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キング・コング('33)

1976年にリメイクされた、まぬけな「キングコング」ではなく、これは、1933年製作された白黒古典の方。
1954年の「ゴジラ」が、どこか戦争の陰を引きずっているように、その原点となったこの作品も、当時の不況の暗い陰を色濃く反映している。
職を捜していた貧しい女性のアンは、ある記録映画撮影隊に誘われて、謎の島へロケに出かける。
そこは、驚いた事に、有史以前の恐竜などが、いまだ生息するロスト・ワールドだったのだ!
金髪のアンは、原住民たちに捕らえられ、謎の巨大生物の生け贄に捧げられる事になる。
やがて、姿を現したその生物とは、巨大な猿「キング・コング」であった!
撮影隊のメンバーは、ロスト・ワールドの奥深くに連れ去られた、アンを救出すると共に、コングを生け捕りにし、ニューヨークへと連れて帰って、あろう事か、見せ物にしてしまう。
興味本位のマスコミのカメラフラッシュに怒ったコングは、鎖を解き放ち、やがてアンを求めて街へと移動する。街はもう大パニック!
アンを見つけたコングは、彼女を手に握ったまま、雲付くような建造物、エンパイア・ステートビルのてっぺんまで登るが、復葉機の攻撃を受け、アンを助けながらも、自分は墜落し最後を遂げる…。
文明に毒された人間の欲望と、自然の象徴たるコングの無償の愛の対比など、奥深いテーマを内在させつつも、驚異の探検旅行や、未知の生物たちのリアルな対決表現、さらに都市破壊スペクタクルの興奮など、今に連なる、娯楽スペクタクルのほとんどの要素を実現した、歴史的な傑作映画。
モデルアニメ(アニメのように、一コマづつ、人形を動かして表現する技法)の、気の遠くなるような作業によって、コングや恐竜たちの生き生きとした姿は、作られている。注意して見ると、コングの毛並みが、指で触った部分だけ、微妙に動いているのが解るはずだ。
SFXが発達した現代の目から見れば、ギクシャクしたその動きに、幼稚さを感じるかも知れないが、手作業と根気だけで作り上げられたような画面には、最新のデジタル技術でも作り得ない「暖かさ」や「愛らしさ」が感じ取れるのではないだろうか。
人間の「夢」がフイルムに定着された、初期の貴重な作品と言えよう。