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本日休診

1952年、松竹、井伏鱒二原作、斉藤良輔脚本、渋谷実監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

18年前に開業した三雲医院の大先生(柳永二郎)は、甥の伍助(増田順二)を院長に迎え、それなりに繁昌して来たので、久々に休業することにし、 協議の結果、伍助院長は看護婦の瀧(岸恵子)ら共々温泉旅行へ出かける。

朝寝を楽しもうと目論んでいた大先生の夢は早朝からの騒ぎで破られることになる。

戦争で神経をやられた岡崎勇作(三國連太郎)が発作を起こし、自分を陸軍中尉と錯覚したまま周囲に号令をかけ、通りがかりの男たちにまで乱暴を働いていると、母親が助けを求めて来たのであった。

何とか、勇作をなだめて病院に戻って来た大先生は、待たしても呼び鈴を聞き付ける。

外にいたのは、警察官の松木(十朱久雄)であった。
何でも、大阪から夕べやって来た女性が、女連れの乱暴者に襲われたのだという。

羞恥と絶望感から、大先生の治療も拒否するその女性に自分で治療する方法を教え、治療室から出た大先生に又しても呼び鈴の音が聞えてくる。

今度は、医院が開業した18年前、急なお産で一番最初の患者になったという湯川三千代(田村秋子)が、その時に生まれた息子、今では手紙を書くことが趣味となったらしい春三(佐田啓二)を連れて、当時払えなかった治療費を今払いに来たという。

その後、電話があり、砂利船に寝泊まりしている妊婦の面倒を観てやるに行くことになる。

どうやら、その船では博打をやっているらしく、天井板を始終閉め切ったままでいるので、酸欠状態になったらしい。

治療代の代わりに卵をもらって帰って来ると、今度は、お松(淡島千景)の情婦加吉(鶴田浩二)という若いヤクザものが、小指を斬ってくれと依頼に来る。

戦争で亡くした自分の一人息子の話を聞かせ、何とか、加吉を帰した大先生だったが、今度は警察署から病人が出たとの知らせが。

行ってみると、何と、朝方病院を訪れた女性を襲った犯人の片割れの女が仮病を使っているらしいのだという。

民主主義の悪用に嘆きながらも、体よく仮病の女をあしらった大先生は、ついでに、留置場で見つけた暴行犯人にも治療と称して説教付きの荒療治。

その頃、彼らの被害にあった大阪の女性、愁子(角梨枝子)は、同情した三千代の家に住む事になっていた。

三千代の住む工場裏手の長家には、勇作やお松も住んでいたのだが、そのお松の兄、竹(中村伸郎)は、たどん屋という職業がありながら、遊んでばかりいるダメな男であった。

さらに、お松と関係があった美濃島という富豪の家にゆすりに出かけた加吉は、そこの女主人の芝居にまんまと騙され、すごすごと退散する始末。

しかし、当のお松は妊った胎児がお腹の中で死亡しており、三雲医院に緊急入院することになるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

これを観ていたら、やっぱり淡島千景が出ている「喜劇 駅前医院」(1965)をすぐに思い出した。

ほとんど内容が一緒だったからである。

そう、「喜劇 駅前医院」は、この「本日休診」のそっくりリメイクだったのだ。

精神を病んだ勇作のエピソード以外は、ほとんどそのまま本作のエピソードを使用している。
しかし、「駅前医院」に原作者井伏鱒二の名前は出ていないのが不思議。

本作では、「駅前医院」で省かれた勇作のエピソードがあることで、また違った味わいが出ている。

勇作を演じる三國連太郎のとぼけたおかしみと哀しみ。

作者は、決して彼を見下して表現してはいない。

逆に、彼の姿を当時色濃く残っていた戦争の爪痕と貧困の象徴として、優しく見つめているのである。

それは、他の長家の住民や三雲大先生とて同じこと。

彼の突拍子もない行動や言動に日々困惑しながらも、ちゃんと同じ仲間として付き合っている。

今では表現しにくいテーマだが、当時は色々な弱者たちが手を取り合って暮していたのだ。

又一方で、貧困層ほど無計画に多産している現実にも厳しい眼差しを注いでおり、「生むことよりも、子供を幸福にする事の方が親の責任」と、大先生の言葉で表現している。

懐かしい名優たちがたくさん登場しているのも、本作の見所。

鶴田浩二、佐田啓二、岸恵子、三國連太郎…、みんな二十歳前後の若者である。

後年、東宝作品などで良く見かけた主役の柳永二郎も、中年ながらまだ元気一杯の頃という感じで、その姿を観れただけでも貴重。

また、見るからに下品なヤクザ者に扮した多々良純の演技なども絶品というしかない。


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