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海魔陸を行く

1950年、ラジオ映画、今村貞雄原作、松永六郎脚本、伊賀山正徳監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

1950年、ラジオ映画、今村貞雄原作、松永六郎脚本、伊賀山正徳監督作品。

「吾輩はタコである」と徳川夢声のナレーションが入りながら、海の中にいたタコが、住み慣れた海の中の生き物たちを紹介する所から始まる。

我が輩は、海辺の岩場に住んでいる。

軟体動物で、ゆでダコ、酢ダコなどでお馴染みのはずである。

我が輩の住んでいる海の中には、妙な風変わりが住んでいる。

チャリ、タツノオトシゴ、エイ、小判鮫、猫鮫、自分が好物の伊勢海老の生態等がはっきり映し出されて行く。

やがてタコは漁船が仕掛けたタコ壺にうっかり入ってしまい、そのまま漁船に引き上げられてしまう。

壺にしがみついていたタコだったが、壺の底の小さな穴から熱湯を注がれ、たまらず出ることに。

捕まったタコは、晩のおかずになるべく、魚屋の行商人が引くリヤカーに乗せられ、とある寺にやってくる。

そこで魚屋が住職にカツオを持って行った隙を狙い、タコはスタコラ、リヤカーから脱出する。

タコは、懐かしい海へ帰ろうと寺の階段を独力で降り始める。

苦手な真水の川を渡り、何とか向こう岸にたどり着いたタコだったが、そこで彼は山火事に遭遇、からくも難を逃れたタコは、その後、鉄道のレールを越す際、危うく通過する列車に轢き殺されそうになり、気絶してしまう。

しばらくして、恵みの雨が振り、気づいたタコは、カマキリのメスが、交尾をした直後のオスをムシャムシャ食べてしまう様子を観たり、亀の背中に乗せてもらって移動したり、山で小熊と遭遇、いたぶられたりする。

やがて、タコは鉄橋から川へ落下、奇跡的に流れていた板にへばりつき、緩やかな川辺に到着する。

その岸辺で、アヒルの巣とは気づかず、卵の上に乗ってしまったタコは、自分の身体の下から生まれて来たヒナたちに驚くのだった。

その内、クモの巣に引っ掛かっている蝶を発見したタコは、地面から墨を発射してクモの巣を破壊、助かった蝶はいつまでもタコの側を離れようとしなかった。

とうとう、海が見える場所までたどり着いたタコは、一晩、その場で眠ることにするが、帰り着いた我が家で、妻と共に、天敵であるうつぼと大格闘する夢を観ることに。

朝目覚めてみると、うつぼに形の似た蛇が近づいて来るではないか。

何とか、吊り橋を渡ろうとしたタコだったが、眼下の谷間に観たものは無数の蛇。

そこは、蛇の王国だったのだ。

しかし、そんなタコのピンチを救ったのは、昨日彼が救った蝶だった。

さらに、都合の良いことに、多数のカエルが接近して来たため、蛇たちの関心はそちらに向いてしまう。

蝶に礼を告げたタコは、とうとう念願の海にたどり着き、懐かしい家路につくのであった…。

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

おそらく、子供を対象とした教育目的で作られた、半分ドラマ仕立てで見せる、身近な生物の生態記録映画といった所だろうか。

サザエをぼりぼり噛み砕き、殻だけ出して貝を食べている猫鮫の生態や、カマキリの交尾のシーン等、かなり珍しいシーンが、接写で驚くほどクリアに撮られている。

ドラマ仕立てにしてある所からいえば、動物映画の元祖みたいなものかも知れない。

登場するタコは、全部本物。

画面ごとで、主役タコの色形がかなり変化していることからも分かるが、 おそらく劇中、何匹ものタコをとっかえひっかえして撮ったもののと想像される。

川に入れられたり、山道を歩かされたり、かなりハードな演技を要求されているので、犠牲になったタコも一匹や二匹ではないはずだ。

蛇がうじゃうじゃいる谷間にかかる吊り橋のシーンは、さすがにセットで、ここだけはちょっと雰囲気が変わって冒険活劇風なのだが、後はオールロケ。

ひたすら、いろんな所を動いているタコが延々と映し出されていく。

映像自体もそれなりに珍しいのだが、それを面白おかしく見せているのは、何といっても徳川夢声のユーモア溢れる軽妙なナレーションの力だろう。