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少年ジャックと魔法使い

1967年、東映動画、関沢新一+高久進脚本、藪下泰次演出作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ジャック(声-中村メイコ)は、子熊のプー公(声-熊倉一雄)、子犬(声-水垣洋子)、キツネ(声-大竹宏)、ネズミのチュー公(黒柳徹子)らと森の中の洋館に暮すワンパク少年。

今日も、自ら運転する自動車に嫌がるプー公も屋敷内で無理矢理乗せて、森へドライブ。

すると、ホウキにプロペラを組み合わせたような不思議な一人乗りヘリコプターに乗った少女キキー(声-中村メイコ)が空から近づいてきた。

好奇心に負け、それに乗せてもらったジャックと、こっそり便乗したチュー公は、魔女グレンデル(声-山岡久乃)の住む悪魔の城の上空へ差し掛かると、突然座席が消滅、ジャックとチュー公は、城の中の池に落とされてしまう。

やがて、鏡のある部屋に迷い込んだチュー公は鏡の中に引き込まれてしまい、悪魔製造機の中を通過して悪魔に変身してしまう。

悪魔が乗る骸骨バイクを奪い、かろうじて城を逃げ出したジャックだったが、家にたどり着いてみると、プー公ら動物たちとすっかり仲良くなったキキーの手下の悪魔シバリ(声-九里千春)の姿を見る。

一方キキーも又その姿を窓からうかがっており、隙を見てシバリを連れ去り城へ帰るのだが、ジャック誘拐に失敗した罰を魔女グレンデルから受けるのが嫌さに、キキーは再び骸骨飛行機で城を飛び出すと、ジャックや動物がいる家の上半分ごと吊り下げ、城へ連れ去ろうと計る。

だが、ジャックの勇敢な妨害もあり飛行機は破壊、キキーは地上へ落下し瀕死の重傷を負うことになる。

そんな悪さばかりするキキーを、屋敷に連れて来て介抱する優しいジャックだったが、気が付いたキキーは再び城へ舞い戻ってしまうのだった。

ついに、ジャックと動物たちは城へ乗り込み、悪魔と化したチュー公を連れ戻そうとするが、彼らが登っていた長い階段は魔法の力で消え失せ、彼ら全員、巨大な植物が生い茂る魔法の世界へ落とされてしまう。

様々な幻想を見た後、ジャックはキキーに操縦する悪魔製造機に吸い込まれそうになるが、その機械が城に備え付けられた巨大風車の起こす電気で動いていることを知ったプー公は、自分が周囲から悪魔の仲間と間違えられていることを利用し、変装したまま風車に近づき止めようとする。

そんなプー公を捕まえようとするシバリの妨害が結果的に風車を止めることになり、ジャックは何とか助かり、とうとう悪魔製造機も破壊してしまう。

これに怒った魔女グレンデルは、失敗したキキーを城の下にある氷山に閉じ込めてしまうのだが、シバリからそのことを聞かされたジャックは、キキーを救うため、自ら城の下の氷の世界へ向うのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東映動画創立10周年記念作品。

宮崎駿氏などは、まだこの時期東映動画に所属していたはずだが(退社は1971年)、翌年の「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)の方に参加していたからか、この作品にはかかわっていないようだ。

予告編には「グランプリの東映動画が贈る」などと惹句が出ているが、これは「白蛇伝」(1958)がヴェネチア児童映画祭でグランプリ、「少年猿飛佐助」(1959)がベニス国際映画祭児童映画部門でグランプリを受賞した輝かしい経歴をいっているもの。

演出の藪下氏お得意の動物キャラがかわいらしい。

顔半分を覆うロングヘアで完全に目が隠れてしまっている子犬のキャラなどは、「わんわん忠臣蔵」で海野かつをが声を演じた印象的な子犬そのままである。

小熊のプー公なども、テレビアニメ「ハッスルパンチ」のパンチのアレンジだろう。

「わんわん忠臣蔵」(1963)〜「ガリバーの宇宙旅行」(1965)頃の東映動画作品や、「太陽の王子 ホルスの大冒険」などに見られる、ちょっと気取ったというか、気品のある名作調の雰囲気と比較すると、予算の関係なのか、当時のテレビアニメに近い、かなり荒い仕上がりの動画になっている。

その分、全編、雰囲気描写などより動きに徹した気軽に観れる娯楽作品になっており、年少の子供達には、こちらの方が受け入れやすいかも知れない。

魔女っ子キキーが乗っている、空飛ぶほうきを模した一人乗り用ヘリコプターみたいなメカは、「007は二度死ぬ」(1967)や「0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦」(1967)などのスパイ映画で当時人気のあった秘密兵器の影響だろうが、他の骸骨メカなどと同様に面白いアイデアだと思う。

また、城に潜入したジャックたちが迷い込む魔法の森のシーンは、特に幻想的で楽しい。

ジャックに命を救われながらも、悪魔として、グレンデルに気に入られようと焦るキキーの存在も、「ホルスの大冒険」のヒロイン、ヒルダに重なる部分がある。

それにしても、ホウキに跨がった魔女っ娘キキーと聞けば、どうしても「魔女の宅急便」(1989)の魔女キキを連想してしまうが、これは原作者が別にいることもあり、単なる偶然なのだろうが、何となく気になる所だ。