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豹(ジャガー)は走った

1970年、東宝、長野洋+石松愛弘脚本、西村潔監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東南アジアの南ネシア国では革命が起き、国を脱出した大統領ジャカール(アリス・シャリフ)はアメリカに亡命する事になるのだが、諸般の事情から、独立時、日本軍兵士の世話になった事もあり、日本のアメリカ大使館で亡命手続きをする事になる。

もしそれが成功し、亡命政府が樹立すれば、革命軍の運命は危うくなる。
南ネシアの革命軍は、日本で亡命手続きが完了する三日間の間にジャカールを暗殺しようと画策する事になる。

これを知った警視庁は、オリンピックの射撃のメダリスト、多田登警部(加山雄三)を狙撃者暗殺要員とするため、警官の身分を剥奪すると命ずる。

警官のままで、殺人を犯す訳には行かないからだ。

しかし、その背後にはしっかり警視庁が付いており銃器部門をはじめ、多田直属の部下として平松(高橋長英)が移動用の車や連絡装置の手配を整える。

そうした中、ジャカールは羽田に到着、用意されたホテル・ニューオークスに向う途中でも、何度か暗殺者の襲撃があり、多田もそのうちの一人を殺す事に成功する。

一方、南ネシア政府に5億ドルもの融資をしていた大日本貿易の社長(中村信郎)は、前政府の借金の事など預かり知らないと伝えて来た革命政府の代表に対し、新たな武器提供と、自分達も独自にジャカール暗殺の手配を打った事を伝えるのだった。

ジャカール暗殺に成功すれば革命政府に、失敗しても、旧来通りジャカール政府に恩を売れると計算しての行動であった。

社長秘書(加賀まりこ)は、以前にも仕事を依頼した事のある狙撃手、九条輝彦(田宮二郎)を外国から呼び寄せると、車とカービン銃を渡すのだった。

九条は、とあるバーで寂し気な外国人女性ナンシー(ナンシー・サマース)を見かけ、成行きのままホテルに連れて帰る事に。

ジャカールの宿泊しているホテルを警戒していた多田は、夜間、窓の外から襲撃しようとする暗殺者を発見、この足を撃って逮捕しようとするが、同時刻、同じ部屋を狙っていた九条によって、その暗殺者の命綱が撃たれ切断、その暗殺者は地上に落下して絶命してしまう。

この事件をきっかけとして、多田と九条は互いの存在を知る事になる。

九条は、大日本貿易がジャカールに対して派遣したコールガールを使い、夜間、別のビルの屋上から狙撃を実行するが、殺されたのはジャカールではなく、同行していた将軍の方だった。

ジャカールはマスコミを通じ、独立時に世話になった日本兵の眠る靖国神社を訪問すると発言、警視庁や多田は万全の警戒体制をとるが、そこに現れたのはナンシーを伴った九条の車であった。

ナンシーは前夜、自分のフィアンセで日本で結婚するはずだっただった米兵ジミーがベトナム戦争で犠牲になった事を九条に告白、自殺を覚悟していた矢先、九条の優しさに救われたのだという。

しかし、そんな靖国神社は、米国追従を阻止せんとするデモ隊の乱入の中、数人の暗殺者が出現、目の前で警察隊に撃ち殺された暗殺者を見たナンシーは、その無惨な姿に恋人ジミーの姿を重ね、車から降りると一人ふらふらと靖国神社に近づく。

そんな彼女を暗殺者と勘違いした多田は、ナンシーを射殺してしまう。

これを目撃した九条は、その瞬間から仕事を離れて、多田との勝負を決意するのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「狙撃」(1968)「弾痕」(1969)などと並ぶ加山雄三主演のハードボイルドものだが、どちらかと言うと田宮二郎とのダブル主演のような印象の作品になっている。

地のイメージに近いと思われる若大将役以外では、意外と生彩がなくなる加山だが、この作品も例外ではなく、敏腕警察官という役にしてはどこか鈍重なイメージでシャープさに欠け、今一つ魅力に乏しい。

それを補うかのように、流暢な英語を操る田宮が世界を股にかけるゴルゴ13張りの国際派狙撃手のキャラクターを渋く濃く演じており、主役の加山を食っている印象さえある。

プロの狙撃者同士の対決と言う発想自体は面白く、サスペンス物としてもアイデア満載で、なかなかうまくできている。

劇中に登場するジャカールという人物名から想像されるように、一見このストーリーは、フレデリック・フォーサイスの出世作「ジャッカルの日」をヒントにしているのではないかと思われるが、原作本「ジャッカルの日」が発表されたのは本作と同じ1970年、さらにその映画化作品となると1973年の事になる。

1970年の4月に公開された本作が似ているのは、全くの偶然かも知れない。

だとしたら、その発想の秀逸さにただただ感心するばかり。

さらに、夜間、巨大なネオンきらめくビルの屋上から向いのビルを狙うという「ダーティ・ハリー」(1971)そっくりのサスペンスシーンまであり、その先進性には驚かされる。

靖国神社でのロケーションや、紅一点、加賀まりこが着ているコシノ・ジュンコデザインの衣装など、全編見所には事欠かない。

アクションファンには必見の秀作だろう。