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新諸国物語 紅孔雀 第四篇
剣盲浮寝丸

1955年、東映京都、北村寿夫原作、小川正脚本、萩原遼監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

信夫一角(三条雅也)の根城に乗り込んだ五升酒の猩猩こと主水(大友柳太朗)だったが、目指す那智嘉門の姿はすでにそこの牢内にはなかった。

一瞬早く一角が、花の島へ嘉門の身体を妖術で運んでいたのだった。

一方、夜の吉野山中で独りたき火をしていた藤内(高松錦之助)は、偶然にも、戸がくれ老人の住処より旅立って道に迷っていた小四郎(中村錦之助)と出会う。
そんな二人の足元へ、「嘉門は浮寝島にいる」と記された矢文が打ち込まれる。

一角から紅孔雀の秘密を明かす鍵を奪って逃げていた久美(高千穂ひづる)は、またしても黒刀自(毛利菊枝)の天からの声を聞き、心乱れるまま鍵を道に落として倒れ伏してしまう。

そんな久美を助けて、自分の山小屋に連れて来たのは人さらいの悪人、彼は久美を小屋の中で縛り上げると、自らは運搬船の様子を見に出かける。

折しも、その山小屋の前を通りかかったのが小四郎と藤内。

小屋の中にいながら、猿ぐつわをされているため声の出せない久美は、自分を斬ると断言する小四郎の言葉を聞いて絶望するのだが、そんな彼女を救ったのは、待たしても風小憎(山手弘)であった。

彼は、たまたま道で見つけた鍵から、久美が近くにいると察して、この山小屋をつきとめたのだった。

その頃、海岸にいた楓(和田道子)と幾重(西条鮎子)は、助けを呼んでいる小舟を発見し救出する。

その船に乗っていたのは、白鳥党を倒すべく差し向けられた浮寝丸(東千代之介)とその監視役摩耶(星美智子)の二人だった。

嘉門の屋敷に連れていかれた浮寝丸は、この屋敷には、自分達以外にもう独り人間の気配がすると不思議なことを言い出し、夜、家人の幾重も知らなかった秘密の壁を開けると、その中に「那智家の家紋」の入った羽織を着た白骨死体を発見する。

屋敷内での生活も慣れ、久しぶりに横笛を吹いていた浮寝丸に心引かれた楓は、自分にも笛を教えてくれと頼むのだが、浮寝丸は、楓が秘かに心配している小四郎と藤内は今、浮寝島へ向っていると教えるのだった。

その後、屋敷内では、摩耶が幾重に髑髏葛を煎じた毒薬を飲ませようとしていたが、浮寝丸に邪魔され目的を果たせなかったため、摩耶は又しても変心した浮寝丸を刺そうとするが、それを助けたのはたまたまその道を通りかかった主水。

その主水から「宿命など、迷った人間の弱い世迷い事だ」と諭され、その言葉に力を得た浮寝丸の姿を陰から見ていた摩耶は、自分を恥じ、その場で自害して果てるのだった。

他方、小四郎と藤内は浮寝島へ到着していた。

黒刀自の家に行き、一旦は敵の策略にはまりかかるが、瞬時の判断でその場を逃れ、長い間、されこうべ党に潜伏していた白鳥党の仲間、野反玄太と合流して、敵の総大将、網の長者こと阿漕太夫(吉田義夫)の住むギヤマン御殿へと向う。

その頃、花の島では、風小憎とゆかりによって匿われていた久美が、神社の蔵守のじいさんの甘言に騙され、またしても現れた一角に捕まり鍵を奪われていた。

小四郎らを追って、独り浮寝島へ渡った楓は、又しても黒刀自の家で毒薬を飲まされそうになるが、それを間一髪救ったのは島に戻って来た浮寝丸であった。

黒刀自と揉み合い、自らが持っていた魔性の笛を奪い取られ、真っ二つに割られてしまった浮寝丸は、その後、新しい笛を作って森で吹いていたが、そこに現れたのが小四郎と藤内。

その様子を木陰より監視していた黒刀自は、ここぞとばかりに妖術を使い、その術に操られるかのように、温厚だった浮寝丸は刀を抜き、小四郎と戦うのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大ヒットした子供向け時代劇五部作の四作目。

南紀州一帯の、それなりに広いエリアで物語が展開しているはずなのに、あまりにも主要人物たちが、しょっちゅう都合良く出くわすので、観ている側としてはものすごく狭い地域内での話にしか感じられないのが残念。

さらにこの物語、思いのほかアクションや特撮など見せ場シーンが少ないのも物足りない。

もともとこの「新諸国物語」シリーズ、戦後の少年少女たちに夢と勇気を与えると同時に、戦いの無意味さ、愚かさを教える狙いもあったようで、「笛吹童子」でも主人公は戦うヒーローではないのだが、それにしても、もう少し見せ場を作れなかったものか…と、今観ると感じてしまう。

逆に言えば、この程度のドラマ展開でも、当時の子供達にとっては、手に汗を握る大ロマンに映ったと言うことなのだろう。

おそらく当時としては、想像力を膨らませて聞いていたであろう原作のラジオドラマとの相乗効果も、この映画をヒットさせた要因だったのではないかと想像してしまう。