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新諸国物語 紅孔雀 第二篇
呪いの魔笛

1955年、東映京都、北村寿夫原作、小川正脚本、萩原遼監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

南紀州の海岸絶壁で、紅孔雀の秘宝の扉を開ける鍵を奪い合っていた那智の小天狗こと小四郎(中村錦之助)と信夫一角(三条雅也)だったが、二人の手からこぼれ落ちた鍵を砂浜で拾ったのは、五升酒の猩猩こと主水(大友柳太朗)であった。

主水は、その鍵を渡せと言う一角と小四郎の目の前で、この鍵には不吉な匂いがするといって、海へ投げ捨ててしまう。

その頃、網の長者(吉田義夫)の元へ、紅孔雀の地図を持って来た海賊の頭、川合軍太夫は、鍵を奪われたと知り激怒していた。

しかし、その時、屋敷にいた娘久美(高千穂ひづる)に目を付け、その夜、海賊仲間と長者の家に侵入すると、久美を誘拐して、そのまま海賊船「髑髏丸」で出航してしまう。

そんな久美を救ったのは、こっそり髑髏船に忍び込んでいた風小憎(山手弘)であった。

彼は、小舟で久美を近くの無人島に連れていくが、運悪く、そこに川合軍太夫と一の子分鬼鮫(団琢磨)も遅れて上陸し、何やら埋めるための穴を掘り出す。

ここに至って、犬のように鼻の効く鬼鮫が人間の匂いに気づき、追い詰められた久美と風小憎は一本の木によじ登るのだが、間もなく、その木ノ下に鬼鮫と権太夫がやって来て、木の上めがけ、手裏剣を投げ出す。

もはやこれまでかと思われた時、久美たちが潜んでいたさらに上から声がかかり、一人の女が下に降りてくる。

彼女は摩耶(星美智子)といい、この島は自分の島だから出ていってくれと、海賊二人に拳銃を突き付けて追い返す。

さらに、自分に付いて来いと久美たちを誘い、摩耶と久美は一艘の船に乗り、風小憎はもう一艘の小舟に乗って島を離れるが、間もなく、風小憎の乗った小舟は水が浸水しはじめ、助けを呼ぶ声も空しく、風小憎は海に没してしまう。

そんなことには無頓着に浮寝島という島に付いた摩耶は、久美を黒刀自(毛利菊枝)という老婆に紹介する。

さらに、黒刀自は久美を島の屋敷に招き入れ、そこで盲目の浮寝丸(東千代之介)という青年に対面させるのであった。

浮寝丸は、孤児だった幼い頃からされこうべ島の黒刀自に育てられており、自らもされこうべ党の一員だったのだが、久美もそのされこうべ党の首領になる運命なのだと説く。

さらに、自分たちとは古代より敵対している白鳥党の首領になる人物の顔を見せてやるといって、彼女を湖の元へ連れ出すと、静かに横笛を吹き出すだが、間もなく久美が、湖面に見い出したのは懐かしい小四郎の姿だった。

その頃、花の島という小島に漂着した風小憎は、地元の漁師海助夫婦に助けられていた。

一方、久美を奪い帰すため、家を出立した小四郎は、途中、網の長者の放った刺客たちに襲われるが、折しも、石礫を投げて加勢してくれた主水と再会する。

その主水、小四郎と道中を共にすることになるが、山酒を振舞おうと言う老婆の言葉にひかれ、その山小屋に立ち寄ることになるのだが、その老婆こそ、小四郎の父親那智の嘉門(有馬宏治)を幽閉していた信夫一角の手下の海猫のお婆であった。

そのお婆からの連絡で、山小屋に駆け付けた一角一党だったが、小四郎は手強く、その場は一旦引き下がることに。

その頃、花の島にいた風小憎は、収穫した貝が失われた鍵をくわえこんでいるのを発見、すぐさま、小四郎の元へ駆け付けようとするが、それを邪魔したのが、一角一党。

やはり、手下のひさごに風小憎の動向を見はらせていたのであった。

あっさり風小憎から鍵を奪い取った一角は、今度は、鉄砲で、小四郎と主水を襲い、小四郎は崖から転落してしまうのだった。

その頃、久美の方はと言えば、黒刀自から命ぜられるまま、浮寝丸が煎じた髑髏葛の毒薬を彼が吹く怪し気な笛の音と共に飲まされ、人柄が一変してしまっていた。

そんな彼女を、島から独り逃そうと変心した浮寝丸に対し、黒刀自は呪文で嵐を呼び、浮寝丸に落雷を落として殺そうとするのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大ヒットした子供向け時代劇五部作の二作目。

本作での見所は、重要人物の意外な宿命が明かされる所。
これによって、全編を貫く謎とサスペンス要素が出来上がる。

あまりの意外さというか唐突さに、観ている側は混乱するが、実は次回作以降、話が進むにつれその因果関係が徐々に分かってくるようになっているし、その宿命とやらも、何やら人工的に作るもので説得力はないのだが、その単純さがかえって子供には分かりやすかったのかも知れない。

全体の構成的に言えば「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」に当るエピソードと解釈すれば良いだろう。

つまり、ここでいう「されこうべ党」とは、今風に言えば「ダークサイド」の事。

さらに、美形の敵役が登場することも大きな注目点の一つ。

勧善懲悪活劇の敵役といえば、従来、憎々しい悪人面が常識だったのだが、そこに主人公より美しい二枚目を配した所が、この作品の画期的な所といえよう。

盲目の美剣士という設定もロマンチックで、子供だけではなく、いかにも若い女性にも受けそうな要素である。

いわゆる「美形敵キャラ」が女性ファン等にもてはやされるようになるのは、テレビの巨大ロボットアニメの頃からかと思われたが、こういう先例が存在したのだ。

海賊が登場する所等、スケールの大きな展開を予想させるのだが、惜しむらくはこの作品、大袈裟な設定や新たな人物の登場等が多い割には、それらはほとんどこけおどかしに過ぎず、話を膨らませる要素にはなっていないため、今回もあっけない処理に終わっている。

全体的にいかにも御都合主義丸出しの展開で、さすがに今観ると単調でバカバカしいだけなのだが、この手の娯楽が皆無だった当時の子供達にしてみれば、正に夢のような冒険世界だったのだろう。