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大魔神怒る

1966年、大映京都、吉田哲郎脚本、三隅研次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

崖を背景に、ぶつぶつとした質感のある白文字でタイトル。

竹林の中を逃げる数十人の村人たち。

しかし、彼らは、御子柴藩の侍たちに取り囲まれてしまう。

人夫などに駆り立てられ、貧しい生活しかできない御子柴に嫌気がさし、村を捨てて来た村民たちだったが、侍にその場で数人斬られて、命が惜しかったら戻れと命じられると、それ以上抵抗することはできなかった。

しかし、連れ帰される村人の中で、若い男女二人だけは、侍の目を逃れて草むらに隠れていたので、そのまま村を逃げ出すことにする。

このまま御子柴に帰っては生きていけないからだった。

やがて山を越えた二人の男女は、湖に浮かぶ「神ノ島」から、鐘を突く音が聞こえて来るのに気づき、とうとう千草藩の領内に逃げ追うせたと知り喜ぶ。

八雲の湖に浮かぶ神ノ島には赤い鳥居が建っており、崖上の鐘を言葉が不自由な老人、鐘撞き和助(寺島雄作)が毎日撞いていたのだった。

八雲の湖は、千草藩と、その分家に当たる名越藩に挟まれていた。

地図上でその平和な二つの藩をねたましげににらんでいたのは、山に囲まれているため、貧しい御子柴藩の領主御子柴弾正(神田隆)だった。

家臣の鬼子島玄藩(北城寿太郎)が悔しがるのも、御子柴の民が隣の千草藩に逃げ込むことを、山深くて、なかなか阻止できないことだった。

弾正は玄藩から、近々千草藩では先代領主の追悼を兼ね平和を祈る法要を執り行い、そこに名越の領主も参加するそうだと教えられると、その機に乗じて、二つの藩と八雲の湖を頂こうと言い出す。

その法要の日、千草の領主、千草十郎時貞(本郷功次郎)が横笛を吹き、その許嫁で、名越藩の領主名越兵衛(内田朝雄)の娘でもある早百合(藤村志保)が舞を待っていた。

法要は滞りなく終了し、十郎は兵衛に、しばらく逗留されてはどうかと勧める。

その時、自分たちは御子柴から逃げて来て、当地の一の谷の開墾を手伝わさせてもらっているものだが、日頃の恩義に報いたい為、仲間たちが一人茶碗一杯ずつ米を集めたものを持って来たので、些少ではあるが受け取っていただけないだろうかと数名の農民らしき男たちが申し出る。

その気持ちに感謝し、十郎はありがたく受け取ることにする。

男たちは、三つの米俵をお館の中に運び入れる。

その様子を見物していた村民は、御子柴の国の苦しさを聞いていただけに、自分たちは千草に生まれて良かったと言い、隣にいた女も、この幸せがいつまでも続きますように…と祈るのだった。

その後、名越兵衛は早百合と共に、度々平(丸井太郎)が漕ぐ小舟に乗って神ノ島にやって来ると、神様にお参りすることにする。

島には、鐘撞き和助と、遊びに来ていた度々平の弟竜太(加賀爪清和)がおり、兵衛たちの船を迎える。

そこには、石でできた武人像が埋もれていたのだが、拝もうとした早百合や兵衛は、武人の顔が真っ赤に染まっているのを観て驚愕する。

武人の顔が赤くなると、悪いことが起きる前兆であり、名越の里が滅びると言う言い伝えがあったからだ。

その頃、御子柴弾正は、千草に攻め込む為、兵を挙げていた。

一方、千草のお館に持ち込まれていた3つの米俵の中からは、中に潜んでいた荒井一角(藤山浩二)らが抜け出し、門を開けて御子柴の軍勢を中に入れると、寝所で寝ていた十郎に襲いかかっていた。

一瞬、気配を察し目覚めた十郎は、何とか応戦するが、すでに城の中に、御子柴の軍たちが入り込んでいることを知った土肥嘉門(水原浩一)は、一刻も早く十郎を城の外に逃げるよう説得する。

