TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

清水の暴れん坊

1959年、日活、呉正恭原案、山田信夫脚本、松尾昭典脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

清水支局員時代、市会議院を殴ったとして、東京本社に転勤させられた全日本放送のラジオ報道部員石松俊雄(石原裕次郎)は、当分行けそうにもないと穂高へ登った姿のまま東京駅に降り立つが、それを出迎えた本社報道部の児島美紀(北原三枝)は呆れ果てる。

彼女は「ウール・ファッションショー」のスポンサーである羊毛振興会の会長(清水将夫)の娘でもあることから、石松は登山服のままそのテレビ中継会場にお供させられるが、番組プロデューサーの高山(近藤宏)から服装の事を注意されたため、一人で勝手に寮へ帰ることにする。

途中、立ち寄った蕎麦屋でビールと大盛そばを注文した石松だったが、偶然にもその服装と注文品が、かねてより蕎麦屋が聞かされていた麻薬の運び人と同じだったため、石松が気づかない内に、彼のリュックの中に蕎麦屋が麻薬を忍び込ませてしまう。

一足違いで蕎麦屋に現れた運び人健司(赤木圭一郎)はミスに気づき、慌てて石松の後を追い、石松が全日本放送の寮に入ったことを確認、それをボスの船越(金子信雄)に報告すると同時に、自分が必ずおとしまえを付けると約束する。

一方、寮でリュックの中に麻薬の袋が入っていることを知った石松は上司に報告、自分にこの事件を追った番組を作らせてくれと依頼する。

石松は学生だった時分、新劇役者の戸川潤(浜村純)が麻薬に溺れて錯乱し、日本刀で妻を殺した後、自殺した凄惨な現場を目撃していたため、人一倍、麻薬の恐ろしさを知っていたのだった。

その直後、事件に直面しショックを受けた戸川の幼い娘と弟は鉄道自殺を計り、それを間一髪救ったのも石松だった。

結局、美紀の父親が番組のスポンサーになることを承諾、事件追求の決意を固めた石松と美紀は、夜帰宅途中、麻薬を奪い帰そうと待ち伏せていた健児に出会うが、石松と健児は互いに顔を確認して驚く。

実は幼い頃、鉄道自殺から救われた弟が、今の健児だったのだ。

結局、健児は目的を果たせないまま逃げ帰り、仲間たちから半殺しの目に合される。

健児の今の姿を知った石松は、清水から急遽、姉の令子(芦川いづみ)を呼出し、局本社で石松を再び待ち伏せていた健児と令子は偶然再会することに。

健児は又してもその場を逃げ出し、そのまま組からも姿を消すが、この際、彼を尾行していた仲間に令子と石松の写真を撮られ、石松の顔写真は船越商会の縄張りに配付されることになる。

もはや、放送局だけの手には負えぬと判断した美紀は、麻薬を警察に届け、栗原取締官(内藤武敏)も取材をかねた捜査に協力することになる。

しかし、石松の意気込みに反し決定的な材料が上がらないまま、放送日だけが迫って来ていた。

そんなある日、漁船で真面目に働いている健児に会ったという清水局員時代の仲間の話を聞いた石松は、令子と共に彼に会いに出かけ、何とか麻薬組織の核心部分について聞かせてくれと頼み込むが、このことが健児の態度を硬化させ、彼は一人で逃げ帰る際、待ち伏せていた船越組の車に拉致されてしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

新人時代の赤木圭一郎が、石原裕次郎とほぼ互角の立場で共演した社会派風通俗娯楽作。

裕次郎扮する主人公が、破天荒なラジオプロデューサーというのがちょっと珍しい。

特に社会派風リアルタッチを狙ったものではないが、 単純な勧善懲悪活劇とはひと味違ったものをと意図して作られたドラマではないか。

エンディング等に、そうした意気込みが感じられる。

正直な所、兄貴分に当る裕次郎扮する主人公は一本気の正義感だが、かなり思慮には欠けているようにも見えるし、赤木圭一郎扮する不遇な少年の不安定な心理描写の方も、ちょっと作り過ぎに感じないでもない。

ただ、こういう描き方の方が、当時の若者たちには共感を持って受け入れられるだろうとの判断だったのかも知れない。

ここでは男二人の対立、葛藤がメインなので、北原三枝や芦川いづみら女優陣は何となく影が薄い。

人民服のようなものを着ている金子信雄とか、片言の日本語をしゃべる西村晃など、個性的な悪役が愉快。

出番は少ないながら、麻薬で錯乱して日本刀を振り回す元新劇役者を演じる浜村純の鬼気迫る演技も、テレビドラマ「怪奇大作戦」の某エピソードを連想させて強烈な印象が残る。