TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

錨を上げて

1945年、アメリカ、ナタリー・マーシン原作、イソベル・レナート脚本、ジョージ・シドニー監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ハリウッド映画界の音楽の巨匠ホセ・イタルビ(ホセ・イタルビ)の指揮の元、巡洋艦ノックスビルの艦上で、今正に吹奏楽団の演奏が終わり、水兵のジョセフ・ブラディ(ジーン・ケリー)とクレランス・ドリトル(フランク・シナトラ)の二人に過去の戦績を讃えらた銀星の受賞と四日間の休暇を与えられる。

「海の狼」の異名を取り、海軍一もてる男として有名なジョーこと、ジョセフは、さっそく、遊び友達のローラ・ラバーンに電話をしデートの約束をするが、同伴のクレランスの方は、高校から聖歌隊の指揮者になり、そのまま海軍へ入ったという野暮天、過去、女性と付き合った経験すらなく、休暇はいつも図書館で読書というような奥手の青年であったので、ローラの元へ急ぐジョーの後に付きまとい、何とか女性を紹介してくれないかと懇願する。

そんな二人、ハリウッドの町中でいきなり警官に連行されそのまま警察署へ。

実はその夜、一人で海軍に入るんだと町中をうろついていた子供のドナルド・マーティン(ディーン・ストックウェル)の処置に困った警察署が、海軍の水兵のいう事なら聞くだろうと二人を連れて来たという次第。

事情を知ったジョーは、海軍に入るには親の許可証が必要とドナルドを説得しようとするが、彼の両親はすでに他界し、今はスーザン伯母さんに育てられているので、その伯母さんの許可で良いかとドナルドから切り返される。

仕方なくドナルドを家に連れて行った二人、間もなく戻って来たスーザン・アボット(キャスリン・グレイソン)と会ってみてびっくり!

何ともキュートな女性だったからである。

何でも彼女、歌手志望だが、今は映画のエキストラなどで稼いでいるのだという。

結局その夜と、さらに翌日も、ローラとのデートを寝過ごしてオジャンにしてしまったジョーは、すっかりスーザンの魅力の虜になったクレランスの願いで再びスーザンの家を訪れ、何とか、クレランスと付き合ってくれないかと願い出るのだが、帰り際偶然出会った彼女の今日のデートの相手バートラル・クレーラーがいかにも金持ちのボンボン風だったので、言葉巧みに彼に近づき、何かとスーザンの悪口をいって別れさせてしまう。

それを知ったスーザンの悲観振りは尋常ではなく、何と彼女は、音楽家の息子であるバートラルとのデートを実現するまで1年も要しており、これで歌手デビューのチャンスは永遠になくなったというのである。

自分達の失態に気づいたジョーは、何とか彼女を慰めようと、ハリウッドのホセ・イタルビは、クレランスの友達だから、今度の土曜日にオーディションを受けさせてもらえるよう計らうと、口からでまかせをいってしまうのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

撮影所華やかしき頃のハリウッドを舞台に繰り広げられる、恋と歌と踊りが満載のミュージカル大作。

この作品、日本で公開されたのは戦後の1953年だが、作られたのは戦時中、つまり、日本と戦争をしている最中に、こんな豪華なミュージカルを作っていたのである。

劇中でも、彼女がいない事をごまかすために、他の水兵仲間がいる前でシナトラがかける電話の相手の時報係りが「戦争債への参加」を呼び掛けている。

とにかく莫大な予算を投じている事が伺えるすごいシーンが続々と登場する。

劇中、シナトラは何曲も歌を歌い、ジーン・ケリーもいくつか踊りの見せ場がある。

中でも印象的なのは、ハリウッド小学校にスーザンに会いに行ったジョーが、ドナルドら子供たちから勲章をもらった時の話をせがまれ、空想の中で自らが御伽の国に迷い込んだ話を披露するシーン。

御伽の国はアニメで表現がしてあり、そこの王様は何と「トムとジェリー」のジェリーなのだ。

トムは召し使いとして脇役扱い。

王様は、国民より何でもうまくないといけないと思い込んでいたジェリー、昔から歌や踊りが苦手なので、国中の音楽を禁止してしまったと聞き、ジョーがジェリーに踊りの手ほどきをするシーンが見事。

実写のジーン・ケリー同様、一緒に踊るアニメのジェリーの床面に映り込んだ姿まで描いてある芸の細かさには、ただただ感心するしかない。

他にも、スーザンがアルバイトで歌っているレストランの前で、小さな女の子と一緒に踊るシーンとか、映画のセットの中をフルに使って、王女に恋した盗賊を演じて踊りまくるシーンなどが圧巻。

ホセ・イタルビ自身が披露するピアノのシーンもいくつもあり、その音楽映画としての贅沢さは呆れるばかり。

又、当時の撮影所内部の描写も大変興味深く、音楽ファンのみならず、映画ファンにも見所はたくさんあるはず。

ストーリー自体は御都合主義といってしまえばそれまでだが、徹頭徹尾、夢と娯楽に徹しようとするその潔さは、今では二度と作れないものかも知れない。

これぞ正に、ハリウッド全盛期の夢の世界というしかない。