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居酒屋ゆうれい

1994年、サントリー+テレビ朝日+東北新社+キティ・フィルム、山本昌代原作、田中陽三脚本、渡邊孝好監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

横浜、反町にある居酒屋「かずさ屋」の主人荘太郎(萩原健一)は、入院していた女房のしず子(室井滋)を家に連れてかえって来た。

もはや、余命幾許もない事を知っていたからであった。

それは、しず子当人も良く承知していて、ある日、看病する壮太郎に、自分が死んでも他の女と結婚しないでくれるかと尋ね、壮太郎は、慰めのつもりもあって、そのつもりだと答えるのだが、しず子は、もし、他の女と結婚したら、百万億土から戻って来て、化けて出てやると冗談とも本気ともとれるような言葉を残して、翌朝息絶えるのであった。

葬式が済み、独り身では忙しい毎日を過ごしていた壮太郎に、兄(尾藤イサオ)が見合いをしないかと女の写真を置いて行く。

最初は興味のなかった壮太郎だが、その写真の女が、店の前をうろついたり、休日、浜に釣りに出かけた壮太郎の前にわざとらしく現れるのを観て、興味を覚え、一回会ってみる事にする。

その席で、彼の事を好きになってしまったと素直に告白する里子(山口智子)の気性に惚れた壮太郎は、あっさり、彼女との結婚を決意してしまう。

「かずさ屋」は、いつものように、魚屋「魚春」の主人(八名信夫)、昔は精米店をやっていたのだが、生来の博打好きが高じて今ではマンションの大家に成り下がった寺岡(三宅裕司)、酒屋の幸一(西島秀俊)など常連に加え、少し前に寺岡のマンションに引っ越して来たという学習塾の先生、佐久間(橋爪功)などが毎夜のように顔を見せていた。

そんな中、新妻となった里子が居酒屋を手伝うようになったある夜、二人が抱き合おうとしていると、いきなり二人の前に、死んだはずのしず子が出現する。

そして、次の日も、又次の日も…。

こうなって来ると、最初は恐怖で怯えていた二人も、だんだん幽霊のしず子に慣れて来て、里子等、ちょっぴりしず子と仲良く酒を酌み交わしたりするような間柄にまでなるのだが、そうはいっても、いつまでも新婚生活を覗かれるのも困りものと、寺に相談に行くと、円山応挙の掛け軸を渡され、これにしず子の霊を封じ込めて急いで巻いて箱の中にれて持って来いという。

いわれた通り、二人は、その夜、出て来たしず子に酒を飲ませ酔っぱらわせると、彼女が戻って行った掛け軸を巻いて箱に入れ、翌日、壮太郎が電車で寺へ帰しに行くのだが、ちょっと油断している好きに、その掛け軸が置き引きに盗まれてしまう。

ところが、その置き引き犯、盗んだ掛け軸を、関内の古美術商浜木綿(大竹まこと)に持ち込むが、肝心の絵に幽霊の姿がない。

さらに、女から店の主人に、その掛け軸を「かずさ屋」へ戻してくれ電話がかかってきたのを、たまたま店にいた佐久間が聞き、結局、巻物は彼の手で「かずさ屋」へ戻って来てしまう。

やがて、常連の寺岡が、自分の息子だという少年を連れて来て、さらに別の日、今度は、10年前に家を出たという元女房のカスミ(余貴美子)を伴って店にやってくる。

聞けば、今は銀座でホステスをやっているカスミが、悪い男に引っ掛かって500万の借金に苦しんでいるので、助けを求められたという。

彼女との生活を取り戻すため、寺岡は野球の巨人阪神戦に金を注ぎ込むのだが、この賭けは負けると確信した壮太郎は、霊界にいるしず子に野球の結果を聞き出そうとする。

しず子はそんな事は知っていても教えられない。
万一教えたら、この世にもう戻って来れなくなると断わるのだが、壮太郎は、死んだ人間より、今生きている人間の方が大切なのだと頭を下げる。

その頃、里子は、殺人の罪でムショ暮しをしていた元夫の杉本延也(豊川悦司)の呼び出しを受けて会っていたのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大人向けの良質のファンタジーといった感じの人情ドラマ。

登場する人物たちが皆良い人たちばかりで、一人の例外を除くと嫌な人間が全く登場しない所が観ていてすがすがしい。

特に「かずさ屋」の常連を演じている三宅裕司や八名信夫が自然で巧い。

ショーケン演ずる主役も真面目で律儀で腰が低く、いかにも女に好かれそうなキャラクターなので、一見、現実感がなさそうなのだが、全体的にほんわかメルヘンチックな話なので、意外と違和感がない。

唯一、例外的な嫌なキャラクターを演じているのが豊川悦史。
その分、印象に残るので、彼にとっては儲け役だったのかも知れない。

しかし何といっても、本作の儲け役は、しず子を演じている室井滋だろう。

ある時はちょっとおどけ気味に、ある時はシリアスに…と、正に彼女の独壇場といった感じ。

対する里子役の山口智子も、健康的なお色気で魅力的である。

あえて難をいえば、普通のテレビドラマを観ている感じで、劇場用作品としては地味すぎる感じがする事。

テレビ放映やパッケージで十分な内容と感じさせる所が、ちょっと損かも知れない。