1987年、角川書店、眉村卓原作。
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「ラビリンス※ラビリンス」 りんたろう脚本+監督作品。
光の届かぬような深いジャングルの中、人の顔をかたどった無気味な石像が口を開けている。
切り立った崖の中に荒れ果てたサーカス小屋。
家の中で「チチェローネ」と呼ぶ少女の声。
母親は台所で大根を切っている。
少女サチは、柱時計の中に太った猫のチチェローネを見つける。
チチェローネがレコード盤に触れると、音楽が流れ出し、おもちゃたちが一斉に動き出す。
ピエロが出現。
サチとチチェローネは、見知らぬ裏町に彷徨い込む。
そこは死者の町なのか、人の亡霊や犬の首輪だけが動いている。
道を歩く人の姿が突然、板状の物体になり、ドミノ倒しのように全員倒れると黒い泥場に変化し蠢く。
骸骨が運転する路面電車が走り、ダリの絵画を連想させるような長い足の生物がゆっくり動いている。
「猫町横町」と書かれたその町に再びピエロが現れ、サチとチチェローネをサーカス小屋の中へ誘い込むのだった…。
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「走る男」 川尻善昭脚本+監督作品。
レースカーに乗る男のアップ。
男の瞳は見開かれ、全身の血管は浮き出し、精神も肉体も限界を超えている事を現している。
男の名前はザック・ヒュー、過酷なレースで何度も勝ち抜いて来た伝説のレーサーである。
雑誌記者は彼を取材するため、今日もレース会場に来ている。
そんな中、ザックは車の中で限界を超えていた。
驚くべき事に、彼の高ぶった精神は、周りの物を破壊するテレキネシス能力に変化していた。
彼の競争相手の車たちは、その力のためか次々と破壊して行く。
そしてゴールを先頭で通過したザックだったが、何故か、彼の車はスピードを緩めないどころか、さらに加速する。
彼のレースは続いていたのである。
彼の車の周囲には、幻のライバル車が出現している。
ザックはもう、幻のスピードを追い掛ける狂気の世界に突入していたのであった…。
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「工事中止命令」 大友克洋脚本+監督作品。
アロアナ共和国のピラルー川に444号計画なる巨大工事を請け負っていた日本の建設会社は、突然の政変情報に驚愕する。
アロアナにできた新政権は、一方的に建設途中の444号計画の破棄、向こう20年で工事費用を全額返還せよという無茶な通達を寄越してくる。
現地は、雨期になると植物があっという間に繁茂し、半年でジャングルに戻るという過酷な状態。
工事は遅々として進まず、すでに投じた予算だけでも莫大な額に及んでいた。
ところが、工事は全てロボットの手によって行われており、肝心の現地の責任者は失踪、全く連絡が取れない状態になっていた。
慌てた会社側は、新人の杉岡勉を現地へ派遣、工事の中止を実行させに行く。
川を遡って工事現場に単身到着した杉本は、工事管理ロボットが一台待ち受けているのを発見。
所長室へ案内されるが、突然、その部屋に閉じ込められてしまう。
壁の黒板には「助けてくれ!あのロボットは狂っている…」という前任者の物らしき書き置きが…。
翌日から、杉本は、管理ロボットの決めたスケジュール通りに工事現場の視察をせねばならなくなる。
「工事中止」を命ずると、狂った管理ロボッタは、彼を抹殺しようとする。
見ると、どの作業ロボットもオーバーロード状態で、次々と壊れて行く。
狂った管理ロボットが、工事の遅れを取り戻そうと、ノルマを上げているからだった。
管理ロボットの状態が日に日におかしくなって行く中、ある日とうとう、杉本は、そのロボットを破壊する計画を実行する。
しかし、工事は全く終わる気配はない。
メインコンピューターがいまだ動きつづけているからだ。
杉本は、管理ロボットから出たケーブルをたどって、そのメインコンピューターを破壊しようと部屋を出て行くが、その直後、部屋にあったテレビフォンが作動、「アロアナ共和国に再び政変が勃発、元の政府に戻ったので、工事は中止しなくてよい」という上司丸山部長の声が空しく響いていた…。
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3人の作家によるオムニバス形式のアニメ作品集。
りんたろうのシュールな作品「ラビリンス※ラビリンス」が最初と最後をまとめている。
ストーリーを楽しむというより、超現実的なイメージを楽しむ外国のアート系コミック雑誌感覚をアニメで再現した感じになっている。
3話とも各々に面白いのだが、個人的には、個性的な絵柄とシュールな展開の「ラビリンス※ラビリンス」が印象に残る。
この作品と「走る男」は、当時流行りだった「透過光演出」を多用し、幻想性を強調している。
「工事中止命令」は、白い霧の中からおぼろげにうかび出す熱帯雨林のジャングルの様子からして幻想的なのだが、全体的に、大友氏得意の濃密な細密描写風イメージが展開されている。
大きな川の中に建設されている巨大都市風の建築物は、何やらデューラーの「バベルの塔」の絵画を連想させる。
ワーカホリック日本人の暗喩も秘められているのだろうが、そういう理屈よりも、あくまでも、悪夢のようなイメージを楽しむ作品であるように感じる。
大友氏の画力と短編作家としての資質が巧く生かされた作品と言えるのではないだろうか。
