TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

父ちゃんのポーが聞える

1971年、松本則子原作、笠原良三脚本、石田勝心監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

蒸気機関車の運転士、杉本(小林桂樹)と万年釜焚きの丸山(藤岡琢也)は長年コンビを組む友人同士である。

最近丸山は、杉本の次女で中学3年生の則子(吉沢京子)を養女にもらえないかと、馴染みの飲み屋「千鳥」で頼み込んでいた。

しかし、長女の恵子(森るみ子)は来月結婚して東京に行ってしまうとあって、子煩悩な杉本が承知するはずもなかった。

そんなノッコこと則子は明るく元気な少女だったのだが、姉との最後の旅行先となった行川アイランドや、父親が再婚する祝いの席で、何故かつまづき転んでしまう失敗が続く。

やがて、新しい母親(司葉子)との生活も順調に始まった頃、ノッコは顔に怪我をして帰宅し、近頃しょっちゅう学校で転んで、体育にも満足に参加できなくなっていたことを打ち明けるのだった。

その後、金沢の鉄道病院の検査では何の異常も見つからなかったのだが、病状はさらに悪化。

ノッコが通う中学校の先生たちとの相談で、杉本は、治療と学習を兼ねた「こまどり学園」という施設にノッコを入院させることにする。

そこでは、本橋先生(吉行和子)との出合いや、慰問で訪れたパン屋の吉川(佐々木勝彦)への淡い初恋を経験しながらも、彼女の病状はいっこうに改善するどころか、悪化しつづけて行く。

彼女の治療に人一倍熱心な久保木先生は、新潟の名医桜井教授の来診を依頼するが、その結果、ノッコの病気は現在の医学では治癒の見込みのない「ハンチントン舞踏病」という難病であったことが判明する。

もはや、両手両足とも不自由になったノッコは、「こまどり学園」から、山奥の不便な越山療養所に転院させられることになる。

以前のように、頻繁には見舞いに来られなくなった杉本は、幸いにも、自分が乗る列車が、毎朝、その療養所の側を通る事を知り、彼女に、これから近くを通る度に合図の汽笛を鳴らすことを約束するのだった。

しかし、そんな杉本が運転する機関車が、ある日、踏み切りで立ち往生していたトラックと衝突事故を起こしてしまい、杉本は重傷を負ってしまう。

杉本とノッコとの約束を聞いた丸山は、列車に乗れなくなった杉本に代わり、自分が汽笛を鳴らすようになるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実話に基づいた感動悲話。

主役を演ずる吉沢京子はテレビドラマ「柔道一直線」(1970)のヒロイン役で茶の間の人気者となり、その後、映画の方では「バツグン女子高生」というアイドル青春ものの主役(2本作られた)とか、「若大将対青大将」(1971)の2代目若大将大矢茂の恋人役などを演じ、東宝が当時、彼女を新しい看板女優に育てようとしていた気配が伺える。

テーマ自体が重い難病ものなので、映画では、病院で思春期を迎えた彼女が綴る詩などを通じ、メルヘンチックな表現なども交えて描き、単調にならないように工夫している。

出来としては普通くらいではないかと思うが、あえて難をいえば、メインのキャスティングが地味すぎると感じる所。

この時期の東宝作品は、何を作っても当らないという興行的などん底状態にあったということもあり、あまりスターが育っていない。

大人側の中核となる小林桂樹、藤岡琢也というキャスティングにしても渋いというか、地味そのものという印象だし、吉沢京子が憧れる相手役の佐々木勝彦にしても、「ゴジラ対メガロ」(1973)の主役に抜擢されたりしているが、どう観ても脇タイプの人で華がない。

吉永小百合主演のヒット作「愛と死をみつめて」(1964)のような路線を狙ったのだろうが、映画としての魅力作りがちょっと弱かったのかも知れない。

とはいえ、こういう哀しい現実があったということを知るだけでも、この作品を観る価値は十分にあると思う。