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花笠若衆

1958年、東映京都、加藤喜美枝原作、中田竜雄脚本、佐伯清監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江戸の吉原、三浦楼の人気花魁松島太夫が練り歩いているのを見物していた不良侍の白鞘組、すぐ近くの美しい町娘がいる事に気づき、彼女に近づこうと因縁をつけはじめる。

それを止めたのは、江戸家吉兵衛(大河内伝次郎)の息子(?)吉三(美空ひばり)とそのお付きの法華の金八(星十郎)であった。

逆上した白鞘組、吉三と大立ち回りを始めるが、吉三を加勢するかのように扇子を投げ付けた若侍まで出現し、白鞘組は退散する。

その頃、吉兵衛の元には、但馬国扇山藩より、稲垣(吉田義夫)、永山(須藤健)の二名の侍が訪れ、15年前に扇山藩から実家に戻った吉兵衛の妹おそのと、彼女が連れて来たはずの雪姫に会いたいと切り出していた。

しかし、吉兵衛は、二人とも10年前に他界していると答える。

さらに、雪姫が御落胤である事を記した書き付けの所在を訪ねる二人に対し、それもすでに消却したと答える吉兵衛。

実は、吉三がその雪姫の成長した姿だったのだが、当の吉三はその事を全く知らずに、吉兵衛を父親としてッ心から慕っていたのであった。

しかし、帰り際、ちょうど帰宅して来た吉三を見かけた稲垣らは、そこに千代姫と瓜二つの容貌を認め、扇山藩江戸屋敷に戻った後、江戸家老但馬主馬(沢村宗之助)と善後策を協議した結果、白鞘組と手を組み強攻策を取る事にする。

一方、その頃、扇山藩の城内では、病身の城主、牧野内膳正(明石潮)に対し、御世継ぎは、江戸に住む神月又之丞(大川橋蔵)との婚礼が決まっている千代姫(美空ひばり)ではなく、その昔、双子の妹という事で城から連れ出した雪姫が継ぐのが妥当ではないかと、自責家老馬場兵部(柳元二郎)が説得していた。

後から生まれ妹とされた雪姫の方が、本来は姉に当るからというのが、その説の根拠だった。

その後、兵部に反対する一派は暗殺されるに及び、兵部の企みに薄々気づいた内膳正は、高見浩重郎(長谷部健)を、江戸元にいる神月へ救援を願うため差し向ける。

やがて、川開きの日、白鞘組に襲撃された又之丞を助けようと、吉三が駆け付けたその隙に、一人、二日酔いで寝込んでいた吉兵衛は、踏み込んで来た稲垣らによって斬られ、隠していた書き付けも持ち去られてしまう。

但馬主馬は、手にいれたその書き付けを証拠の品として、娘早苗(桜町弘子)を雪姫に仕立て上げると、国元にいる兵部共々お家乗っ取りをせんと、扇山藩へ出立する。

父親を稲垣らに殺されたと知った吉三は、女の姿になって、神月、金八と共に扇山藩へ旅立ち、高見浩重郎も又町人に身をやつし、主馬ら一行を尾行するのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ひばりがお姫さまと市井の町民の二役を演じる、いわゆる「貴種流離譚」だが、このストーリー、どう観ても山手樹一郎の「桃太郎侍」そのままである。

「桃太郎侍」が出版されたのが1946年、その後、長谷川一夫をはじめ、数多くの俳優がこの原作を映画やテレビで演じている。

しかも本作の原作の加藤喜美枝とはひばりの母親であって、作家などではない。

となると、ひばり向けの「変化もの」企画として、母親が「桃太郎侍」をヒントに思い付いたアレンジ話と考えるのが妥当であろう。

威勢の良い男姿も凛々しい吉三役と、しとやかで優しい心根を持つ千代姫役を、ひばりが巧みに演じ分けているのが、まずはファンを喜ばすサービス演出。

大川橋蔵の典型的二枚目役があり、「けっこ〜」が口癖の三枚目星十郎がおり、吉田義夫らの典型的な悪役がいる…という、典型的な通俗娯楽ものの作りだけに、取りあえずは安心して観ていられる内容だが、取り立てて新鮮さはない。

出来としては普通といった所だろうか。

見せ場となるはずの二役のひばりが共演するシーンは合成などは使用しておらず、吹き替えとの切り返しが多い。

祭りのシーンなどは、さすが、時代劇全盛の頃の東映の勢いを感じさせる豪華版で見ごたえのあるものになっている。

可憐な早苗を演じる桜町弘子も魅力的。

大河内伝次郎の存在感も貴重である。