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笑う地球に朝がくる

1940年、南旺映画、南せん子原作+脚本、津田不二夫+千葉泰樹監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雪が積もった地方の町に「青島ひろし一行帰たる」というポスターが貼り出されている。

しかし、客足はさっぱり。

身体が弱いうららちゃんは、座長の青島にバレエの動きを観てもらいながら、こんな地方の客に自分達の芸が理解してもらえるのかと疑問を投げかける。

しかし、うららの兄が、まだ未熟な芸しかないうららをたしなめる。

そんな中、連日の不入りで木戸銭の上がりもおぼつかないと分かってくると、顔を靴墨で黒く塗る扮装が評判で一座の中心的存在だったニ○ロバンドの連中は、演奏の最中に逃げ出す相談をして、そのままなけなしの木戸銭を盗んで列車に乗って逃げ出してしまう。

その事で、今日、宿に泊まる金もなくなった事を知った残りの芸人たちは、全員集まって善後策を相談する事にする。

老齢のお笑い芸人(高瀬実乗)が、全員、手持ちのへそくりを出し合おうと提案し、全員賛成して、金を彼に預ける。

取りあえず、うどんでも注文して、今日はこの劇場に寝ようと決定するのだが、そのうどんを注文に出て行った老芸人はなかなか帰って来ない。

全員が心配しはじめたその頃、ようやく、うどん屋が到着し、何と、卵丼を全員分配達して来て、金を払えという。

驚いた芸人たちが、老芸人の事を尋ねると、彼は料金後払いという注文をした後、独り列車に乗って町を出て行ったというではないか。

又しても仲間に裏切られたと知った芸人たちは、ヤケになって小道具や衣装類を売って金にしようと、町の質屋に出かける。

しかし、その質屋にいった連中も又心変わりするかも知れないと、その後を何人かが付けて行くという情けないことに。

それでも、何とか全員無事帰って来て夜食代くらいは捻出できたのでその晩はそこに寝ることになる。

さて翌日は大勢の客が集まったので、全員張り切って芸に励んでいると、間の悪い事に、たまたま侵入して来た泥棒を、扮装した芸人と見間違ったもぎりの婆さんが木戸銭を彼にそっくり預けてしまい、盗まれたと気づいた時には後の祭り。

このの次第を知った芸人たちは、次の出し物を待ちかねて騒ぎだした客たちをよそに、又楽屋に全員集まって善後策を考えるが、もはや万策尽きたと分かると、めいめい最後の虎の子を出し合って、うららちゃんと、彼女が惚れている座長の青島を逃げ出させると、その時間稼ぎの意味もあって、有志の4人(岸井明ら)で、客に袋叩きにあう事を覚悟で舞台に上がるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

客が集まらず、貧乏生活を強いられているドサ廻りの芸能一座の悲哀を面白おかしく描いたペーソスコメディ。

爆笑コメディというよりは、ちょっとしたコントを映画化したものといった方が近いかも知れない。

結髪係りを演じている清川虹子など、登場する何人かは見覚えがある人が出ているが、メインとなる俳優は知らない人ばかり。

ハワイアンを「口三味線」の要領で披露する高瀬実乗のいかにものんびりした芸など、珍しさもあるが、劇中劇のような形で披露される舞台芸に特に笑えるようなものはない。

いかにも「客が来ない一座」に見せるための、意図的な演出なのかも知れないが…。

雪の中をひた走る列車の映像を何度か繰り返す事によって、一座のメンバーが少しづつ「トンズラしている」と想像させる演出等はなかなか面白い。

一座のメンバーだった顔を黒塗りにして演奏するバンドなども、時代を感じさせて興味深い。

落語に詳しくないので自信はないが、劇中、質屋のオヤジとして登場しているのが、タイトルに名前が出ている三代目三遊亭金馬ではないかと思われる。

全体としては、取り立ててどうこういうほどの出来とも思えないが、いかにものんびしした時代ののんびりしたお芝居を観ている感じの作品である。