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愛はクロスオーバー

1987年、幻燈社+ファンハウス+オー・エンタープライズ、長瀬未代子脚本、栗原剛志監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

人気レーサーの国枝シュウジ(稲垣潤一)のインタビューをしていた女性雑誌の記者岡崎麻子(名取裕子)は、事故で亡くなった国枝も良く知る元レーサー伊佐山の妻だった。

今日麻子は、仕事のついでに、夏休みになった小学生の一人娘百合(吉沢梨絵)と愛犬のテトを、富士の裾野で自動車修理工をやっている元夫の友人、多田圭一(平田満)の所へ預けに来ていたのだった。

多田は、広島のレースでその腕を認めた若きレーサーユウジ(織田裕二)と、数人の仲間たちと共に、「CHOICE レーシングチーム」というのを作って、自分達だけの力でレースに参加しようと、毎日車の整備に余念がなかった。

整備工場の隣には、多田の妹で今年二十歳になるめぐみ(川島みき)が、喫茶店「BLUE」を開業していたのだが、その店に、ある日、ぶらりと一人の男がやってくる。

その時、隣の工場でユウジが整備中だったレースかーガ突然火を吹き、喫茶店に知らせに来た百合の話を聞いた 客の男は、ただちに車の側に近づき、ユウジに適切なアドバイスを与えると同時に、あっという間に消化してしまう。

帰宅後、火災事故の知らせを聞いた多田は、客の手際の良さから、相手がメカニック関係の仕事をしているのではないかと察しを付け、喫茶店で休んでいた男に、礼をいうと共に、良かったら、自分達の仕事を手伝ってくれないかと頼み込むのだった。

1週間だけで良かったら…という条件の元、梶山(永島敏行)と名乗ったその男は、翌日から多田とユウジの手伝いを始めるが、自分の素性については口を開こうとしなかった。

百合は、すっかり梶山になつくが、ある日、梶山が持っていたナイフに刻まれた「JK」というイニシャルを見て以来、彼を避けるようになり、すっかり笑顔も見せなくなる。

実は、梶山こそ、百合の父親と事故を起こした車の運転手で、その後、レーサーを辞め、バー「ルパン」を開業、百合には毎年「JK」のイニシャルの付いたクリスマスプレゼントを贈って来た男だったのだ。

「JK」のイニシャルに憧れていた百合が、彼に会いに来てくれと無邪気に手紙を出したのを受け、彼は富士にやって来たのだが、百合は彼こそ、自分の父親を殺した相手であるという事も直感的に悟り、それで心を閉じてしまったのであった。

麻子は、こちらも梶山の正体を気づいていた多田から電話を受け、富士にやって来て、東京に帰る途中の梶山を呼び止め、彼が富士にやって来た理由を知るのだった。
麻子の方には、すでに梶山の事を恨む気持ち等なかったのだ。

しかし、梶山の方は、伊佐山を死なせた重い責任をいまだに背負っており、昨年まで一緒に暮していた恋人理恵(田中美佐子)は、そんな彼の元を去って行っていた。

そんな中、「CHOICE レーシングチーム」のレースカーが借金のカタに取られてしまい、抵抗しようとしたユウジは片足を怪我して入院する事になる。

それを知った梶山は、国枝に相談し、何とか2000万のレース参加費を捻出しようとするのだが、国枝は、梶山自身がドライバーとして出場する事を条件に協力を約束する。

この話を麻子経由で聞かされた多田は、最初、部外者の参加を固辞するが、やがて、考えを変え、梶山の協力を飲む事にするのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

稲垣潤一のヒットメロディーに乗って繰り広げられる、ちょっとトレンディドラマ風の作品。

リアリティ重視の人間ドラマというよりも、ムード重視で撮られたおしゃれな映像を楽しむビデオクリップと映画の中間のような雰囲気の作品…といえば良いだろうか。

稲垣潤一本人もレーサー役で出演している所からすると、彼のプロモーション目的で作られた作品なのかも知れない。

基本的には、数年前のレース中に起きた不幸な死亡事故が元で運転が出来なくなり、レーサーを辞めて、被害者の家族への贖罪の気持ちを背負いながら生きて来た男が、その家族と直接出会った事から、少しづつ気持ちがほぐれて行き、再びレーサーとして復帰するまでを淡々と描いた内容になっている。

主役は永島敏行なのだが、これが結構爽やかで格好良く撮られている。

夫に先立たれ、今は幼い娘を一人で育てている雑誌編集者を演じている名取裕子も、それなりにこぎれいに描かれているのだが、上っ面だけの表現という感じで印象は弱い。

レースのスポンサー役で夏木陽介、梶山の恋人を演ずる田中美佐子の友人役として阿木燿子、梶山が経営するバー「ルパン」を訪れるヨッパライ役として山谷初男が各々ゲスト出演している。

織田裕二のスクリーンデビュー作という事なので、チョイ役としてどこかにちらりと出ているのかと思いきや、登場人物が少ないドラマ構成を支えるそれなりに重要な役柄で、多田役の平田満と共に、冒頭部分からほぼ全編に渡って登場している。

織田の生き生きした瞳と、平田満の落ち着いた存在感が共に印象的。

バブル期特有のちょっと気取ったドラマが好きだった人には、それなりに懐かしいのではないだろうか。