H・G・ウェルズ原作、ジョージ・パル製作の古典「宇宙戦争」(1953)のリメイクなのだが、承知の通り、エメリッヒの「インデペンデンス・デイ」(1996)で、ほとんど基本アイデアは使われてしまっているので、先行するその作品とどう差別化するかに苦心している様が伺える作品となっている。
で、スピルバーグはどうしたかというと、今まできちんと描かれた事がない「三脚歩行型ウォーマシン(トライポッド)」をメインにした「モンスター映画」に仕立て上げる事にしたようだ。
しかも、VFXシーンを比較的少なくし、その分、個々のVFXシーンのクオリティを上げる作戦に出ている。
これで、迫力のある「怪獣映画」としては大成功。
何やら、日本の怪獣映画を連想させるシーンがあちこちにあり楽しい。
実質的な監督作品といっても良かった「ポルターガイスト」(製作、原作、脚本スピルバーグ、監督トビー・フーパー 1982)以来、この種の映画オタクでもある監督久々の「建て前よりも趣味性全開作品」なのではないだろうか。
一方、主演のトム・クルーズも、事件の最前線での目撃者かつ、子供を守る父親として苦難の旅を続けるという設定で、終始、出ずっぱり状態。
かくして、監督と主演スターの「自己顕示見世物映画」の出来上がり。
後は、その「自己顕示見世物映画」を楽しめたか否かによって評価は分かれるだろう。
個人的には十分楽しめた。
スピルバーグのモンスター趣味に共感できたからである。
いまさら宇宙人の侵略の恐怖なんて、「インデペンデンス・デイ」同様、徹底した見世物にする以外にまともに語るテーマでもないだろう。
スピルバーグの演出自体は、過去の「未知との遭遇」や「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」などの焼き直しのような部分が目立つが、それを補っているのが、近年毎度の事ながら、予算に証したVFX部分の密度の高さ。
事前に徹底的に計算しつくされたスペクタクル演出に感心させられる。
群集の列が遮断機に遮られて眼にする踏み切りでのシーンなど、アイデア的にも秀逸な部分が多い。
戦争を一庶民の目線から捕らえる事で、戦争スペクタクルとしてはやや象徴的な描き方にもなっているが、復讐心に駆られての反撃に最後まで反対する主人公の姿同様、それは予算上の理由からだけではなく、9.11以後の表現として配慮した結果だと思われる。
惜しむらくは、ウォーマシンの偵察触手のデザインが凡庸で怖くない事。
本当は三分割デザインにこだわりたかったが、それは古典ですでに有名すぎるから…という事なんだろうけど、やっぱり、この部分だけは古典作品を凌ぐアイデアは出なかったようだ。
さらに、子役の二人が最後まで可愛げがなく見える事も気にならないではない。
最初の方はともかく、最後の方では観客に魅力的に見えないとまずいのではないだろうか。
結局、いつも通り、トム・クルーズだけが目立つ映画という事なのだろう。
