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地球に落ちて来た男
1976年、ウォルター・テヴィス原作、ポール・マスターバーグ脚本、ニコラス・ローグ監督作品。
▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼
大気圏に突入する宇宙船らしき機体。
やがて、その宇宙船は、ニューメキシコのとある湖に落下する。
それから数日後、痩せて美しい男(ディビッド・ボウイ)が、標高868mのヘイニービルという町にやってくる。
彼は、ある店が開店すると同時に入り込み、妻からもらった指輪を換金してくれと頼む。
結局、20ドルに変えてもらったその男は、やがて、川ばりで川からすくった水を美味しそうに飲んでいた。
時が移り、金持ちそうな服装に身を包んだその男は、博士号を持つ学校の教授(リップ・トーン)に連れられてトーマス・J・ニュートンと名乗り、一人の特許弁護士のオリバー(バック・ヘンリー)の元を訪れる。
ニュートンは持参して来た書類をオリバーに読ませて、一体いくらくらいで売れそうかと尋ねるのだが、一読したオリバーは驚愕する。
その書類は、基本原理を含む特許を9つも含んでいたからであった。
さらにニュートンは、その書類の売り込みに関しては、一切をオリバーに任せ、その収益の一部を渡すというとんでもない好条件を提示する。
その頃、ニュートンをオリバーに紹介した博士は、女学生と淫らな行為に耽っていた。
妻に逃げられて以来、どこか自分の人生を捨てていたのだった。
彼は、女学生が持って来た写真機でふざけて撮った写真を見て唖然とする。
カメラの中で、フイルムが自動的にカラー写真に現像されていたからである。
そのカメラの特許で莫大な金を手にしたニュートンは、ワールド・エンタープライズという大企業の影のオーナーになっていた。
社長を任されたのは、あのオリバーであった。
高級車を乗り回す身分になっていたニュートンは、ニューメキシコのホテルアルテジアに単身休暇に出かけるのだが、そのエレベーター内で失神してしまう。
その時案内係を勤めていたのが、その町の娘メリー・ルー(キャンディ・クラーク)だったのだが、彼女はとっさに彼を部屋まで運び込み、何とか、気づいた彼を介抱するのだが、その後、彼は、自分用のテレビを用意できないかと奇妙な依頼を彼女にする。
やがて、複数のテレビに囲まれ、日がな一日部屋でそれを見ているニュートン(メリー・ルウにはトミーと名乗っている)と、ジンを飲むことで日々の憂さ晴らしをしていたメリー・ウルの奇妙な同棲生活が始まる。
すっかり恋人同士になった二人は、ニュートンの故郷だというヘイニービルを訪れるのだが、そこの湖で、ニュートンは自分の過去の幻影を見る事になる。
ニュートンは、その後、オリバーを介して、学校を引退して職探しをしていた博士を会社に招聘し、宇宙ロケット計画の中核に彼を据えるのだったが、博士は謎が多いニュートンの正体に疑念を抱きはじめる…。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
美貌のロック歌手、ディビッド・ボウイの長篇映画初主演作。
いかにも70年代映画らしい、個性(クセ)の強い作家映画というか、退廃的な雰囲気に満ちた独特の映像作品になっている。
そのため、70年代の雰囲気を多少なりとも知っている世代にとっては、好き嫌いは別にして、妙な懐かしさを感じる作品になっている。
かなりの長尺であるため退屈といえば退屈なのだが、その退屈さこそ70年代映画の一つの特長ともいえる。
ストーリーは特に難解というほどのものではないが、ある程度、観客側が想像力を働かせながら観ていないと、ついていけなくなる部分がある。
この翌年、良くも悪くも映画全体の流れを大きく変えてしまった「スター・ウォーズ」出現以降の、万人に分かりやすく作られた特撮をメインにした見世物系SF映画の感覚で観ると、戸惑うことになるかも知れない。
注目すべきはこの主人公の姿、何やら、現在のオタク像に似ている。
映像での情報収集だけに耽溺し、現実世界から完全に逃避してしまっているその様は、まさにオタクの姿といってよい。
主人公のこの行動に関してだけは、彼が本来目指している目標から逸脱しているように見える。
これは、彼が「外界から心を閉ざす」行為なのだ。
だから、主人公が酒とSEXを覚えるようになり、それらの行為によって現実逃避をし始めると、徐々にテレビから離れて行っている。
やがて、彼の目標は崩れ、彼は残された現実逃避の中で生き続けて行く…。
正に70年代特有の「挫折感、白けた感じ」が良く表現されている。
日本趣味が随所に登場する所にも注目したい。
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