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にっぽん三銃士
 おさらば東京の巻

1972年、東京映画、五木寛之原作、長野洋脚本、岡本喜八脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

一流会社に勤める風見一郎(岡田裕介)は、やる気があるのかないのか分からないような24才、戦無派の青年。

いつも小うるさい上司(岸田森)から、やれ、もっとやる気を出せとか、サイトベンツの上着やピンクのカラーシャツはいけないとか、髪型は七三分けにしろとか、文句ばかり浴びせられ、殺してやりたい気分になる。

さらに満員電車の中では、奇妙な女の子と身体が密着しておかしな雰囲気となり、つい勢いで俺に付いて来いと誘ってしまうのだが、これが意外にもあっさり付いて来てしまい、通称カラムニスト(コラムニスト)の古賀マリ(藤岡麻理)と名乗るその女とあちこち彷徨ったあげく、結局、新宿2丁目で別れる事に。

おかまのゲンさん(二瓶正也)と、ちょっと可愛いキキ(加賀まりこ)がやっている馴染みのバー「ネスパ」に入った一郎は、36才の戦後派で大学病院で精神神経科の医者をやっている八木修(ミッキー安川)と、48才の戦中派で、今は「ハイタク公論」というハイヤーやタクシー業界誌を出している零細出版社の編集局長、黒田忠吾(小林桂樹)と出会う。

八木はキキを相手に、昼間は学生運動の連中から「ノンポリ」「日和見主義」と罵られ、夜は夜で、精力絶倫の女房から執拗に責められ、今はまったく心身共に自信をなくしてしまったと愚痴をこぼしていた。

そんな「ネスパ」に飛び込んで来たのが、先ほど一郎が別れたばかりのマリ。
何でも、新宿のデモ騒ぎに乗じて、パトカーに投石してしまったので、今、警察から追われているのだと言う。

そんな彼女をかばおうと、続いて店に入って来た刑事(草川直也)ともみ合いとなり、そのまま連行される事になった黒田。

八木は、彼の身の上話に同情したキキと共に夜の大学病院の一室へ出かけるも、巡回中の医局員に見つかってしまい、パンツ一丁の姿のまま一人で逃げ出す始末。

一郎は、足をけがしているマリを背負って宿舎を探したあげく、あろう事か、婚約者だった江草千夏(和田恵利子)がイラストレーターの三毛沢なる中年男(草野大悟)と浮気をしている現場に遭遇してしまう。

結局、新宿のフォーク集会の場で、一郎、黒田、八木の三人は再び再会する事になるのだが、警察沙汰を起こした黒田も又、すでに会社を解雇されていたのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝創立40周年記念作品で、2部作の前編に当る。

世代の違う三人の男たちが奇妙な縁で出会い、互いに仲間として団結するまでが、コミカルなドタバタ調で描かれている。

主演の岡田裕介とは、今の東映社長その人である。

ちょうど、学生運動たけなわの頃、映画では東映の高倉健主演の仁侠映画真っ盛りだった事もあり、劇中の岡田裕介が、健さんの「死んでもらいます」などといった決まりゼリフにしびれて、いつも口癖のように言っているのがおかしい。

さらに岡田裕介さん、この作品ではアイドル宜しく、ギターを持って即興のフォークソングまで披露するシーンまであるのも見物である。

小林桂樹は、この頃、ちょっと長髪目で口ひげをたくわえており、パワフルな中年男性と言った感じ。
翌年の「日本沈没」(1973)での田所博士を彷彿とさせるようなイメージでもある。

ミッキー安川は、ふてぶてしく粗暴な男などを演じさせるとピッタリのキャラクターなのだが、ここでは、全く逆の気の弱いインテリを演じており、ちょっと意外な面白さがある。

マリ役の藤岡麻理は新人らしいが、70年代のフーテン娘の感じを体当たりで演じている。

この頃の加賀まりこは、一見、眉が全くないかのような「超極細眉」の頃で、セーラー服のような衣装とも相まってちょっと怖い。

新宿騒乱の時代の様子が描かれているのが、今観ると興味深い内容となっている。