十郎と田部隼人(平泉征)を裏門から逃がした嘉門は、落石の仕掛けで裏門を閉じると、自らは敵に討たれて息絶える。

神ノ島にいた兵衛たちが、武人像に祈っていると、息子の名越勝茂(上野山功一)が、御子柴が千草藩の攻め込み、十郎殿の行方は知れなくなったと船で知らせに来る。

その後、余勢を駆った御子柴軍は、名越兵衛の屋敷まで攻め込んで来る。

応対した兵衛は、話し合いで決着しようと弾正に退治するが、弾正は、十郎を匿っているはずだから黙ってこちらに渡せと迫る。

しかし、兵衛が知らぬと言うと、それでは家捜しをすると弾正が配下に命じる。

兵衛は、当屋敷に土足で入ることを許さぬ。名越を侵せば、神の怒りを受けねばならんぞ。神ノ島には神様がおられる。神の怒りは必ず受けると言いながら立ちふさがるが、その背中を敵の槍に突かれてしまう。

名越の配下は、刀を抜くが、それを押しとどめた兵衛は、ここで戦いを起こせば、名越の里を戦いに巻き込み民を苦しめることになる。

名越の里の為に耐え忍べ。我らには湖の神がおわす。耐え忍ぶのじゃ…と言い残して息絶える。

側でその様子を観ていた竜太は、思わず御子柴弾正に石を投げつけようとするが、それを度々平が無言で止める。

弾正は、その場で勝茂 を縛り上げると、十郎を連れてくれば助けてやると、早百合や家臣たちに告げ、今日より名越は御子柴のものになったので、鬼子島玄藩を住まわせると宣言する。

早百合は、父、名越兵衛に土をかけ、度々平や竜太らは、手を合わせて冥福を祈るしかなかった。

神ノ島では、和助が鐘を衝いていた。

そこに、小舟でやって来た早百合と度々平は、武人像に、御子柴に千草と名越が攻め込まれました。どうか、名越と千草をお守りください。その為には、私はどうなっても構いません。みんなの苦しみを取り除いて下さいと念ずる。

その時、和助が、島に近づいて来る荒井一角ら、御子柴の侍たちが乗った小舟に気づき、早百合たちを近くの岩場に隠す。

武人像の前にやって来た一角らは、配下の者たちに、火薬箱を運ばせ、石像には鉄のくさびを打ち込み始める。

驚いた和助が止めようとするが、あっさりはねのけられる。

一角たちは、石像に穴をあけ火薬を仕掛けていたのだった。

早百合もたまりかね、神様に何をするのです!石像に触れてはなりませぬと叫びながら一角の前に現れるが、一角は、お前たちの神がどうなるか、良く観ておけと言い、導火線に火をつけさせる。

驚愕した和助が飛び出し、導火線の火を消そうとするが、背中から斬られ、湖に落ちて死んでしまう。

早百合も飛び出すが、もはや手遅れと、後から飛び出した度々平は、早百合の身体を近くの岩場の陰に押し込むのが精一杯だった。

その時、武人像は大爆発を起こし、石像の頭部は、そのまま吹き飛んで湖の中に落ちてしまう。

神ノ島が大爆発を起こしたので、湖の周囲にいた住民たちは驚いて島を見つめる。

竜太もその一人で、近くに飛んで来た石を拾った竜太は、他の民たちに、ご神像が壊されたんだと見せる。

一角は、早百合と度々平の身を避けた方角を見るが、そこは落石に埋もれており、とても生きているとは思えなかったので、二人は死んだと判断する。

その時、一天にわかにかき曇り、落雷が、武人の首が落ちた辺りの水面に落ちる。

しかし、その後は何も起きなかったので、一角は、この世に祟りなどあるはずがないと配下のものに檄を飛ばし、小舟で帰ることにする。

その後、落石の下から度々平がはい出し、奥にいた早百合を外に出すが、不思議なことに二人とも全くの無傷であった。

その頃、名越の館に住み着いていた鬼子島玄藩は、牢の中に入れていた名越勝茂に、もはやお前たちの石像はないぞと告げ、武人像を破壊したことを教える。

神ノ島にいた度々平は、早百合に帰ろうと促すが、早百合はこの島を守ると言い出す。

自分たちがかすり傷一つ追わなかったのも神様のご加護に違いなく、今後も神様におすがりするしかない。この島に残って祈り続けますと早百合は決意を述べていたが、その時、水辺に漂着した小舟を発見する。

