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オペレッタ狸御殿

2005年、鈴木清順監督作品。

清順監督の御高齢を考慮すると、その変わらぬイメージの瑞々しさに、まずは感嘆するしかない。

デジタル処理の助けなどに頼っている面は多いものの、「狸御殿もの」としては、まずは及第点かな?…いうレベルの出来である事は確か。

ただ、全体としては、静的かつ観念的な清順ワールドのイメージの方が「狸御殿もの」のパターンに勝ってしまっている事、ちょっと重いストーリー展開が引っ掛かる事、主役二人以外の歌を歌う役者陣が総じて高齢である事などのため、オペレッタとしての弾け方が今一つと言う印象である事は否めない。

あくまでも、いつもの様式的な清順ワールドに「狸御殿もの」を導入したという感じであろうか。

群集によるポップで賑やかなシーンもあるのだが、その楽しさが、何やら重い話の展開で持続しないのが残念。

特に、後半のもたつきはいただけない。

もっとたあいないストーリーで良かったような気もするが、そうしない所が清順監督一流のこだわりなのだろう。

そのため、清順ファン以外の万人向けの「お祭り映画」というのは、ちょっとためらわれる出来になっているような気がする。

薬師丸ひろ子や高橋元太郎など『元』アイドルの歌声が聞ける懐かしさ、楽しさなどは味わえるのだが、歌って踊れる意気の良いアイドルがいないのも、作品が沈みがちな要因の一つ。

CGIで再現された「お嬢、美空ひばり」も、天才の迫力は、到底デジタルなんかで再現されるものではない事を再確認させられただけ。

これをきっかけとして、17才頃のお嬢主演の「七変化狸御殿」(1954)など、本当に浮き浮きするような楽しさに満ちた「狸御殿もの」などに興味を持ってもらえれば幸いである。

本作で、一番心打たれたシーンは「ビルゼンお婆」の最後を歌う由紀さおりの歌唱力。
これぞ、プロの力だと感じた。

浪々たる美声を聞かせる平幹二朗も見物。