1996年、バンダイビジュアル、手塚治虫原作、橋本以蔵脚本、小中和哉監督作品。
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ブラックジャック(隆大介)は、タイで、瀕死の状態にある医者、サミット博士の手術を依頼されていた。
依頼したスラボーン博士の説明によると、バーン・マイという地域から発生した奇病の患者を治療中に自らも感染したのだという。
肝臓にできた膿が全身に拡がって死に至る症状なのだが、病気が発症した村に行って、原因を調べるには時間がないのだとも。
その説明中、もう一人の黒衣の男が部屋に入ってくる。
サミット博士の妻が呼んだドクター・キリコ(草刈正雄)であった。
彼は、万一、ブラックジャックの手術が失敗した時、自らが安楽死をさせるという。
手術が始まり完璧な手順で進めたはずなの、何故か、肝臓の膿が破れ、毒素が拡がってしまう。
しかも、手術中、慌てたスラボーン博士によって、指先を傷つけられてしまう。
結局、ドクター・キリコの出番となり、彼は患者の頭に装置を取り付けると、脳内麻薬エンドルフィンを出させて患者を静かに眠らせることになる。
自分の仕事に納得できず、奇病の原因究明のため、日本に帰ることをしばらく断念したブラックジャックは、一人でバーン・マイの村を目指すが、途中森の中で、虫垂炎で苦しむ患者を取り囲んで呪文を唱える現地人の集団に遭遇する。
医者として、その患者をすくおうとするが、周りの人間が聞く耳を持たない。
結局、翌朝、呆然として一夜を明かしたブラックジャックの前に一人の現地人が近づき、夕べの患者は死んだ。西洋医学では虫垂炎かも知れないが、ここでは精霊に取りつかれたのだと解釈する。自分もかつては医者だったが、ここでは死んでも従うべき自然の摂理があることに気づいたのだと告げ、どこかに姿を消す。
その後、ブラックジャックは、森の中を彷徨う内に足を滑らせ、気を失ってしまうのだが、気が付くと、少数民族の村に助けられて来ており、そこには恵先生(小牧かやの)という一人の日本人女医がいた。
彼女は、父親を治療費が払えないことで死なせ、夫も又風土病で亡くしていたこともあり、金に汚い事で有名なブラックジャックを軽蔑しているらしく、態度は素っ気なかった。
しかし、足の怪我が直るまでブラックジャックがしばらく村に留まっている内に、徐々に彼女の誤解は解け、最後には、彼に自分と一緒に村に留まって欲しいとまで言い出す。
彼女も又、孤独と戦っていたのであった。
ブラックジャックは、だが、交通事故に会った彼女とブーマーという少女を緊急手術で救うと、静かに村を去り、バーン・マイの村に到着する。
そこで彼は、手術中の指の怪我が元で、自分も奇病に感染している事実に気づくのだった。
人っ子一人いない村の中で、彼は、自分で自身のオペをする事になるのだが…。
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手塚治虫の有名な漫画「ブラックジャック」の実写化オリジナルビデオ作品の3作目である。
いくつかの原作を組み合わせて独自の展開にしてあるが、うまくまとまっており、それなりに見ごたえのある秀作になっている。
タイに本格的なロケを敢行していることもあり、OVながらちゃちな感じは余りない。
ブラックジャックとは宿命のライバルとでもいうべきドクター・キリコが登場するのが見所。
キリコを演ずる草刈正雄は、漫画そっくりの白いヘアスタイルがちょっと異様なのを除けば、意外と雰囲気は近いようにも思える。
彼が安楽死の道を選ぶことになったきっかけが、本作で語られている。
ピノコ(田島穂奈美)は今回、一人でタイへやって来て、連絡が取れなくなったブラックジャックを探す健気な姿がかわいらしく描かれている。
ブラックジャックは、過去、いくつか映像化されているが、ギャグ描写を押さえ、シリアスな調子で貫かれた本編は、今の所、実写版の中では最高峰の位置にあるのではないだろうか。
