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キングコング対ゴジラ

あまりにも有名なメガヒット作品。
自社のスポンサー番組である「世界の脅威シリーズ」が、5%という低い視聴率(劇中では聴視率)に甘んじているのに業を煮やした、定年まぎわのパシフイック製薬宣伝部長多古(有島一郎)は、ソロモン群島のファロ島にいると噂される、謎の魔神調査に、TTBテレビのキャメラマン桜井(高島忠夫)と藤木悠コンビを差し向けます。
一方、北極海の海水温度の上昇現象調査に向かった、国連の調査潜水艦シーホーク号は、不気味に光る氷山を発見後、消息を断つのでした。
桜井たちは、ファロ島の原住民の集落で、大蛸の襲撃に遭遇。
さらに、突然現れたキングコングを発見します。
氷山から出現したゴジラに、マスコミの話題を先んじられた多古宣伝部長は、コングの発見に狂喜し、自らも、眠ったコングを日本に輸送途中の船に乗船する事になるのですが、日本近海で、「コングの日本持ち込みは、密輸になる恐れあり(笑)」と足留めされ、所有者としての責任問題にまで話が及ぶと、いきなり気絶してしまいます。
重沢博士(平田昭彦)の「ゴジラは帰巣本能で日本に必ず戻ってくる」という予測通り、松島湾より上陸したゴジラは、恋人一雄(佐原健二)の乗った船が沈没したと信じ込み、北へ向かう桜井の妹、文子(浜美枝)が乗った列車に迫るのでした…。
とにかく、この作品、前2作とは打って変わって、全編、完全な「ナンセンスコメディ」調の演出になっています。ファロ島で大蛸に襲われる少年チキロや、疎開しようと家を出る母親に「ゴジラ観たいよ〜」と駄々をこねる子供の姿など、明らかに子供層を意識した演出も登場。
もちろん、後半、動きに動き回るゴジラとキングコングのプロレスごっこも有名ですが、怪獣映画として、恐さの演出などははっきり弱くなっている(おそらく、意図的に)…と見るべきでしょう。
都市破壊シーンなどもほとんどなく(何故か東京に迷い込んだコングが、意味もなくビルを一つ殴り付けるのと、痲酔薬で眠らされたコングが座り込んで壊す、国会議事堂の玄関口のシーンくらい…)、自衛隊の「埋没作戦」「百万ボルト作戦」なども、それほどストーリー的に盛り上げている…とも感じられないのですが…。
それよりも、「御都合主義」といわれようが、全編、生き生きと動き回って活躍する、主要な登場人物たちのキャラクターの魅力満載!この部分だけで、十分面白く思えます。
とにかく、全編「荒唐無稽」を開き直ったような発想で、「怪獣プロレス」というアイデア自体を笑い飛ばしているような作品作りは、今観てもインパクトがあります。
前半の、高島忠夫と藤木悠&通訳の大村千吉トリオのコミカルな描写などは、おそらく、昔のハリウッド製コメディ凸凹道中記辺りのスタイルを踏襲したものではないでしょうか。
今もって不思議なのは、この「キンゴジ」の「ナンセンスコメディ路線」、何故、この後の怪獣ものに継承されなかったのか?…という点です。
作品がコケたのならともかく、歴史的なバカ当たりをしたのに…。
当たった要因は「プロレス要素」だけ…と、作り手側が分析した結果でしょうか?(それとも、海外での「コメディ調」への評判が思わしくなかったのか?)
ラストの重沢博士の教訓めいたセリフ、「人間は、動植物の自然に対する適応能力に学ぶべきでしょう」も、何だかちょっと意味不明だったりするのですが、ひょっとしたら、こういうセリフ自体、全体のナンセンスを象徴していたりして…(汗)