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私を野球につれてって

1949年、アメリカ、ハリー・テュージェンド+ジョージ・ウェルズ脚本、バスビー・バークレイ監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

20世紀の初頭、フロリダを根拠地とするウルブスは、ワールドチャンピオンに輝いた最強のチーム。

ところが、そこのショート、エディ・オブライエン(ジーン・ケリー)と、二塁手デニー・ライアン(フランク・シナトラ)は、野球がオフの時には、地方のレビューで歌っているという変わり種コンビ。

エディは無類の女好きで、歌手になる事を夢見ているのに対し、デニーの方は、恋愛に関してもずっと奥手だった。

そんな二人、今日もイリノイ州のポッチタウンという町の劇場で歌って踊って超御機嫌!

ギルフリー監督からの懇願で、ようやくチームに合流し練習を開始しようとするが、そこへ、オーナーのニューハウス大佐が死亡したため、オーナー権がK・C・ヒギンスという人物に変わったとの知らせが届く。

どんなとんまな若造が来るのかとがっくりしていたチームにやって来たのは、何と、美しい女性キャサリン・ヒギンス(エスター・ウィリアムス)だったから、監督はじめ選手たちは大混乱。

事情を知らず、いきなり初対面の彼女に言い寄ろうとしたエディなど、身の置きどころがない。

しかも、単なるお嬢様かと思っていたら、野球にも詳しく、自ら実戦もできるほど。

そんな新オーナーのおかげで、これまでのお気楽な夜のお遊び生活がダメになりそうになったエディ、デニー、それに一塁手のゴールドバーグ(ジュールス・マンシン)を加えた名トリオ、しかし実生活では底抜けの三バカトリオは、何とか彼女を懐柔しようと、取りあえず、彼女が親し気に声をかけたデニーを差し向けるが、逆に彼女の真面目さにデニーの方が感化されてしまう始末。

いよいよシーズンが始まると、球場に訪れていたシャーリー(ベティ・ギャレット)が、痩せっぽちのデニーを一目惚れ。

何とか、彼をものにせんと、その日から連日のように猛烈なアタックを開始する。

地方巡業では絶好調のウルブルスが、再びホームに帰って来た時、シャーリーに誘われ、「ギルビーの船着き場」というレストランに集まったメンバーたち、エディは踊りに紛れてキャサリンに強引にキスをし自分の公望を伝える、一方デニーの方は、キャサリンよりも、それまで嫌がっていたシャーリーの方を実は好きな事に気づく。

そんな中、「ギルビーの船着き場」のオーナーで野球賭博をしていたジョーは、エディさえ試合に出なくなれば、ウルブスの負けに賭けた自分が儲かると気づき、エディに新しい店を作るのでそこで歌わないかと誘いをかける。

迷った末、昼間は野球、夜は歌と踊りの練習と二股をかける事にしたエディだったが、無理が祟り、ウルブルスの成績は下降の一途。

さらに、ジョーから事の次第を聞かされたキャサリンは、好きになりかけていたエディに今後試合に出ないように通告するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本未公開作品だが、古き良き時代のプロ野球をテーマにしたドタバタ調の明るいミュージカル。

この作品で歌われているテーマソングは、最近、メジェーリーグを特集するテレビ番組などで良く使用されているお馴染みのナンバー。

映画的な誇張はあるのだろうが、そのいかにものんびりとした時代性と、 本当に昔から、アメリカ人に野球が愛されて来たんだな〜という事が良く伝わって来る楽しい内容になっている。

背番号などがない当時のユニフォームもはじめて観た。

野球のオフの季節に選手たちがアルバイトをしているというのは今でもあるのだろうが、劇場で歌っている野球選手という設定がまずすごい。

痩せっぽちのシナトラが、奥手の坊や役という感じで、周りから可愛がられながらも、どこか軽い扱いにされているのが興味深い。

元全米選手権にも出場経験があるというエスター・ウィリアムスは本当にチャーミングで、同年公開の「水着の女王」同様、この作品でもちゃんと泳ぐシーンがサービスとして挿入されている。

新しいオーナーが、野球とは縁遠い印象の女性になるというアイデア自体は、後年の「メジャーリーグ」などにも引き継がれているが、その女性が、選手たちに指導ができるほど理論面でも運動神経でも秀でているという所が笑える。

元水泳選手というスポーツウーマン、エスター・ウィリアムスをうまく生かしたアイデアだと思う。

個人的には「水着の女王」よりこちらの作品の方が、彼女の魅力がフルに生かされていると感じる。

ストーリー的にも「水着の女王」と通ずる所があり、スポーツ賭博に絡む陰謀などが味付けとして加えられているが、基本的には深刻めいた要素はほとんどない「御陽気なコメディ」。

中盤、レストランでジーン・ケリーが披露する「お父さんの帽子」を歌った長廻しのシーンが特に見ごたえがある。