命日に当る1年後、吉衛門(加東大介)が屋敷に様子を見に行ってみると、あろうことか、内蔵助は茶屋遊びを始めたという。

池田久衛門と名乗り、橦木町の茶屋笹屋の浮雲太夫(新珠三千代)の元で遊んでいた内蔵助を、村上鬼剣(田崎潤)なる浪人者が訪ねて来て、その武士としての醜態をなじるが、内蔵助は知らん顔。

一方、その浮雲太夫の付き人として働いていた吉衛門の妹、お軽(団令子)は、萱野三平と付き合っていたが、その三平は、かつて死なせてしまった老婆の息子貝塚三郎次(清水元)の仇討ちに会い、一旦は逃れたものの、内蔵助に訳を話した後、自害して果てるのだった。

その悲劇の後、内蔵助は、妻りくと幼い子供達を実家の但馬へ帰すことになる…。

雪の巻

江戸の町。

柳沢出羽守の屋敷に運ぶ大石が原因で橋が壊れ、タダで駆り出されていた大勢の町人たちが犠牲になっていた。

その様子を目撃した俵星源蕃は、馴染みの飲み屋で堀部安兵衛と再会する。

その頃、大工の平五郎(フランキー堺)は、吉良邸の建築にあたっていたが、妹のおつや(星由里子)と親しく口を聞く仲になっていた出入りの米屋九十郎とは、江戸に潜入していた赤穂浪士の一人、岡野金右衛門(夏木陽介)の偽名であった。

そんな事とはつゆ知らぬおつやは、九十郎に頼まれるまま、兄の元から、吉良家の図面を盗み出してくる。

同じく、身分を隠した赤穂浪士の一人、高田群兵衛(宝田明)は水茶屋女のお文(池内淳子)と本気で深い仲になっていた。

その後、吉良上野介の息子綱憲(太刀川寛)が婿に行った先の上杉家に雇われたと噂された俵星玄蕃を斬るため、堀部安兵衛は単身闇討ちをかけるが、事情を薄々気づいている玄蕃に逆に詰問されてしまう。

一方、清閑寺中納言への寄進を送り届ける尾花光忠一行に化け、本陣水上屋に泊まった内蔵助の正体に気づいた主人半兵衛は、1年前中納言から拝領した書状を、今後身分詐称の証拠として役立てるよう内蔵助に持たせるのだった。

内匠頭の妻あぐり改め瑶泉院(司葉子)に別れを言いに行った内蔵助だったが、新顔の女中おうめ(白川由美)を怪しみ、仇討ちの事を一切語らず、田舎へ引き込むと嘘を言ったがため、瑶泉院やお付きの戸田の局(草笛光子)の怒りを買うのだった。

いつもの酒屋にいる俵星玄蕃を訪ね、暇乞いをしに来た堀部安兵衛の様子を観て、玄蕃はいよいよ討ち入り決行の日が訪れたことを悟るのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝オールキャストによるお馴染みの大作。

過去何度か観ている作品であり、展開自体も良く知られたものであるだけに、今回は、そのキャスティングの妙に注目して見直してみた。

まず、養子の身であり、ちょっと気の弱い本陣の主人役森繁と、その女房役淡路恵子コンビの会話で始まる冒頭部分の趣向に注目。

公家を演じているベテラン上原謙と一緒に、まず観客の気持ちを惹き付ける「つかみ役」に当てられていることで、いかに、当時の森繁が東宝内で重要視されていたかが伺える。

小林桂樹、三木のり平、山茶花究といった、後の「社長シリーズ」や「駅前シリーズ」のレギュラー陣も顔を揃えている。

浅野内匠頭が、上原謙の息子で、当時「若大将」として人気者だった加山雄三。

その内匠頭の切腹に同行する人物が「若大将」シリーズで、加山の父親久太郎を演じていた有島一郎。

内匠頭の弟役は、同じく「若大将」のレギュラーだった江原達怡。

大石内蔵助が松本幸四郎(後の松本白鸚)なら、その息子の中村萬之助(現:中村吉衛門)、市川染五郎(現:松本幸四郎)兄弟も、ちゃんと出ている。

本作では、どちらかと言えば、弟、萬之助の方が良い役を与えられているように思えるが。

フランキー堺と星由里子の兄妹役は、「世界大戦争」を連想させるコンビ。

ちなみにこの時代の星由里子はかわいらしさの絶頂期にあり、本作の中でも、彼女のエピソードは涙を誘う名シーンになっている。

チョイ役ではあるが、由利徹、南利明、八波むと志の「脱線トリオ」も登場。

その他、当時の東宝常連組がどこで、どういう役を演じているのか、探しながら観るのも一興だろう。

天本英世などが、ちょっと見つけにくい他は、大体発見できるはず。

常連組の中では、いつも悪役を演じることが多い中丸忠雄だけが、吉良方にいるというのも面白い。