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いとしのエリー

1987年、フジテレビジョン+旭通信社+小学館+オービー企画、高見まこ原作、藤長野火子脚本、佐藤雅道監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

渋谷でバイクを止め、ハンバーガーを頬張っていた都立三田町高校のバスケ部員上野晋平(前田耕陽)は、単身バイクに乗って通り過ぎる可愛い女性を見かける。

興味を持っていたその少女が、間もなく、エンストを起こして止まっているのを発見、思いきって話し掛け、知り合いのバイク修理屋「MOTO5」の山本(陣内孝則)の所まで彼女を乗せて行ってやる。

彼女はそのお礼のつもりか、赤いネッカチーフを晋平に渡してくれた。

翌日学校に行ってみると、新任の担任の噂で持ちきり。

やがて、教室にやって来た新任教師串田枝里子(国生さゆり)とは、何と、昨日出会ったあの少女だった。

彼女は、隣のクラス担任、真名古(鶴見辰吾)の大学時代の後輩だという。

彼女の可愛さにちょっかいを出そうとした同じバスケ部の清水文太郎(井浦秀和)は、少林寺をやっているという枝里子にあっさりねじ伏せられてしまい、彼女は一躍クラス中の人気者になる。

しかし、屈託がない枝里子にも、人に言えない過去があった。

大学時代の教授で妻子持ちの中村敦(三浦友和)と付き合っていたのだが、中村は彼女との仲をはっきりさせないまま、札幌の助教授として転勤してしまっていたのであった。

そんな苦い思い出を打ち消すために一人飲み過ぎた翌日、枝里子は二日酔いを早く冷ますために、グラウンドでランニングを始めるのだが、ランニングウエアの彼女の豊かな胸に見入られた男子生徒は全員、彼女と一緒に走りだすのだった。

その際、枝里子は調子に乗って、障害物用のハードルを飛んで足を挫いてしまい、それを見ていた晋平が彼女を抱きかかえて保健室へ運んで治療してやるというハプニングまで起きる。

その後、クラスメイトたちが店を借り切って行っていた同じクラスの美代子(志村香)のバースディパーティで、枝里子と踊っているのを真名古に邪魔された晋平は、ふて腐れて表へ飛び出るが、それに気づいた枝里子が彼の側へやって来て、そのまま二人はバイクで枝里子のアパートへ向い、そして二人は一晩を明かしてしまう。

それからというもの、晋平はすっかり有頂天になってしまい、何かと枝里子に対しデレデレしはじめるが、成績はどんどん下がる一方。

そんな息子の変化に気づいた母親(野川由美子)は、担任である枝里子に相談に来るが、それ以来、枝里子は教師としての責任を感じてしまい、晋平に対し、素っ気ない素振りを見せ始める。

その彼女の変化の理由が分からずイラつく晋平であったが、枝里子の事で頭が一杯の晋平は、父親(斉藤晴彦)が京都へ転勤になる話を聞かされても、一緒に行くのを拒絶して、一人暮らしを始めようと物件を探しはじめる始末。

そんなある日、枝里子は、札幌の中村から手紙をもらい、単身、北海道へ飛ぶ。

彼女が出かけた後のアパートでその事実を知った晋平は、バイクで北海道まで出かける決心をするのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

高見まこ原作コミックの映画化で、「タッチ3 君が通り過ぎたあとに」の併映作品。

町で知り合って、ちょっといい雰囲気になったカワイイ女性が、実は新任教師で…と、この辺りまでは、わりと良くある青春ものパターンではないかと思われるのだが、その彼女と、その後あっさり結ばれて、二人はすっかり恋人気分!…という辺りが、いかにも80年代のラブコメタッチというしかない。

しかし、これも、少女漫画のアイデアとしては珍しいものではなく、テレビドラマにもなった「奥様は18才」など、若き青年教師と女生徒の恋愛・結婚コメディという設定は昔からあったように思う。

これはもともと、少女特有のママゴト(お嫁さんごっこ)願望から来るアイデアだったのだろうが、これを、この作品では青年コミック(?)として男女立場を逆転させてある。

大人としては、男には本来「お婿さん願望」などおそらくなく、どんなにコミカルに描こうとも、そこには少女コミックのようにメルヘンチックな要素が入り込む余地はないだろう…と考えたくなるのだが、当時、この手の「ラブコメ」が少年誌でもてはやされていた事を考えると、男の子の気質も変化して来たという事かも知れない。

そうした事を忘れても本作で気になるのは、エリーこと串田枝里子(楠田枝里子のもじりか?)が、過去において不倫をしているという設定。

こういう大人のドラマが混入してくると、がぜん観客の興味はエリーの方に大きく傾いてしまうだろう。

一応、高校生の晋平の方にも、父親の転勤に家族として同行するか否かという葛藤ドラマはあるのだが、大人の恋愛の悩みにくらべると、単なる子供の我がままレベルでしかなく、面白みもない。

原作は知らないが、映画として今観ると、どう考えてもこの作品の主人公はエリーの方であり、晋平は脇役のお子ちゃまにしか見えないのだ。

ハイビジョン合成を用いたメルヘンチックな描写もあり、できるだけ生臭い大人のドラマにしないように工夫している風にも見えるのだが、当時、晋平と同年輩だった男の子たちは、こういう設定に違和感はなかったのだろうか?
晋平にしっかり感情移入できたのだろうか?

三浦友和、陣内孝則、伊武雅刀、斉藤晴彦、名古屋章など、色々な人がゲスト出演しているが、晋平の母親を野川由美子が演じているのが珍しかった。

この作品、どちらかといえば、女の子の方が感情移入しやすい物語のように思えるのだが…。