1965年、東映東京、伊藤一原案、石井輝男脚本+監督作品。
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真夜中、網走刑務所にサイレンが鳴り響く。
事故のサイレンである。
網走で事故といえば、1火事、2喧嘩、3脱走…。
火事だと慌てふためいて飛び起きた他の受刑者に対し、無理矢理叩き起こされても布団から出ようとしない27号、橘真一(高倉健)が落ち着いて説明する。
何でも、仲間に裏切られた恨みを晴らすために、1号房の浦上という男が脱走したのだと分かる。
その話を聞いて、自分も同じ気持ちだと打ち明ける房仲間葉山(千葉真一)がいた。
葉山はその後、病気で寝込んでしまうのだが、真一は雑益係り(山本麟一)に何か病人用の特別料理を作ってくれないかと頼みに行くが、逆に因縁を付けられ喧嘩になってしまう。
止めに来た担当の小暮部長は、かねてより反抗的な真一の方を一方的に責め、仮釈放を取り消すと脅すのだが、そこに立ちふさがったのが八人殺しの鬼熊(嵐寛寿郎)だった。
彼は、拳銃を取り出した小暮に対し包丁一本で立ち向かい、見事にその迫力だけで相手を負かしてしまう。
病気で倒れた所を親切にしてくれた真一が仮釈放で出所する日、葉山は、ペンケサップの王子運送の志村社長(沢彰謙)に自分が騙されて受取り損なった金を、約束通り病床の母親に渡す事と、自分の女房を奪った元親分に会いに行ってくれと頼む。
さっそく、王子運送へ出向いた真一は、やけに向こうっ気が強い社長の娘(大原麗子)と志村本人に会うが、その志村は、今は不景気でトラックの運転手もおらず、払う金がないのだと弁解してくる。
さらに、今、県道と鉄道が雪崩で埋まってしまい、トラックの他に交通手段がなくなったペンケセップまで荷物を運ぶ良い条件の仕事依頼があるのだが、途中難所の険路峠があるので引き受け手がいない。それを受けられたら金は払えるのだが…と、思わせぶりな事もいう。
真一は、志村からしっかり前金だけは受取って、その運転を自分が請け負う事にする。
トラックに乗っているのは、荷物と依頼人の安川(安部徹)金田(藤木孝)の二人のはずだったが、何故か、志村の娘も隠れて潜り込んでいた事が、出発後判明する。
怪し気な連中に、もはや一台しか残っていないトラックを盗まれたら困るという事らしい。
さらに、雪道に立ちふさがる一人の男(杉浦直樹)に遭遇、そのまま行き過ぎようとしたが、男はしっかり荷台に入り込んでくる。
さらにその後、警官に呼び止められ、足を骨折した少女エミ(小林千枝)とその母親雪枝(宝みつ子)を、途中のオプチョッカの病院まで送り届けてくれと依頼される始末。
間の悪い事は続くもので、さらに進んだ山奥で、今度は道にど真ん中に止まった無人の乗用車を発見。
トラックを降りて周囲の様子を探っていた橘は、睡眠薬自殺した若い女性(加茂良子)を見つけ助けるが、目覚めた彼女は心中の生き残りだという。どうやら、相手のミッキーなる男は一人で逃げてしまったらしい。
すっかり人間不信になったらしきその女性も、結局乗って来た乗用車が動かず、真一たちのトラックの荷台へ同乗する事になる。
同乗している依頼者たちがギャングだと察した社長の娘は、ガムの包みの中に秘かに助けを求めるメモを挟み込んで、誰かに渡すチャンスを待っていたが、トラックが崖の土に挟まり動けなくなった夜、その安川に襲われそうになる。
護衛術を学んでいた彼女は、逆に安川に手痛い逆襲をするが、翌朝、車を動かそうと手伝っていた謎の男が、金田の運転のミスから轢かれて命を落としてしまう。
実は、彼こそ、網走から脱走していた浦上だったのだ。
その後、オプチョッカの町に着き、エミや心中女を下ろした真一は、葉山から女房を奪った大沢組の組長宅へ乗り込み、大沢(小沢栄太郎)にけじめを付けさせるため、彼の小指を強引につめさせる。
もはや、葉山の女房の方が心変わりしていた事を知ったからであった。
安川に邪魔され、町の警官に助けの手紙も渡し損なった社長の娘と真一らを乗せたトラックは、いよいよ難所の峠に差し掛かるが、そのトラックのブレーキは故障していた…。
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シリーズ4作目。
叙情的だった3作目「望郷篇」とは又打って変わって、本作は、下品なギャグとサスペンス満載で繰り広げられる連続冒険活劇風になっている。
冒頭の刑務所内の房内描写は下ネタギャグの連続。
「マカオ(逆さに読むとオカマ)の秀太郎」こと砂塚秀夫とその夫(?)役の由利徹がまず笑わせる。
新人のオカマおよしちゃんが同じ房に入って来ると、ライバル意識むき出しで秀太郎、「007は殺しの番号、あたしゃ108(尺八)番だよ!」などと下品な洒落で啖呵を切る。
お馴染み、大槻(田中邦衛)は、前日、意地汚く特別食を一人占めしたため、真一が仮釈放になる朝、腹を下してトイレの中から別れの挨拶をするはめになる…という、こちらも下ネタ。
この房仲間には、若き日の千葉真一、石橋蓮司も混ざっている。
この千葉真一が、登場場面は短いながら、話の発端となる重要な役柄を演じている。
毎回、主人公の真一を助ける役回りの鬼熊ことアラカン(嵐寛寿郎)、今回は、調理場での真一のピンチの場面と、後半、意外な登場の仕方で大活躍する。
ショートヘヤも初々しい大原麗子は、さしずめ「レイダース/失われた聖櫃(アーク)」のマリオンといった所か。
一見か弱そうに見えて、実は結構度胸も腕っぷしもある。
画面上ではとんでもないピンチのシーンでも、度胸が座っているというか、すっとぼけた表情を変えない真一役の高倉健も愉快。
クライマックスの雪中活劇シーンは、本当に「007」か「インディ・ジョーンズ」シリーズ張りの楽しさ。
お気楽な娯楽要素ばかりかというと、心中未遂ですっかり人間不信になった女性に、真一や金田(藤木孝)がチンピラなりに励まして、女が次第に心を開いて行くという意外な場面もある。
後半、ヘリで登場する悪人コンビは八名信夫と小林稔侍、当然ながら、どちらも若い。
「望郷篇」に次ぎ、どこかキザで怪し気な男として登場する杉浦直樹も印象的である。
登場するキャラクターが、全員個性的で面白く造型されており、展開もアイデアに富んでいる。
正に、娯楽映画の見本のような作品と言えよう。