その中には、気を失った千草十郎時貞とお供の田部隼人が倒れていた。

二人の様子を見た度々平は助かると言い、小舟を岸にあげると、二人の手当を始める。

やがて目覚めた十郎は、ここは神ノ島か?と驚く。

一方、一角から、十郎の行方が見つからぬと聞いた鬼子島玄藩は、攻め込むとき、あらゆる道は塞いでいたので逃げられるはずがない…と考えていたが、そのtっ気、十郎がいるとしたら神ノ島しかないと気づき、すぐさま一角に見張りを続けるよう命じる。

傷の手当を受け回復した十郎と隼人は、夜明けまでには必ず帰ると言い残し、小舟に乗って島を後にする。

その十郎の小舟を発見したのは、神の島に近づいていた一角たちだった。

一角一行は、十郎の小舟を追跡するが、必死に櫓を漕いで逃げていた隼人は、岩場に乗り上げてしまい船が停まってしまったので焦る。

しかし、そこに近づこうとした一角たちは、急に船が動かなくなり、湖の底から聞こえて来る、石をこすり合わせるような不思議な音に気づく。

次の瞬間、一角たちの船の周囲の水が噴出し、船は回転しながら沈没して行く。

その怪異を目の当たりにした十郎は、神のご加護だ、行こうと隼人を促す。

その頃、千草の館を占領していた御子柴弾正は、女たちを舞わせ、自らは酒に酔っていた。

その庭に忍び込んだ十郎と隼人だったが、すぐに見張りに見つかり、銃弾を浴びせられる。

その音に気づいた弾正は、館の勝手を知っていると見えて、逃げたと言うくせ者は、千草十郎時貞に違いないと察し、必ず捉えるよう命ずる。

その時、天井裏から、弾正の部屋に降りて来た十郎と隼人は、弾正を捕まえると、首に小刀を突きつけ、一緒に名越の里に来るよう命じる。

千草の民たちの間には、殿さまが戻られたらしいとの噂が一気に広がる。

途中、十郎の隙を観て逃げ出した弾正は、十郎を引っ捉えて斬り捨てい!と命じる。

そこに現れたのは、生き残っていた吾藤三郎太(高杉玄)と千草の民たちだった。

三郎太たちは、殿である十郎を助けるため剣を抜くが、多勢に無勢、あっという間に御子柴の家臣たちに斬り殺されて行く。

形勢不利と観た十郎は、隼人と共に、井戸に身を投ずる。

その井戸の底には、湖に通じる抜け穴があったのだ。

後刻、その抜け穴のことを調べた家臣から聞かされた弾正は、名越に行ったに違いない。鬼子島玄藩 に知らせて、直ちに名越勝茂を斬れ!と命じる。

夜明けまでに十郎様を差し出さねば、勝茂様を斬ると言う知らせを持って、度々平は神ノ島にいる早百合に伝えに来る。

早百合は、神に祈るしかなかった。

縛られた勝茂は、八雲の湖畔に連れて来られるが、その様子を名越の民たちは心配そうに遠くから見守っていた。

鬼子島玄藩は、観た通りだ!誰も助ける奴はおらんのか?と民たちを嘲る。

勝茂は、俺は信で名越の護りとなってやると死を覚悟する。

その時、竜太が投じた石つぶてが玄藩の頭部に当たり、怒った玄藩は、家臣たちに竜太を追わせる。

その時、一艘の壊れた小舟が近づいて来たので、不審に思い、その中を覗き込んだ玄藩は、胸に石像の破片を貫かれた荒井一角の死骸を発見し驚嘆する。

家臣たちは、石像を壊した祟りだと怯えるが、玄藩はその言葉を否定するように、一角は島に行って殺されたんだ。十郎は島にいるに違いないと家臣たちに告げる。

その隙に、竜太は、縛られていた勝茂を救出すると、もやが濃くなる中、小舟に乗せ神ノ島に渡る。

同じく、小舟で神ノ島に到着した玄藩は、そこに隠されていた食料や衣類を発見し、この島に人が隠れていることを知る。

その時、何も知らない十郎が、隼人の漕ぐ小舟で接近して来るのを観た早百合は、度々平と共に身を隠していた場所から飛び出すと、崖上の鐘を衝いて、十郎に危険を知らせようとする。

