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ひばり捕物帖 かんざし小判

1958年、東映、背戸口寅雄原作+脚本、中田竜雄脚本、沢島忠監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江戸の神社で、江戸小町を選ぶ奉納美人番付なる催し物が行われ、美人の誉れ高い女岡っ引、阿部川町のお七(美空ひばり)も数人の小町の横綱の一人に選ばれて、商品の純金の簪を貰い受ける。

お七は実は、阿部伊予守(尾上鯉之助)の妹妙姫なのだが、窮屈な武家暮しを嫌って、一人町民に身をやつしているのであった。

その後、見物人でごった返す中、小町たちが次々と駕篭で帰る事になるが、先頭の駕篭に乗っていた筑紫屋のお小夜(中島栄子)が、何者かに簪で咽を一突きされ死亡すると言う事件が発生する。

お小夜の髪から、桜模様の簪がなくなっている事に気づいたお七は、その簪の出所が、玄十長家に住んでいたお菊という娘から古物商が買取ったものだった事を突き止めるが、そのお菊は2年前から行方をくらましていると言う。

調査を進めるお七は、正体不明の侍たちに襲われあわやと言う時に、飲んべえで豪快な浪人、佐々木兵馬(東千代之助)に助けられるが、その後、さらに梅模様の簪を持つ絹屋の清葉(北村曙美)も殺害されてしまう。

そのお菊という娘、実はかつて市中を騒がせたいなづま小憎こと伊賀の源次(沢村宗之助)の妹なのだという。

島送りにされていた源次が御赦免で帰って来ると聞いたお七と子分の早耳の五郎八(堺駿二)は、港に迎えに出かけるが、帰って来た源次を駕篭に載せて連れ去る謎の侍一味を目撃するのだった。

その侍たちと駕篭は那須刑部(阿部九洲男)の天真一刀流の道場に運び込まれる。

そこには、松永藩の家老志垣主水正(薄田研二)以下、お七を襲った侍たちが集合していた。

実は、彼らの藩から、4年前、財宝の在り処を記した3本の簪が、稲妻小憎たちによって盗まれていたのだった。

その中には、簪の番人だった田宮監物の弟、田宮大介(里見浩太朗)も混じっていた。

彼らは、簪を取り戻す目的を隠す意味もあって、町娘を殺害していたのであった。

那須道場が怪しいと睨んだお七は、柳橋の料亭「酔月」に新人芸者として入り込み、志垣の目に止まると、二人きりになった彼の懐中から、桜と梅の模様の二本の簪を見つけだすのだった。

後日、さらに若衆に化けたお七は、那須道場に乗り込んで行くのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ひばり得意の変化ものを用いた捕物帳シリーズの一本。

沢島監督御自身の談話によると、シリーズにおける基本的なお嬢の変化パターンは決まっていたが、この回では、歌舞伎好きの監督のアイデアで、河内山宗俊の啖呵部分のアレンジと弁慶が加えられている。

当時、生真面目なキャラクターばかりを演じていた東千代之助が、実生活では大酒豪であった事から、監督自ら思い付いた新しいキャラクターを当てているのが見所。

一見、大友柳太郎辺りが演じそうな役柄である。

新人時代のほっそりした美青年、里見浩太朗にも注目したい。

姫君が市井の庶民に混じって岡っ引をやっていると言う設定そのものもハチャメチャだが、あくまでもお嬢ひばりの歌と芝居を楽しむアイドル娯楽作と割切って作られていたのだろう。

そうした荒唐無稽な作品が少なくなった今観ると、逆に新鮮に感じられる内容になっている。

時代劇版のミスコンとでもいうような、奇抜で艶やかな出だしからテンポ良く物語は進み、謎解きとしてはたあいないものの、ひばりの魅力が十二分に引き出された楽しい作品になっている。