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ゴジラ対ヘドラ

円谷英二亡き後、東宝特撮陣は大幅に縮小され、従来とは比較にならないほど苛酷な条件の中で作られた作品。
しかし、坂野義光監督はそうした悪条件を逆手に取っ手、逆に、強烈な作家性とメッセージ色を取り入れた異色のゴジラ映画を作り上げたのである。
汚れた駿河湾の川底に、オタマジャクシに似た怪獣の幼虫が生まれる。それは徐々に形を変え、大きく成長していく…。
インパクトの強い主題歌から始まり、物語は、ゴーゴークラブで踊り狂う若者の生態を描く一方、公害の調査に心血を注ぐ科学者の姿も同時進行で語っていく。
後半は、お馴染みのゴジラが登場し、ヘドラと戦う事になるのだが、予算と時間の制限による表現の稚拙さは隠すべくもない。
しかし、ここでも、ゴジラを飛ばせたり…と、マニアたちからは批判も浴びたものの、何とか、従来のゴジラ像とはひと味違うイメージを作り出そうとしていた、当時のスタッフたちの苦心の後が忍ばれる。
この映画は、怪獣プロレスのスペクタクルを背景に、むしろ、当時の世相、若者たちの無力感や絶望感を表現した、一種の青春風俗映画として捕らえた方が分かり易いように思える。
今や、カルト的な人気を一部で得ている、ゴジラシリーズの中でも特異な位置を占める作品である。