しかし、玄藩たちもその音に気づき、早百合を捕まえるが、それを邪魔しようとした度々平は、その場で斬り捨てられてしまう。

湖上でその鐘の音を聞いた隼人は異変を感じ、櫓を漕ぐ手を止める。

早百合の身に危険が迫ったと感じた十郎は、島に早く着けるよう命じるが、隼人は、早百合様の気持ちが無駄になります。何より御身の安全を!と言うと、船を転ずる。

その様子を早百合は確認し安堵するが、玄藩 も十郎の船が遠ざかって行くのを見つけていた。

早百合は神に祈るが、玄藩は、鉄砲隊に銃撃させると、船で後を追わせると同時に、鐘を落とせと命じる。

家臣たちは、鐘の下に木の棒を差し込み、テコの原理で、鐘の吊り下げ部分を持ち上げると、崖下に落とす。

鐘は崖下でまっぷたつに割れてしまう。

隼人が漕ぐ船は、玄藩の配下たちの小舟に包囲されてしまう。

かくして、捕まった十郎、竜太、隼人、領民らは、みんな木の杭に縛られ公開処刑になる。

この処刑を見せられることになった領民たちは、神も仏もないものかと嘆き、竜太の母くめ(橘公子)は、木枠の外から息子の名を呼びかけるしかなかった。

御子柴弾正は、そうした領民たちに対し、弾正に楯突く奴は何人たりとも斬る!神はとっくに湖の底に沈んだ。わしは神より強いんだ!と豪語する。

その直後、引き立てられて来た早百合は十字架に縛られ、弾正は鬼子島玄藩に火あぶりにするよう命じる。

それを聞いた十郎は、目的に世の命だけだろう。この十郎の首を取れ!と叫ぶが、弾正は、扇子で十郎の顔を何度も打ち据える。

早百合の十字架の下に積まれた薪に火が放たれ、領民たちは思わず手を合わせる。

弾正は愉快そうに笑い出す中、早百合は、神様、今こそ私の命を捧げます。他の人の命をお守りください。千草や名越をお守りください。どうか、私の祈りをお聞きくださいと祈り、その目からは涙がこぼれる。

その時、神ノ島が突如崩れ出し、突風が起きて、薪の火が消えてしまう。

玄藩は、薪と油を足せ!と命じる。

やがて、湖の中から、武人像が浮き上がって来る。

組んだ両手で顔を下からなで上げると、武人の顔が行かれる魔神の顔に変化する。

神ノ島は崩壊し、湖はまっぷたつに割れて、大魔神の前に道ができる。

地響きが近づいて来て、大魔神は巨大な石垣を突き崩し、弾正や玄藩の目の前に出現する。

弾正は、何だ?あれは!と驚愕し、鉄砲隊が大魔神に対し発砲し始める。

大魔神は処刑場に近づくと、早百合の十字架を握って、根元からへし折ると、そっと地面に横たえる。

弾正は、十郎に刀を突きつけ、寄るな!このものたちを斬り捨てるぞ!と魔神に向かい睨みつけるが、一瞬立ち止まった大魔神が雷鳴のような大音響を出すと、弾正は怯えてその場を逃げ出す。

