TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

人狼

観終わった後、えらく完成度の高い作品だな〜と、心底感心はしたが、どこかで、このテイストに似た映画を観たような…という感じが付きまとって仕方なかった。
答えは、1960年代に大映で、故市川雷蔵主演で作られた「陸軍中野学校」シリーズだったことに、後日気が付いた。
一人の優秀な男が、陸軍のスパイの一員として訓練され、敵との諜報合戦に、クールに立ち向かう…という、独特の味わいを持った娯楽シリーズであったが、いつまでも、心に残る不思議な魅力を持っていたのも確かである。
「諜報戦」というテーマが共通だから、似ているのは当然のような気もするが、押井氏は、世代的にこの作品を観ている可能性が高いと思える。
もちろん、設定その物を変えてあるし、別の趣味性(武装&戦闘)も加わっているので、似ている事自体にマイナス要因は何らない。
男女の情愛を越えた、何とも言い難い余韻が残る、独特の雰囲気だけがうまく生かされており、他の押井作品よりも遥かに分かり易く、上質の娯楽作に仕上がっていると思う。
全体的に、色調を押さえた、地味目の画面作りや、素材自体のややマニアックな感覚が、観客の嗜好を分けるのでは…と感じるが、アニメ作品としては、世界でもトップクラスのクオリティを持った、近年稀な収穫である事は間違いあるまい。