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潮騒('64)

1964年、日活、三島由紀夫原作、棚田吾郎+須藤勝人脚本、森永健次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

神島は、人口1400人、周囲は1里にも満たない小さな島である。

島の頂きにある八代神社や灯台からは、伊勢湾を挟んだ知多、渥美半島などが見渡せる。

そんな島に住む久保新治(浜田光夫)は、十吉じいさん(菅井一郎)の船で働いている漁業組合所属の18才の青年だったが、海女をしている母親と小学生の弟ひろしとつましく暮していた。

そんな新治は、弟を修学旅行へ出してやることができるだけの給金をもらった後、灯台に魚を届けた時になって、その給金を落としてしまったことに気づく。

その前に、船の引揚を手伝った浜辺に取って返した彼は、そこで先ほど見かけた美しい少女に再会する。

彼女が新治の給料袋を拾って、すでに家に帰しにいって来たと聞かされ、新字は安堵すると共に、そんな親切な彼女のことが気になりはじめる。

家の母がいうには、彼女は、金持ちの宮田照吉(石山健二郎)の孫の初江(吉永小百合)といい、小さな頃、別の家に養子にやっていたが、最近、家庭の事情から又呼び戻しして籍を入れ直したらしいという。

しかも、彼女には遊び人の川本安夫(平田大三郎)という婿候補がいると聞き、新治の心は曇る。

ところが、その後新治は、旧陸軍が使用していた観的哨で、ばったり初江と再会。
彼女が毒蛇に咬まれたのを救ったことがきっかけとなり、安夫との縁談話など彼女は納得していない事実を知らされるのだった。

かくして、二人の心は急速に近づいて行く。

やがて夏休みの時期が訪れ、東京の大学から帰省して来た灯台の娘、千代子(松尾嘉代)が、嵐の日、観的哨で出会った後帰る二人の姿を目撃、それを安夫に告げ口してしまう。

たちまち、二人の噂は安夫を通じて島中に広まり、その話を真に受けた照吉は、初江と新治の交際を断固禁じてしまう。

しかし、彼ら二人がきれいな関係のままであることを信じた母親とみ(清川虹子)や海女仲間のお春婆さん(高橋とよ)、それに十吉じいさんらは、二人の仲を影ながら応援することにする。

そんな神島に大嵐が接近、照吉の持ち船神島丸も流されそうになる。

勇気を示す男はいないのかと叫ぶ十吉の声に呼応するように、新治は母親が必死に止めるのも聞かず、荒れ狂う海に独り身を投じるのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

有名な青春小説の映画化で、過去5度映画化された中で本作は2度目の作品に当る。

ちなみに、1度目は谷口千吉監督、2度目が本作、3度目は森谷司郎監督、4度目は西河克己監督、5度目は小谷承靖監督。

寓話にも似たシンプルなストーリー展開は、作者の三島がギリシャ神話を意識して書いたため。

陽光溢れる美しい自然と、島に生きる純朴な人間像が、今観てもすがすがしい。

一見、アイドル映画のようなものを想像しがちだが、思いのほか、吉永小百合ばかりを目立たせるような撮り方にはなっていない。

あくまでも若者二人を中心とした大人たちも含めた人間ドラマとして、かっちり作っている感じが伝わってくる。

本作で一番印象に残ったのは、新治の母親とみを演じている清川虹子の存在感。

また、十吉じいさんを演じる菅井一郎や、初江の頑固な祖父、照吉役の石山健二郎など、脇を固めるベテランたちの演技も光っている。

こうした実力派の支えがあるからこそ、若い主役たちの演技も輝いて見えるのだと気づかされる。

水汲み場のシーンや夜間シーンなど、影を強調した撮影も奥深さを感じるし、ギターによるシンプルな音楽も心地よい。

一度は観ておきたい青春映画の一本だろう。


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