その途端、作の背後で処刑を見せられていた領民たちが一斉に中になだれ込み、杭に縛られていた十郎や、地面に横たえられた十字架の早百合を救い出す。

御子柴軍は、門の中に逃げ込み、門の上の見張り台から鉄砲を撃つが、近づいた大魔神に門全体が押し倒されてしまう。

城郭の中に入って来た大魔神に、家来たちは碇を引っ掛けて止めようとするが、全く力負けしてしまい、かえって建物の方が魔神に引っ張られ壊れてしまう。

玄藩は、大魔神の進路に火薬箱を積み上げ、魔神が接近した所で、火矢を放ち、足下で大爆発を起こさせる。

周囲の石垣も破壊されるほどの破壊力で、玄藩は一瞬、やった!と勝利を確信するが、煙が収まってみると、大魔神のシルエットはそのまま無傷で立っていた。

魔神は、巨大な岩を持ち上げると、その岩を投げつけ、逃げようとした玄藩は、転んで下敷きになってしまう。

弾正は湖にまで逃げ、一人小舟に乗って沖に出る。

嵐が巻き起こる中、大魔神は、弾正を追うかのように湖の中に入って来る。

弾正の小舟は途中で先に進まなくなり、水の渦に巻き込まれたように回転を始める。

大魔神の足下から発火した炎は、そのまま湖面を渡り、弾正の小舟に着火する。

火から逃れようと帆柱によじ上った弾正だったが、上の横木に乗ろうとした所で足を滑らせ、落ちるとき綱に首を絡ませ、まるで十字架に貼付けにされたような格好になったまま炎に包まれて行く。

やがて、空が明るくなったので、早百合は湖の中に足を踏み入れると、その場で跪き、振り向いた大魔神に対し、神様ありがとうございましたと感謝し、合掌したその手に、涙がこぼれ落ち、さらに、その涙は湖に落ちる。

すると、大魔神の身体は水に変化して行き、湖の水に同化して行く。

その様子を見守っていた十郎は、島はなくなってしまったが、神様は守って下さるだろうとつぶやく。

その時、湖の底から鐘の音が響いて来たので、竜太はみんなに教えるが、十郎は、神が平和を祈って撞いておられるのかも知れんと語るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「大魔神三部作」の2作目に当たり、俗に「水の大魔神」と呼ばれる作品である。

この「大魔神三部作」は、全部1966年に作られており、1年に3本も作られていると聞くと「粗製濫造」を連想するが、実際に観てみると、どの作品もしっかり作られており、決して手を抜いた印象がないのが凄い。

各作品の監督は、それぞれしっかりした時代劇を作る実力者ばかりだし、一画面一画面の構図なども揺るぎない。

そこには、全く「子供向け」と言う感覚はないし、大人向け時代劇と何ら遜色のない作りである。

大映時代劇の底力を感じる作品と言うしかない。

特撮的な見せ場は、大魔神が「十戒」のモーゼのように湖をまっぷたつに割り、湖底に道を作るシーンだと思うが、ここは、最初に観た時からあまり上手くいっているとは思えない。

中央の大魔神の左右にシンメトリックに落ちる滝のような湖が合成されているのだが、明らかに左右の高さがずれており、遠近法的に不自然になってしまっている。

デジタルがある今なら、こういうミスは避けられるはずだが、当時はおそらく、ラッシュ(試写)を観るまで、どういう風に合成されているか判断できなかったのだろう。

フィルム上では小さなずれでも、大画面に拡大されるとずれも拡大し、気になるものになる。

この時代としては仕方なかったことだと思うが、他のシーンの特撮が上手くいっているだけに惜しまれる。

特に、城の中に入り込む大魔神のシーンは迫力満点。

スケールの大きなミニチュアの建物の中に立つ大魔神の勇姿は、何度観ても見事。

敵役へのとどめは、どの作品も因果応報の形になっているのだが、この作品でも、早百合に弾正が課した「十字架での火あぶり形」と同じ形で当の弾正が殺される趣向になっている。

セットも豪華なものが作られているし、プログラムピクチャーと言えども手を抜かない大映京都の姿勢は素晴らしい。

十郎を守る田部隼人を演じているのが、若き日の平泉征(現:平泉成)だと言うことは今回見直してみてはじめて気がついた。

妖怪三部作に出ていたのは知っていたが、大魔神にも出ていたとは…

本郷功次郎同様、特撮俳優の一人と言っても過言ではないかも知れない。