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喜劇 駅前天神

1964年、東京映画、長瀬喜伴脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天神駅前、歌の上手な巫女千鳥(畠山みどり)とその父親の神主(三木のり平)のいる天神の裏側に、魚屋の孫惣のオヤジ(伴淳三郎)が、坂井次郎(フランキー堺)という一人の書生に紹介してやったアパート「白梅荘」がある。

次郎は浮浪児だった子供時代、青山に住む英語の教師、森田徳之助(森繁久彌)に拾われ今日まで育てられてきた男であった。

徳之助は、受験英語の参考書でも全国的に名の知れている男で、3年前に妻に死なれてからは、小さな町の英語塾をしながら、一人娘の由美(大空真弓)と暮していた。

その徳之助が、ひょっこり次郎のアパートを引っ越し見舞いとして訪ねてきたから、孫惣は大慌て。

実は、次郎は、お好み焼き屋「景子」の店員、染子(池内淳子)と同棲中であり、この事は、徳之助の預かり知らぬ事だったからだ。

とりあえず電話で急を次郎に知らせて何とか事なきをえたが、その後食事会と言う事で集まった「景子」で、再び徳之助の周囲は気まずい雰囲気に。

というのも、お調子者の孫惣が、妻(中村メイコ)が買ってきた「週刊ウイークリー」という雑誌の表紙に、由美がモデルとして出ているので、それを喜ばそうと、徳之助と店の主人、景子(淡島千景)に披露してしまったからだ。

実は由美は、戸籍上は、徳之助と亡くなった妻の子供と言う事になっているが、本当は徳之助の今でも愛人である景子の子供だったのだが、それは世間的にはふせられていた事だったからだ。

その由美は、子供の頃から次郎と兄弟のように育ち、彼の事を憎からず思っていたのだが、訪ねてみた次郎のアパートに染子がいる事が分かり、自分は身を引く決心をする。

そんな由美に縁談の話が舞い込む。

相手は、大野産業の社長(左卜全)のバカ息子昭夫(佐原健二)だった。

その事を、徳之助の紹介で参考書の仕事をまわしてもらっている依頼相手のABC堂の山越(松村達雄)から知らされ、あれこれ由美の身元調査のような事を聞かれた次郎は、その縁談話に否定的な意見を述べてしまい、後にそれを知った徳之助の逆鱗に触れてしまう。

染子との同棲の事も実は薄々気づいていた徳之助は、本当は由美を次郎に嫁がせたがっていたと言う事もあり、次郎と染子を強引に別れさせると、次郎を岐阜羽島の学校の英語教師として都落させるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何やら、懐かしい某食品メーカーのコマーシャルを連想させるような三木のり平のアニメタイトルで始まるシリーズ第10作目。

今回は、複雑な人間関係をめぐる人情話になっているのが特長。

次郎と染子が神社でつらい別れ話をするシーンから連想されるように、このストーリーの下敷きになっているのは、明らかに泉鏡花原作、お蔦、主税の悲恋物語「婦系図」である。

恩師から「自分を捨てるか、婦を捨てるか」と迫られ、泣く泣く芸者上がりのお蔦に別れ話を切り出す主税の物語をほぼなぞっている。

魚惣などの名前も、原作に出てくる魚屋の惣助の名前をそのまま使っているのだろう。

シリーズとしては、レギュラー的存在である淡路恵子が登場しないのが珍しい。

その代わり、この回から中村メイコが登場している。

孫惣の店員が松山英太郎、大野産業の社長の妻が沢村貞子、その娘で昭夫の姉が中原早苗。

この頃、レギュラー的に出演するようになった山東昭子も絶好調で、景子の家のお手伝い役を軽妙に演じている。

由美の昔の同級生という設定で、又しても、元巨人軍の王選手がゲスト出演、豪快なオリジナルお好み焼き「ホームラン焼き」を自ら焼いてみせたりする。

笑いの要素としては、やはり三木のり平登場の部分が秀逸で、徳之助と景子が久しぶりにしっぽり密会している部屋にずかずかと上がり込み、場をかき回してしまう所がサイコー。

後半の、男の貞操を守ろうとするフランキーと中原早苗の寝室でのドタバタもおかしい。

ラスト部分で、イーデス・ハンソンがちらり登場している所にも注目。